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文字にあらわれる自分らしさ――書を通して自分と向き合うひとときを 

書を通して自分を見つめる。書道で心の成長を促すプロ

仲道裕馬

仲道裕馬 なかみちゆうま
仲道裕馬 なかみちゆうま

#chapter1

日展入選経験を持つ書家が指導。生徒の“やりたい”に応える柔軟な指導で、自信が持てる字に

 大分市にある「裕同社(ゆうどうしゃ)」は市内に4拠点を構え、5歳から80歳まで幅広い年齢に愛される書道教室です。今日も和やかな空間に、筆が紙を滑る音が響きます。

 教室を主宰する書家の仲道裕馬さん。約10年にわたる教員経験を持ち、日展に3度入選した確かな実力の持ち主です。書道団体発行の「競書誌」では手本書きや審査員も務めるなど、審美眼も優れています。実用書から芸術表現まであらゆる分野に対応できるのが特徴です。 

 「モットーは『楽しくなければ続かない』。生徒さんが興味のある分野に取り組めるよう、まず『どんな作品を書きたいですか?』と聞いています。格式にとらわれすぎず、意欲を大切にしたいですね」

 多く寄せられる悩みは「字に自信を持てるようになりたい」というもの。ご祝儀袋の宛名書きや伝言メモなど、大人のたしなみとして美文字を習得したいという声や、「自分のように字にコンプレックスを持ってほしくない」という保護者の声も多いと言います。

 「当教室では生徒さんがよく書けた作品を毎月1枚保管し、成長過程が見えるようにしています。先月より上手くなったと実感できると字にも自信が表れていくんです」

 技術以上に大きいのは精神面の変化です。「書道での姿勢、手首の角度、筆に含ませる墨の量など、しっくり来る“最適解”は個々で見つけていく必要がある」と語る仲道さん。

 「精神を統一して自己の感覚に注意を向ける作業は、リフレッシュ効果も期待できます。何より創意工夫の過程で自分に向き合えるのが書道の魅力。日々の生活に対しても丁寧に向き合う意識つくりになると思います」

#chapter2

「字を整えるだけでなく心まで整える」迷いながら見つけた書家としての生き方

 仲道さんの書道との出会いは5歳のころで、教養として親に勧められた習い事のひとつにすぎませんでした。スポーツに専念するため中学生で筆を置きますが、高校三年生のとき再び「書」の道が開かれます。

 「進路に悩んで自分の人生を振り返ったとき、一番自信を持っていたのが“字”でした。書道を辞めた後も、培った技術はずっと自分を支えていたと気付いたんです。あらためて書道に向き合おうと決意し、四国大学にある書道文化学科に進学しました」

 しかし書家を目指す精鋭たちのなかで、ブランクのある仲道さんは劣等感を抱くことが増えていきます。書家として生きるべきか悩みながら、書道用品店に就職。そこで出会ったのが指導者という選択肢でした。

 「商品を卸に伺った学校で見た、生徒さんのキラキラした表情が眩しくて。自分も書を通して誰かの成長をサポートしたいと思い、高校の書道講師に転職しました。迷いながら歩んできた僕だからこそ、誰かと比べることのない“自分との対話”である書道が伝えられるはず。書道講師は自分の生きる道になりました」

 その後、書道教室を立ち上げて独立。筆の持ち方や姿勢、字形の取り方、書き順などの書写的な要所を押さえつつ「その人らしさ」を尊重するのが仲道さんのスタイルです。

 「十人いれば十通りの字があります。生き方や考えの変化が字に影響を与えることもあり、写し鏡のような存在です。字を整えるだけでなく心まで整えて、自分の字を好きになってほしいです」

仲道裕馬 なかみちゆうま

#chapter3

書道パフォーマンスや書のプレゼントで広がる、書道の魅力と可能性

 仲道さんの書を見た人からインターネットで問い合わせが来るようになり、通信講座も開始。全国に生徒を抱えるようになりました。

 「作品のやり取りは郵送ですが、目の前で指導を受けているような温度感を大切にしたいので、添削の様子を撮影して生徒さんに動画を送っています。全国どこからでも『書道をやりたい』という気持ちには可能な限りお答えしたいですね」

 仲道さんが思う“良い字”とは「整った字形であることはもちろん、人間性や内に秘めた思いが現れた字」。自身も指導に当たる中で、字を通して書き手の感情に触れることがあると言います。

 「プロでなくても心を込めて書かれた字には魂が宿ります。その尊さを多くの方に体感いただきたいですね」

 近年はイベントでの書道パフォーマンスなど活動の場を増やす仲道さん。書のプレゼントは特に人気が高いと言います。

 「名前の筆耕依頼は多いです。名付けの由来を聞きながら、人柄や雰囲気を反映し、その人らしさがあらわれるよう心を込めて揮毫(きごう)します。『名前に込められた意味を噛みしめています』『名前に愛着が湧きました』とのお声をいただきます」

 書のデザインは命名書のような手書きに加え、データでも提供。グッズや名刺に印字したり、オンライン背景に用いたり、個性を演出できるのが魅力です。

 「書道は文化であり芸術表現であり、年齢問わず取り組める生涯学習です。今後はワークショップなどの活動も増やし、まずは地元・大分に書道を普及させて教室拡大を目指します。ゆくゆくは全国の書道人口増加に貢献したいですね」

(取材年月:2025年5月)

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仲道裕馬

書を通して自分を見つめる。書道で心の成長を促すプロ

仲道裕馬プロ

書家

裕同社

生徒が自分の心に向き合うための書道を推奨。実用書からペン習字、芸術表現としての書道まで広く対応し、“自分らしい字”を書けるよう丁寧に指導している。精神統一によるリフレッシュ効果も期待できます。

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