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改革・改善を妨げる社内の壁を、現場・現実・現物の「三現主義」で打破

設計開発・製造業の業務および経営の改善・革新を推進するプロ

石黒浩伸

石黒浩伸 いしぐろひろのぶ
石黒浩伸 いしぐろひろのぶ

#chapter1

設計開発・製造業者の「チェンジ・エージェント」として、課題解決を支援

 「企業の規模にかかわらず、組織は機能別に分かれ、各部署がプライドとポリシーをもって仕事をしていますから、互いにそこには立ち入らないという形で会社は回っています。ただ、全社が一つになって改革や改善に取り組むべき局面では、どうしてもその壁を越え相手の領域へ踏み込まざるを得なくなるんです」

 そう語るのは、設計開発・製造業者に向けたコンサルティング会社「office H.I.」代表の石黒浩伸さん。質の高い議論に基づいて意思決定をするための技法、ファシリテーションを用いて、社内全員で課題を共有し、合意を形成して目的を達成するまでの道程を支援する「チェンジ・エージェント」です。

 「経営者さんと実働部隊、あるいは各部署間の問題意識がずれていることが大半ですので、まず、現場に入ります。取締役陣には実務者の視点で、一方で実務者には取締役側の視点で、意見をお伝えする役割を負います」

 石黒さんは、業務フローの見直しや顧客が気付いていないことを指摘することは大前提とした上で、重要なのは、「気付いてはいても、社内の関係上言えないことを代弁すること」だと言います。

 「ものづくりへの自負や経験則があるからこそ、設計側は『こういう製品を作らないと売れない』、製造側は『こんな作り方だとコストも時間もかかり過ぎる』と、食い違いが生じます。部門長が意見や懸念を吸い上げて双方に落とし込むにも、メンバーから『無理なのは分かるでしょ』と言われてしまえばそれまで。社内の人間では内情が分かる故に難しい場面も、第三者という外側の人間だからこそ、調整ができるんです」

#chapter2

本音でぶつかり合い、それぞれが腹落ちする合意形成を後押し

 石黒さんは工学部出身で、元々は大手通信メーカーのエンジニア。業務改善チームへの参加を契機に、「物を相手にする仕事」から「人を相手にする仕事」に変わる中、胸に強く焼き付けたのは、現場で現物を観察し、現実を認識した上で解決を図る「三現主義」です。

 「現実を目の当たりにした人が、『ああそうだったんだ』と自ら変わっていくところに興味を引かれ、そこに関われることもまた興味深く感じました」と、独立へと至った心境を語ります。

 全社が一丸となって改革・改善へと歩を進めるに当たり、重視するのは合意形成。総意を得るために欠かせないのが、忖度(そんたく)のない意見の発出と活発な議論です。
 「会議では、仕事の中身を良くしていくという観点で、互いに喧々諤々(けんけんがくがく)、本音でぶつかっていただきます。同じやるにしても、上からの命令だとやらされ感になってしまうんですね。自分たちがやりたい、やらなきゃ、と腹落ちしていただくまでが一番大変です」

 石黒さんは、相互理解や現状把握に役立つカードセッションや、対話を見える化するグラフィックファシリテーションを活用しながら、積極的に現場に入り込み、働く人の生の声に耳を傾けます。

 「常に、その会社の一員として物事を見ることを心掛けています。ある企業で、革新活動のメンバーさんの話を議題として取り上げようとした時に、会議の場でそのメンバーさんが話をすっと流したことがあったんです。本人にとって言いにくい部分だったようで、その時は私が代わって口火を切りました」

石黒浩伸 いしぐろひろのぶ

#chapter3

町内会や学校関係の地域組織活動の運営を「活動プランナー」としてサポート

 石黒さんのもう一つの顔、それは町内会や学校関係の地域組織活動をサポートする「活動プランナー」です。
 「町内会の役員を担うようになり、その代表として小学校の運営協議会に参加することになったのがきっかけです。イベント開催へのアドバイスや、各方面に協力を呼び掛けたりしていますが、ここでも企業の会議同様、結論が出ない『空中戦』が繰り広げられることがあります」

 議論の目的とアウトプットがなおざりにされたまま言葉だけが行き交い、何について話し合っているのか、参加している人にも分からなくなるケースが大半だとか。

 「ただ企業と違うのは、何かを変えようとする時に、すぐに答えを求めてしまうんですね。『あそこの地域で良いことをやっているから、うちもまねてみよう』と。自分たちが住む地域にそれが合っているのかどうか、見極めることが大切です」

 今では地域防災にも携わっている石黒さん。自治体が用意した防災計画のひな型が、実際の状況や現地の環境に合致しているのか検証しないまま、決められた通りに事を進めようとする姿勢や、若者層の地域離れに頭を悩ませていると言います。

 「おそらく日本の会議の特徴は、『ファシリテーターの不在』です。議長や司会者はいますが、最終結論がすでに決まっていて、そこに着地点を持っていきたいという傾向が強い。結果、参加者の発言が少なかったり、発言が誘導された形になったりと、本音を言えない部分があります。それは違うな、変えなきゃという思いが強くありますね」

(取材年月:2023年9月)

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石黒浩伸

設計開発・製造業の業務および経営の改善・革新を推進するプロ

石黒浩伸プロ

設計開発・製造業向けコンサルタント

office H.I.(オフィス エイチアイ)

設計開発・製造業向けの「チェンジ・エージェント」として、組織の内部に入り込み、顧客と同じ立場・目線に立ち、現場・現実・現物の「三現主義」でともに活動。業務と経営の改善・革新を推進する。

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