終生飼育を支えるドッググルーミングのプロ
渡邉美紗子
Mybestpro Interview
終生飼育を支えるドッググルーミングのプロ
渡邉美紗子
#chapter1
「グルーマーはワンちゃんの被毛や皮膚をきれいにするだけではなく、心身の状態に寄り添い声を代弁して生活しやすくする存在だと思っています」と語るのは、大分市でグルーミングサロン「HUG DOG」を営む渡邉美紗子さん。店名に「I hug to the last breath, my dog.(最後の一息までしっかり抱きしめるよ)」との思いを込め、シニア犬や、繊細で通常のトリミングが難しい犬を迎え入れています。
「特に高齢になると、持病や体調によってトリミング中に調子を崩す可能性が高くなります。規約を設けたうえで、事前にカウンセリングを重ねてコンディションを把握し、症状などを悪化させないための、その子に合った無理のない手だてをご提案し、その日の様子に応じて施術しています」
環境の変化やストレスなどに敏感で、慎重な配慮が必要な犬に向けて「ゆっくりコース」を用意。コミュニケーションをとり、段階を踏みながらお手入れを進めています。
「慣れるまでは、スタッフと遊んだり、店内を見てもらったりして終える日もあります。それぞれの性格やペースに合わせ、お友達になるところから始めています」
お店に入ることすらできない“怖がりさん”が、しっぽを振って通えるようになるまで、じっくり時間をかけて丁寧に心をときほぐす渡邉さん。2002年にサロンを立ち上げて以来、赤ちゃんの頃から成長を見守り、2代目、3代目と愛犬を任されている顧客も少なくありません。
「私たちのポリシーはドッグファースト。ワンちゃんが『大丈夫』と、落ち着いてケアを受けられる環境や体制を整えることで負担や不安を和らげ、健やかな毎日を送れるようお手伝いします」
#chapter2
子どもの頃から動物に親しみ、野生動物の保護に携わることを夢見ていた渡邉さん。10代の頃にはアニマルレスキューを始め、飼育放棄や虐待など、危険にさらされたペットらを救助してきました。
「トリマーという職業を知ったのは高校生の時です。レスキューを続けるならそのために役立つ職を手につけて、身を立てる必要があると考え進路に選びました」
専門学校を経てペットショップ併設のサロンへ。ボランティア活動や実践を通じて技能を磨き、やりがいを覚えますが、次第に自分が思い描いていた「命を守る仕事」とのズレを感じるようになります。
「面倒を見切れないなど人の都合で命が扱われ、失われていく場面に直面することもありました。殺処分のような悲しい結末に向かわぬよう蛇口を閉める側にいたつもりが、気づけば蛇口を開ける側にも立っていた。そのジレンマに、心がちぎれるような思いでした」
一度は仕事を辞めようとすら考えた渡邉さんが、思案の末に導き出したのは独立の道でした。やりたくないことを手放し、自分が本当にやりたいことを突き詰めた結果が、時間や手間を惜しまず、目の前の子と誠実に向き合うことでした。
「理想のケアにたどり着けたのは、力を貸してくれる仲間や家族、そして私を選んでくださるお客さまのおかげです。レスキューやボランティアにいそしむ姿を通じてお客さまから信頼をいただき、同業者の皆さんに共感してもらい、犬のためにやってきたことは間違いではなかったと思い至ることができました」
#chapter3
長年にわたりペットを取り巻く状況を見つめてきた渡邉さん。サロンが増加する一方で、節約のため、満足のいくサービスが見つからないといった理由で「自分でカットや爪切りをしたい」という家族が増えていると言います。
「SNSなどの動画をもとに見よう見まねで始めるケースも見受けられます。適切なトリミングは、技術や経験、道具がそろって初めて成り立つものです。予期せぬ痛みや思わぬケガで恐怖心が生まれて触られるのを嫌がり、噛んだり暴れたりするようになった子も目にしてきました。良かれと思った愛情から生まれた家族の行為が、苦手意識を植え付けてしまうこともあるので、正しい知識やスキルが伴わない自己流は、正直あまりおすすめできません」
渡邉さんはグルーミングのオンラインスクールを運営し、講師としても活動。愛犬が虹の橋を渡る時まで健康で快適に過ごせるよう、終生飼育を支えられる技術力と判断力を備えた人材を増やすべく、プロのグルーマーの育成に力を注いできました。
愛情と責任をもってお世話ができるよう家庭向けの講座を開くなど、おうちでできるノウハウを共有していくことも視野に入れています。
さらに、小学生に向けた「命の授業」にも取り組み「命を粗末にする人もいれば守ろうとする人もいる。そのどちらになるかは、自分で選べる。どっちになりたい?」と子どもたちに問いかけます。
「命が当たり前に大切にされる世界になればいい。私の願いはただそれだけです。愛で犬に触れて、心で仕事をする。その姿勢だけは、これからもずっと変わりません」
(取材年月:2025年12月)
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Profile
終生飼育を支えるドッググルーミングのプロ
渡邉美紗子プロ
グルーマー
株式会社LavBe
シニア犬やトリミングが苦手な犬にも向き合い、犬の状態を悪化させない対応・判断を重視。プロのグルーマー育成や家族向けの講座、講演活動などを通じて、終生飼育を支えるグルーミングの在り方を広げています。
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