飲食店の開業を親身にサポートする不動産のプロ佐藤千晶

飲食店の開業を親身にサポートする不動産のプロ

佐藤千晶

関連業者とのネットワークで、飲食店開業をワンストップでお手伝い

　漁業のまちとして知られる宮城県塩竈市。中心部の尾島町に、白を基調とした瀟洒（しょうしゃ）な建物があります。洗練されたエントランスが来訪者を迎えるこの場所は、不動産会社のオフィスです。

　「お茶を飲みながら、お客さまのご要望をじっくりお伺いできるようにテーブルセットを配し、くつろぎの空間を設けています」と話すのは、「サセイ不動産」代表の佐藤千晶さん。「受付カウンターなどはないので、『不動産屋さんらしくないね』とよく言われます」とほほ笑みます。

　佐藤さんが主に取り扱うのは、飲食店向けの情報。というのも、実家は祖父母の代から卸の酒販店を営んでいて、配達の際に店主から店舗の移転や売却について相談を受けることが多かったそう。こうしたことから家業の傍ら、宅地建物取引士の資格を取得し、個人で不動産業を開業。2015年に法人化しました。

　「お客さまから家賃、立地、広さなどをお伺いし、当社の豊富な管理物件の中からご希望に沿ったものをご提案します」と佐藤さん。厨房機器、電気・水道工事、有線放送といった事業者とネットワークを構築し、物件探しから内装の整備と、開業までワンストップで対応しているのも大きな特徴です。

　「施工業者さんとは長いお付き合いで、信頼している方ばかりです。オープンした後も、水漏れや配線のトラブルに応じるなどアフターフォローもいたしますので、お困りの際はお声がけください」

　融資が必要な場合には商工会議所の職員を紹介したり、初期投資を抑えたいという時は、他店で不要となった椅子や食器といった備品を融通したりすることもあるとか。

塩竈に新しい風を！新規創業者向けの「お試し店舗」あります。

　漁業関係者が盛んに行き交うことから、飲食店街が発展した尾島町。このエリアを中心に、佐藤さんが開店をサポートしたところは数知れず。それだけに「東日本大震災や新型コロナウイルスなどにめげず、成長を続ける様子を目にすると、感慨もひとしお。何だか、社会に子どもを送り出す母親のような心持ちですね」と温かく見守ります。

　「5坪の小さな店からスタートされた『炭火焼肉ぐら』というお店があるのですが、味が評判を呼び繁盛店になったのもつかの間、震災で店舗は全壊しました。気を落とし、廃業を口にする店主さんに、当社の2階にある物件を半ば無理やり提供して再開してもらいました。業績はすぐに上向き、現在は3店舗を展開するまでになりました。グルメサイトのランキングで1位を取ったときは、自分のことのようにうれしかったですね」

　佐藤さんは、「まちを元気にしたい」との思いから、新規創業を目指す人への支援にも力を注ぎます。
　「『無事にやっていけるだろうか』と不安を抱いている方には、期間を区切ってお試しでお店を経営してもらう『チャレンジShop』というプランを用意しています。店舗を気に入ってくだされば、そのまま継続して営業していただくことも可能です」

　流行に敏感な、若い世代の人たちが出店すれば若者が集まり、「塩竈に活気がわいてくる」と佐藤さん。「まちを盛り上げるためにも私が力になりますので、『やってみたい』という方はぜひお問い合わせください」

「3.11」を機に使命感。「飲食店を復興のともしびにして、まちを復活させたい」

　佐藤さんが不動産業を始めたのは1992年。きっかけは父親のがんでした。「突然一家の大黒柱が倒れ、ショックでした。妹はまだ大学生だったこともあり、私が勤め先を退職し家業を継ぐこととなりました。正直、継がざるを得ないという状況でしたね」と打ち明けます。

　心境を変化させたのは「3.11」。事務所がある尾島町にも、1.5mの津波が襲来しました。「ふるさとが死んだように感じて、すごく悲しくなりました。そこから、まちを生き返らせたいという気持ちが強くなりました」

　前を向いた佐藤さんは、翌2012年に早くも木造2階建ての飲食店用の建物を建設。この場所を復興のともしびにして、「塩竃はまだまだ大丈夫」というメッセージを発信したい一心からでした。その後、まちが少しずつ以前の姿を取り戻していったのは周知の通りです。

　佐藤さんの使命感は今も色あせておらず、近年では台湾の物産展に出展し、インバウンド客を塩竃に呼び込む計画を立案。折からのコロナ禍で中断していますが「多くの人に塩竃に来ていただき、このまちを楽しんでいただきたい」と語ります。

　「社訓として『伝統を超える未来へ』があります。祖父母、両親が築いた伝統と地域の伝統を大切にしながら、まちに新しい風を吹き込んで魅力のある未来を創っていきたいと思っています。新しく開業される飲食業者さまを、全力で支えていきます」。佐藤さんの情熱は、さらに燃え続けます。

（取材年月：2022年4月）

新しい風を送り込み、まちに元気を！　飲食店の開業を支援し、地域の活性化を目指す

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専門家プロフィール

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