PROFESSIONAL
STORIES

Mybestpro Interview

高木の維持、管理を専門に手掛け、樹木を守る

樹木と人間の共存を目指す木仕事のプロ

宇治田直弘

宇治田直弘 うじたなおひろ
宇治田直弘 うじたなおひろ

#chapter1

樹木のメンテナンスを行うアーボリスト、調査・診断を行う樹木医として活動

 「強風や豪雨の際の倒木が心配」など、大きく育ち過ぎた樹木の扱いに困っていませんか?

 長野県伊那市を拠点にする「樹木業Tree Care Ujiyan」代表の宇治田直弘さんは、高木の維持、管理を手掛ける「アーボリスト(樹護士)」として活動。全国各地から依頼を受け、神社や寺院にある樹齢の長い木や、山の斜面にある巨木、伸び過ぎた街路樹の剪定(せんてい)などを行っています。

 「生け垣などの低木とは異なり、数十メートルにも及ぶ大木は、手つかずでそのままにしているケースが見受けられます。しかし、適切に対処しないと周りの木や住宅に影響するほか、枯れた枝が落ちてくる恐れがあります。古い木なら、裂けたり倒れたりするリスクも出てきます」

 高所作業車やクレーン車が入りにくい場所でも対応できるため、放置せずに相談してほしいと言います。

 「私は、ロープを用いて木に登る『ツリークライミング』の技術を身に付けています。切った枝は、落下したり家屋にぶつかったりしないよう、重量を計算した上で滑車やロープで動きをコントロールしながら静かに地上に降ろします」

 弱っている枝や折れやすい組成の枝は、強度の強い専用のロープを使ったケーブリングという方法でケアし、丈夫になるまで保護するそうです。

 「重機を使わないのは、周囲の木を傷つけないためです。最小限の道具で、身一つで動きますので、建物や木々が密集しているような狭い所でも作業できるのが強みです」

 また樹木医でもある宇治田さんは、調査や診断を通じて健康な状態へと導く樹勢回復にも力を入れています。

#chapter2

地上80メートルでの樹上作業も経験。木の生命力をよみがえらせるために尽力

 日本におけるアーボリスト養成組織、ATI(アーボリストトレーニング研究所)が定める上位資格「マスター樹護士アーボリスト」や、指導を行う「マスタートレーナー」を取得している宇治田さん。米国に本部を置くISA(国際アーボリカルチャー協会)が認定する国際基準「ツリーワーカークライマースペシャリスト」も保有。ツリークライミングの国内大会で2度優勝し、国際大会では7位の経験があります。

 「アメリカのカリフォルニア州にあるセコイア国有林に出向き、樹齢数千年とされるジャイアントセコイアをメンテナンスするプロジェクトに参加したこともあります。地上80メートルの樹上作業に携わりましたので、どんなに高い木でもお任せいただけます」と力強く話します。

 アーボリストは欧米では身近な職業の一つで、「樹木と人の共存」を理念に掲げています。
 「倒壊など明らかに危険性がある場合は伐採せざるを得ないのですが、安全性を確保できる時は必要な剪定のみ行い、木の生命力をよみがえらせることを重視しています」

 高い専門性を備え、数々の現場で活躍する宇治田さんの原点は、京都府内で過ごした林業の見習い時代にあります。
 「親方は、一本一本の木をすごく大切にしていました。山を守る上で、森林の周辺部にあたる『林縁』の木や、尾根の木、沢の木は切り過ぎてはいけないと。当時はそれを知らず、切り過ぎてはよく怒られました。厳しい人でしたが、自然と共に生きる術を教わりました」

宇治田直弘 うじたなおひろ

#chapter3

木は動けない。依頼があればこちらから全国どこへでも駆け付けるのがポリシー

 宇治田さんは「樹木を通じて命のあるすべての生き物と、生きられる 環境を守りたい」との思いから、20代後半で樹木医に。プライベートで楽しんでいたツリークライミングを通じてアーボリストの仕事を知り、「これこそ自分が探し求めていた世界」と迷わず飛び込みました。

 特に印象に残っているのは、「自宅の敷地にあるケヤキが弱っているので手当てしてほしい」という依頼だとか。
 「幹の太さが直径約1メートル、高さ25~26メートルで、樹齢は150~200年ほど。代々受け継いできたとのことでしたが、大きなうろ(穴)が開いて崩壊の前兆がありました」

 宇治田さんは新しい株を得るために、高取り法と呼ばれる繁殖方法を採用。樹上で数本の枝に根を生やす処置を施し、ケヤキ本体を伐採した後に苗を植栽しました。無事に根付き、今では高さ3メートルほどに成長しているそうです。
 「何とか子孫を残すことができ、お客さまに大変喜んでいただきました。私としてもうれしかったですね」

 ポリシーは、問い合わせがあれば全国どこへでも駆け付けること。2019年に開業し、これまでに南は沖縄、北は秋田まで足を運びました。
 「樹木は人間と違って動けませんから、こちらから赴かなくては。お手入れについて悩みがおありでしたら、ぜひお声掛けください」と笑顔を見せます。

 「新緑や紅葉で私たちの暮らしを彩り、心を癒やしてくれる樹木はかけがえのない存在で、その命を大事に紡いでいかねばなりません。私どもの取り組みに共感してくださる方と一緒に、未来につなげていきたいですね」

(取材年月:2022年9月)

リンクをコピーしました

Profile

専門家プロフィール

宇治田直弘

樹木と人間の共存を目指す木仕事のプロ

宇治田直弘プロ

アーボリスト

樹木業Tree Care Ujiyan

巨木、高木の維持・管理を専門に行う会社です。高所作業車やクレーン車などを使わず、コンパクトかつ安全に剪定(せんてい)や伐採を行います。山の斜面や住宅などが密接した場所の木も安心してお任せください。

\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /

掲載専門家について

マイベストプロ信州に掲載されている専門家は、新聞社・放送局の広告審査基準に基づいた一定の基準を満たした方たちです。 審査基準は、業界における専門的な知識・技術を有していること、プロフェッショナルとして活動していること、適切な資格や許認可を取得していること、消費者に安心してご利用いただけるよう一定の信頼性・実績を有していること、 プロとしての倫理観・社会的責任を理解し、適切な行動ができることとし、人となり、仕事への考え方、取り組み方などをお聞きした上で、基準を満たした方のみを掲載しています。 インタビュー記事は、株式会社ファーストブランド・マイベストプロ事務局、または信濃毎日新聞が取材しています。[→審査基準

MYBESTPRO