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豊富な知識と経験をもとに、書画愛好家の思いをかなえる「文房四宝」の選び方をサポート

文房四宝の選定をサポートする書画芸術のプロ

瀬田保二

瀬田保二 せたやすじ

#chapter1

筆、墨、硯、紙を扱い、約3000アイテムのから個々の要望に適した品を提案

 「日本で約1400年にわたり大切にされてきた『文房四宝』の選び方をお手伝いし、書画を愛する方々の思いに応えながら、連綿と続く文化を支えていきたいと考えています」

 そう話すのは、京都市東山区の「賛交社」代表の瀬田保二さん。筆、墨、硯(すずり)、紙といった書道具の販売と書画の教室、ギャラリーの運営をしています。

 「取り扱う商品は、初心者が使いやすいものから、趣味で楽しんでいる方に向けたこだわりの品、骨董的な価値を持つ希少品まで約3000アイテムをそろえています」

 筆は、リーズナブルで耐久性のあるものや、江戸時代から製造が盛んな広島県熊野町の熟練職人が手作りした繊細な品、白鳥、水鳥、馬、鹿といった鳥獣毛のほか、竹、ワラ、シュロなど植物を使った特殊筆、パフォーマンス用の大筆とさまざま。用途や予算に合わせて提案しています。

 硯は「羅紋硯(らもんけん)」などの実用的な唐硯を中心に、日本各地で生産された和硯も広く扱っています。

 紙は、書道を始めたばかりの人に適した、にじみにくくよれにくい厚みがあるタイプや、墨がよく浸透して立体的な表現に向いた半紙など、使う人の好みやレベルに応じて多様な材質、厚さ、製法で用意しています。

 「お客さまがどういう作品を描くのか、初心者であればどんな目標があり、上達に向けてどんなお悩みを持っているのか、といったことを丁寧にお聞きし、ぴったりの商品をご紹介いたします。開業から50年以上、この道一筋にやってきた知見と経験がありますので、書画に関することは何でもサポートさせていただきます」

#chapter2

かつての勤め先で墨への造詣を深め、書家と開発したオリジナル商品も展開

 瀬田さんが書に用いる文具の世界に入ったのは、17歳で奈良県の墨・書画用品メーカー「墨運堂」に就職したことがきっかけです。

 「当時の社長が墨の研究に大変熱心で、製法や特長など、多くの知識を身に付けさせてもらいましたので、特に墨には自信をもっています。従業員たちも『墨のことなら代表に』と頼ってくれています」

 墨は材料や精製の方法によって、濃い・淡い、赤みや青みが強いものなど微妙な違いがあるのだとか。紙や硯との相性によっても変化するそうです。
 「当社は既製品だけでなく、著名な書家の先生方と開発した、伸びや色味を追求したオリジナル品も販売しています。各種商品の中から、お客さまが求めているものを専門的な観点でお選びいたします」

 社屋2階では、一流の講師陣が書道や水墨画、篆刻(てんこく)、写経などを指導する「文化サロン賛交」を開催。ギャラリー「アートスペース六波羅」も貸し出し、京都を中心に活躍する作家らが個展を開くなどして活用しています。

 日本の伝統芸術である書画を多彩な切り口で盛り立てる瀬田さん。兵庫県出身で、墨運堂で修業したのち25歳で独立。京都市中京区に最初の店舗を構えました。

 「お客さまとの対話を大事にした商いを営んでまいりました。言葉を重ねてご要望をくみ取り、ニーズに合った品をお届けできるよう心掛けています。お客さまにご満足いただくには、商品について知らねばなりませんから、自ら学び続ける姿勢が重要だと肝に銘じています」

#chapter3

商品知識と対話重視の接客でファンを獲得、日本を代表する書家たちも愛用

 商品に対する造詣と対話重視の接客でファンを増やし、現代書道の巨匠・村上三島ら日本を代表する書家たちが瀬田さんの商品を愛用してきました。オンラインショップも展開して販路を拡大。2022年に社屋を現在地に移転リニューアルしたことで、新たな顧客も獲得しています。

 「京都市の文化芸術促進地域に指定されたエリアで、近隣に芸術系の高校、大学があるため、学生さんがよく足を運んでくれます。国宝の三十三間堂や歴史的な展示物が並ぶ京都国立博物館からも程近く、観光で立ち寄った方や他県からのお客さまも増えました」

 数多くの顧客に寄り添いながら、ユネスコの無形文化遺産に「書道」を登録する活動にも尽力しています。
 「日ごろからお世話になっている書家の先生が文化庁の関係機関に所属されていて、お話を聞いてぜひ協力したく、参加しました。とめ、はね、はらいといった技法で漢字や仮名をつづる書道は日本が誇る文化。深遠でみやびな世界を多くの方に知ってほしいと思います」

 伝統産業の振興にも心を砕き、店内には、美しく独特の風合いを持ち、京都府指定無形文化財に指定されている「黒谷和紙」など、匠の技が光る手すき和紙も販売しています。

 「文房四宝はどの品も地域の特色を生かし、職人が丹精込めて仕上げたものばかり。硯で墨をすり、筆に含ませて書をしたためる作業は心を落ち着け、生活を豊かにしてくれます。魅力を発信して書画に親しむ方を増やし、未来永劫の発展に貢献していきたいですね」

(取材年月:2024年9月)

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瀬田保二

文房四宝の選定をサポートする書画芸術のプロ

瀬田保二プロ

書画材料・書画用品専門店

株式会社賛交社

東山区にある筆、墨、硯、紙の専門店。初心者が使いやすいものから、趣味で楽しむ方に向けた品、骨董的な価値を持つ希少品まで約3000アイテムを揃え、用途や予算に応じて適したものを選定します。

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