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「地域で心から安らげるお産を」妊産婦を支える出張助産師とサポートチーム

“かかりつけ助産師”として妊産婦と家族に寄り添うお産のプロ

宮川友美

宮川さん正面
レクチャー

#chapter1

助産師のほか保育や食育の専門家、家事・育児の経験豊富なスタッフが母子をケア

 国内の少子化が急速に進み対策が急務とされる中、母子を守る地域の周産期医療体制の充実が課題の一つとなっています。

 「慣れ親しんだ場所で、身内や周囲の人々に支えられて子どもを産み育てるのが当たり前だった頃の“産婆”の安心を現代にと、8府県12の助産院が参画して2015年に立ち上げたのが『出張さんばステーション』です」

 そう語るのは、発起人の一人で名付け親でもある、京都市の「出張さんばステーション聖護院 海(まある)助産所」の代表、宮川友美さん。志を同じくする各地の助産師のまとめ役を務めています。

 「私どもは、助産院に限らず病院や自宅などで出産を希望する場合にも、妊婦健診や妊婦相談などで妊娠期・その後の伴奏をいたします。分娩や産前産後ケア、育児支援などに携わる“かかりつけ助産師”として、マンツーマンで妊産婦とその家族に寄り添います」

 宮川さんの院には、助産師をはじめ、保育や食育の専門スキルと家事・育児の豊富な経験知を備えたスタッフが在籍。発達や体づくりなど多彩な分野の専門家も協力しています。

 「当方は住宅地に溶け込むたたずまいで、親しみを込めて“まあるさん”と呼ばれています。京都市の産後ケア事業『スマイルママ・ホッと事業』の委託事業所でもあり、赤ちゃんとお母さんのショートステイやデイケアなど安らぎの場として利用できるほか、妊活や子育て、更年期といった女性特有の悩みにも向き合っています」

 ヨガ、妊産婦体操、ベビーマッサージといった講座やイベントも開催。親子連れや妊活中の人が自由に集い、語り合える開放日も設けています。

#chapter2

「本当に助けが必要なところに支援の手を」と、地域の女性のよりどころを開設

 小学生の頃の夢をかなえ、総合病院の産婦人科の助産師となった宮川さん。15年間の勤務の中で数多くの命の誕生に立ち会い、さまざまな事情を抱える家族と接するうち、母親をとりまく環境が必ずしも現状に即したものでないことを知ります。

 大学で経済や社会の仕組みを学び直すなど見識を広げるとともに、女性の生き方や家族の在り方に関心を寄せるように。職場では、地域に根差した外来診療の環境づくりを任される立場となり、人材不足による医療サービスの停滞など問題意識がさらに高まります。

 「加速する少子化で、妊婦健診や分娩ができる場も減少するばかり。本当に助けが必要なところまで十分に支援の手が及んでいるとは言い難い状況でしたが、組織の中で助産師にできることには限りがあります。『なんとかこの状況を変えたい』との思いが、年々膨らんでいきました」

 転機が訪れたのは、宮川さん自身がお産の当事者となり、「女性にとって出産は命がけの大仕事」と実感した2012年。
 「一人一人にしっかり向き合い、揺らぎやすい心身を癒やしていきたい」と、出張助産師として新たな一歩を踏み出すことを決意します。

 「開業助産師として、個人で活動を続ける道もありました。ただ、昔ながらの産婆の役割を全うし、地域ぐるみで子育てを見守っていくには、後進の育成も含め拠点となるスポットを作らねばと考えました。賛同者を募るクラウドファンディングを活用し、地域のよりどころを創設することにしたのです」

外観

#chapter3

「何ものにも代えがたい貴重な体験を、心から幸せと思えるように」チームで応援

 「私たちは助産師である前に、生活者としての視点も大事にしています。同じ女性として健康面のこと、家族関係や子育ての悩みのほか、家事や料理のちょっとした豆知識など、会話の中でどんなささいなことでもお話しいただいて構いません」

 院内にある一室は、母子がゆっくりと宿泊や休憩ができる“ほっこり空間”。食事の用意や赤ちゃんの沐浴、授乳の手伝いなどを、自分の母親や姉、妹、先輩主婦のような存在のスタッフに託すことができます。

 「慣れない育児を、親身になってサポートしてくれる知人や親戚が近くにないという人にも、実家に帰ったようにくつろいだ時間を過ごしてほしい」というのが、宮川さんたちの思い。

 「ここ数十年にわたる医療費削減の取り組みとして、高齢者が地域で暮らせるよう、各地で訪問看護などの在宅支援システムが整いつつあります。妊産婦ケアにおいても同様に、地域ごとに頼れる存在があれば心強いでしょう」

 宮川さんは、個々に応じた関わりを実現していく上で要となる人材育成にも注力。助産師を志す学生インターンを受け入れています。
 「お産はあくまで人間の自然な営みの一つ。助産師自身が生活を楽しんでいればこそ、皆さんの力にもなれる」と、自らの日常を大切にすることも伝えています。

 「妊娠、出産は女性のライフステージの中でも、何ものにも代えがたい貴重な体験。できることならその幸せを存分にかみしめながら、お産に臨んでほしいですね。私たちがチーム一丸となって応援します」

(取材年月:2024年3月)

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宮川友美

“かかりつけ助産師”として妊産婦と家族に寄り添うお産のプロ

宮川友美プロ

助産師

出張さんばステーション聖護院 海(まある)助産所

助産師が他の医療機関と連携をとりつつ自宅などへ出向き“かかりつけ助産師”としてマンツーマンで妊産婦とその家族に寄り添います。宿泊可能な拠点施設でサポートチームと共に、産前産後のケアや家事・育児を支援。

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