最適な漢方薬を提案できる薬剤師
菊岡泰政
Mybestpro Interview
最適な漢方薬を提案できる薬剤師
菊岡泰政
#chapter1
世界遺産・元興寺の旧境内を中心とした「奈良町」。趣のある人気のエリアにあって、ひときわ風格のある町家造りの建物が「菊岡漢方薬局」です。創業は平安時代末期の元暦元年(1184年)。830年余り続く老舗の現店主が、24代目の菊岡泰政さんです。
ここでは様々な生薬を調合して症状に合わせた漢方の煎じ薬を処方するほか、飲みやすいよう粉末や錠剤にしたエキス剤も取り扱っています。散策途中に一服してもらえるようにと甘茶やハトムギ茶も用意されています。店内には漢方薬の原料となる生薬や、薬研(やげん)などの古い調合道具が展示され、まるで博物館のようです。辛口と中辛の2種類がある「しょうが飴(あめ)」、奈良の伝統薬「陀羅尼助丸(だらにすけがん)」なども販売しており、観光客も多く訪れます。
「冷え性や更年期特有ののぼせ、ほてりなどに悩む女性や、花粉症、アトピーなどのアレルギーをお持ちの方がよくご相談にこられます」と菊岡さん。お客様には30分から1時間ほどかけて問診を行い、216ある処方の中で最も適しているものを薦めます。そのうえで、飲み方や料金を了承してもらって処方します。
「電話やホームページで問い合わせてこられる方にも、まずは郵便やメールで問診票をお送りしています。対症療法の西洋医学と違い、漢方薬は体質改善を助けるもの。だからこそ、一人一人の体の状態、体格などに合わせ、最も適したものを飲んでいただきたいのです」と菊岡さんは説明します。
#chapter2
よく知られる漢方薬に、風邪のひき始めに飲む「葛根湯」があります。様々なメーカーからエキス剤が出ていますが、名前に「湯」と付くものは本来煎じ薬です。菊岡さんに処方をお願いすると、葛(くず)の根、ショウガ、ケイヒ、甘草(かんぞ)、ナツメなど七つの生薬を量り、だしパックのような袋に入れてくれました。1日分は25㌘。500ccの水に入れて30分ほどコトコト煮出し、濾(こ)し別けた薬液を2、3回に分けて飲むのだそうです。独特の風味がありますが、せっかく訪ねてきたのだからと、エキス剤より煎じ薬を選ばれる人が多いといいます。
最近は不眠やうつ状態、統合失調症など、メンタルの悩みを持つ人からの相談も増えているそうです。「病院で処方される睡眠薬や抗うつ剤は、神経に直接作用しますが、それに頼り過ぎると、かえって症状が悪化する場合もあります。そうした薬を飲まなくてもいい体をどうやって作っていくか。そこに漢方薬の出番があるのです」と菊岡さんは言います。
心の不調は何が原因なのか。例えば不整脈が出たり、時々動悸(どうき)がしたりする人がいます。重い症状でなくても、不安が増幅されてメンタルの不調に陥る人もいるのだとか。場合によっては、胃腸の働きを補い、おいしく食べられるようになるだけで改善に向かうこともあるそうです。「最近は様々なサプリメントがあり、頼る方も多い。でも、サプリメントが主役になってしまうと、本来食事で摂取しなければいけないものが偏ってしまいます」。まずは普段の食生活、生活環境を整えていくことが大切だと菊岡さんは強調します。
#chapter3
菊岡家の家訓には「祖先を大事にする」「健康に注意する」などと並んで「新記録を作る」という項目があるそうです。「それぞれの代で専門家になれということだと思います」と菊岡さん。伝統を受け継ぎつつ、時代の変化に合わせて新たなニーズを探り、それに応える努力をする。店が愛され、信頼され続けている理由は、歴代店主のそうした進取の気性にあるようです。
菊岡さんが自分の代で始めたことは二つ。一つは名簿だけだった顧客管理にカルテを導入したことです。来店が困難な遠方客の問い合わせにも的確、迅速に対応できるようになり、本格的に薬の発送ができるようになりました。
もう一つはオリジナル製品作り。具体的に困った症状はないという人にも、自分の体に思いを致す機会となるものをと、5年前から販売を始めたのがハーブティーです。花粉症で悩む人には「ルイボス・てん茶・黒豆ブレンド」、肌荒れが気になる人には「カモミール・レモンバーベナブレンド」など。買いやすいと観光客に好評です。
「奈良は木が多いので、花粉症の方だと、着いた途端に症状が出る方もおられます。そんな方には旅行の間だけ、1日か2日分だけでも漢方薬をお作りします。環境が変わってお通じが良くない、二日酔いなど、旅先で困っておられる方の力になり、奈良観光を楽しんでいただければ」と菊岡さん。ちょっとした相談や不安な気持ちを、気楽に伝えてもらえる薬局でありたいと願っています。
(取材年月:2016年11月)
リンクをコピーしました
Profile
最適な漢方薬を提案できる薬剤師
菊岡泰政プロ
薬剤師
菊岡漢方薬局
漢方薬は生薬によって全身の調和を整え、体質を根本的に改善していくのが特徴。慢性病から体質についての不安まで、あらゆる相談に応じ、一人一人に合った漢方薬を提案する
\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /
掲載専門家について
マイベストプロ奈良に掲載されている専門家は、新聞社・放送局の広告審査基準に基づいた一定の基準を満たした方たちです。 審査基準は、業界における専門的な知識・技術を有していること、プロフェッショナルとして活動していること、適切な資格や許認可を取得していること、消費者に安心してご利用いただけるよう一定の信頼性・実績を有していること、 プロとしての倫理観・社会的責任を理解し、適切な行動ができることとし、人となり、仕事への考え方、取り組み方などをお聞きした上で、基準を満たした方のみを掲載しています。 インタビュー記事は、株式会社ファーストブランド・マイベストプロ事務局、または朝日新聞が取材しています。[→審査基準]