石に花を咲かせるように歴史と精神を彫る石彫工のプロ
埜中紀郎
Mybestpro Interview
石に花を咲かせるように歴史と精神を彫る石彫工のプロ
埜中紀郎
#chapter1
その名のとおり、趣のあるお寺が並ぶ長崎市の寺町通り。界隈には、寺との古くからのつながりを物語るかのように石材店が点在していて、老舗「のなか石材店」もその一角にあります。明治30年に初代が現在地で創業。以来、117年という歴史を築き、長崎市内・県内はもとより九州全域で、3万点を越す記念碑などの石材工事や墓石工事を行ってきました。現社長である3代目埜中紀郎さんが引き継いで約35年。埜中さんの幅広い交友関係が縁で、著名人の記念碑も数多く建立しています。また、それらの功績が注目を集め、新聞、テレビ、雑誌等にも度々紹介されています。お墓は亡くなられた方への遺族の思い、それを理解して形にしていくのが自分の仕事という埜中さん。手を合わせ、先祖を敬う心を大切に、遺族に寄り添う気持ちでお墓づくりを手掛けているそうです。「仕事は丁寧にきちんと、うるさくなくちゃいけない。自分には厳しく、人にはやさしくという接し方で、おろそかにしちゃいけない。お墓は、基礎工事が肝心だから、手を抜いちゃいけない。基礎工事をごまかすと、見た目はきれいでも、年数が経つと傾いてきたり、問題が起きる。そうした先代からの教えをしっかり守り続けているんです」と語る埜中さん。基本に忠実に、歴史と伝統を守り、明日へとつないでいます。
#chapter2
埜中さんは、4人兄弟の次男です。家業を継ぐつもりはなく、東京の大学に進み、35歳までサラリーマン生活をしていました。しかし、学生時代に読んだ詩人・草野心平の石をテーマにした詩やエッセイから受けた感銘の記憶が忘れられず、石を扱う仕事をしたいとUターンを決意したそうです。石を彫る技術は、父の賢一郎さんにすべて教わりました。当時電動工具はなく、砥石でひたすら磨く根気のいる作業も経験。墓石の戒名や家紋、記念碑などは、先端の尖った鋼製の鏨(たがね)をハンマーで叩いて彫り込んでいき、文字に合わせて大小10種類の鏨を使い分けます。現在は機械彫りですが、彫る深さと文字の太さを同じにすることで立体感が生まれるのだとか。彫った文字には、変色が少なく、長持ちする金沢産の純金箔を塗布。糊の役目をする下地を塗り、乾くか乾かないかの絶妙のタイミングで、金箔を筆で押さえながら貼っていきます。下地の乾き具合が金の光沢を左右するため、職人の経験と勘が問われるそうです。「文字に金箔を貼るのは、もともとは中国の墓様式です。長崎で暮らす中国の人達の風習を取り入れたもので、中国文化が浸透している長崎ならではの伝統でもあります。手掛けた墓石や記念碑が100年、200年と残ることにやりがいを感じますね」。国家検定1級石工技能士の資格も有する埜中さん。石に対する造詣は深く、石造美術をテーマにしたエッセイの執筆や講演など、さまざまな活動も行っています。
#chapter3
かつては、山の斜面に建ち並び、上にあるほど価値があるとされていた長崎のお墓。昔の長崎の人達は坂を登ってお墓参りに行っていたそうです。それでも、少子高齢化、核家族化が進む今の時代では、それぞれの家庭にふさわしいお墓のスタイルも、以前とは随分と様変わりしてきています。もちろん、今でも昔ながらの大がかりで手の込んだお墓や、生前に故人が好きだったものをかたどったオリジナルのお墓の希望も少なからずあるそうです。そうした多彩なニーズに応えられるように、墓地の開発・分譲にも積極的に取り組んでいます。歴史ある石材店ならではの対応力と提案力でニーズに応え、求められるものを確実に提供できる体勢を整えています。埜中さんに相談すれば、希望通りのお墓をプランニングすることができ、老舗ならではの役立つアドバイスも受けられます。埜中さんの後継者には甥の幸治さんが決まっていますが、親族以外にも自分が培ってきた技術や貴重な経験の数々、苦労を伝えたいという考えから、文書にして残す作業も進めています。「自然が与えてくれた石のありがたみを大切に伝えていきたいですね」。石への深い愛情が感じられます。
(取材年月:2013年7月)
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石に花を咲かせるように歴史と精神を彫る石彫工のプロ
埜中紀郎プロ
石職人
有限会社のなか石材
代々受け継がれてきた深い知識と卓越した技術を駆使し、丹誠込めて最上の仕上がりのお墓や記念碑を創らせていただきます。
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