PROFESSIONAL
STORIES

Mybestpro Interview

稲作に適した伊賀の地で味・香り・粘りの三拍子がそろった「伊賀米」を有機肥料で栽培

化学肥料や農薬の使用を抑えたお米作りを実践するプロ

西山尚吾

西山尚吾 にしやましょうご
西山尚吾 にしやましょうご

#chapter1

農薬や化学肥料の使用を抑えた「特別栽培米」、「みえの安心食材」を取得

 三重県伊賀市で「西山農園」を営む西山尚吾さん。農薬や化学肥料の使用を極力抑え、穀類などを原料にした有機肥料を用いて栽培する米農家で、約2万坪にあたる7haの水田を管理し、年間で約40tの伊賀米を収穫・出荷しています。

 「周囲を山に囲まれた盆地で昼夜の寒暖差が大きい伊賀は、粒が大きくふくよかなお米を育てるための要素を備えています。稲が日中に取り入れたでんぷんは夜が寒いほど消費されにくく、気温が下がる夜間にしっかり実に蓄えることで、甘くもちもちとした味わいになります。加えて、伊賀は淀川の源流に位置し、清らかな水が豊富で非常に適した場所なのです」

 地元に根差して40年近く米作りに携わってきた西山さん。人と環境に優しい食を目指し、農林水産省が定める「特別栽培米」の基準を満たしています。

 「地域の一般的な生産方法と比較し、農薬の使用回数と化学肥料の窒素成分量を50%以下に削減して育てられたお米に与えられるものです。当方ではそれぞれを60%カットし、三重県からは『みえの安心食材』の認定も受けています」

 丹精込めたお米は、同園のオンラインショップで展開するほか、大手航空会社や旅行会社の通信販売サイトでも取り扱われ、国内外でファンを獲得。有名料理店でも採用されています。

 「品質に対する責任を負う覚悟を持ち、土づくりからこだわり、品質の良い種子を使用(全量種子更新の種子)、田植え、稲刈り、精米、発送まで一貫して手掛けています。直送により鮮度の良い状態でお客さまに届けし、出来栄えのご感想をいただき励みにしています」

#chapter2

教師を務める傍ら25歳で農業を始め、定年退職を機に「西山農園」を開園

 西山さんは1961年、伊賀市で生まれました。父親は自動車学校の教員を務める傍ら、休日には稲作に励む兼業農家で、自身も幼少期から農作業に親しみます。

 大学卒業後は三重県で中学校の教師となり、40代半ばからは教頭、校長といった管理職を歴任。教育現場の改革に尽力し、シンガポールへ3年間赴任したり、小中一貫教育の先駆的プログラムを実践したり、多岐にわたる業務を経験しています。

 「家業については、父親の死をきっかけに農地を受け継ぎ、25歳のときから稲作を始めました。学校が休みの土日や祝日を使って試行錯誤を重ねながら、農薬や化学肥料の使用を控えた米作りをしてきました」

 60歳の定年退職を機に、農業に専念すべく「西山農園」を立ち上げた西山さん。長年にわたり蓄積したノウハウを生かし、生産から販売まで基本的に1人で全ての工程をこなしています。

 「2021年から専業農家になりましたが、まだまだ学ぶこと、やりたいことがたくさんあります。例えば、『スマート農法』に取り組む重要性も感じています」

 少子化などを背景に日本全体で就農人口が減少し、農業従事者の高齢化が進行。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)技術を活用して人手を補うことは、喫緊の課題だと言います。

 「遠隔操作できるトラクターで田畑を耕したり、無人航空機のドローンで肥料をまいたり、作業を自動化する機器を積極的に採用して生産基盤を強化しなければ、日本の農業は競争力を失うと危機感を抱いています」

西山尚吾 にしやましょうご

#chapter3

日々の食卓を支える農業の可能性を広げ、生まれ育った伊賀の魅力を発信

 すでに、ドローンを使った肥料の散布を実施している西山さん。将来的には、カメラを搭載した機種で稲の生育状況を撮影してデータを収集・分析し、栽培方法や土壌の改善につなげることも検討しています。さらに、先進的なテクノロジーを活用したスマート農法を導入して農業の魅力を高めたいと力を込めます。

 「人が担っていた工数を減らして省人化を進めると同時に生産性を向上させることで、農業は効率的な仕事で『稼げる』という意識を定着させたいと考えています。若い世代は特に、収入が安定しなければ進路として選ぶのは難しいでしょう。当方が成果を出すことで農家のロールモデルとなり、新規参入者を増やしたいのです」

 西山さんの視線の先には、生まれ育った地元を活性化したいという目標があります。「伊賀は自然が美しく、忍者の里として、また高名な俳人である松尾芭蕉の生誕の地として、歴史深い素晴らしい土地です。街のシンボルでもある伊賀上野城のお膝元には武家屋敷が並び、伝統工芸の伊賀焼もあり観光資源は豊富です。当方のお米を食べてくださった方に少しでも興味を持っていただけたらうれしいですね」

 自慢の伊賀米は味、香り、粘りの3拍子がそろったお米として評価が高く、かめばかむほど甘みが増し、冷めてもおいしいのが特徴だと話します。「伊賀の気候風土に育まれた上質な品を多く方にご賞味いただいて日々の食卓を支える農業の可能性を広げ、地域を盛り上げていきたいですね」

(取材年月:2024年12月)  

リンクをコピーしました

Profile

専門家プロフィール

西山尚吾

化学肥料や農薬の使用を抑えたお米作りを実践するプロ

西山尚吾プロ

米農家

西山農園

豊富な水と気候条件に恵まれた伊賀の地で、化学肥料や農薬の使用量を減らし、有機物を原料にした肥料を使ったお米作りを実践。国の特別栽培米の基準を満たすと共に、県からは「みえの安心食材」の認定を受けている。

\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /

掲載専門家について

マイベストプロ三重に掲載されている専門家は、新聞社・放送局の広告審査基準に基づいた一定の基準を満たした方たちです。 審査基準は、業界における専門的な知識・技術を有していること、プロフェッショナルとして活動していること、適切な資格や許認可を取得していること、消費者に安心してご利用いただけるよう一定の信頼性・実績を有していること、 プロとしての倫理観・社会的責任を理解し、適切な行動ができることとし、人となり、仕事への考え方、取り組み方などをお聞きした上で、基準を満たした方のみを掲載しています。 インタビュー記事は、株式会社ファーストブランド・マイベストプロ事務局、または三重テレビ放送が取材しています。[→審査基準

MYBESTPRO