旅行業界と阿蘇を知り尽くした旅のプロ青木千愛

旅行業界と阿蘇を知り尽くした旅のプロ

青木千愛

“火の国”熊本のシンボル阿蘇山や、周辺エリアの魅力を伝える旅を提案

　日本有数の活火山で、“火の国”熊本のシンボルである阿蘇山。悠々とそびえる山のふもとには、馬が草を食（は）む緑の大草原が広がっています。

　「阿蘇の自然や、里山で連綿と続く人の営みを、旅を通じて分かち合いたいですね」と話すのは、「MOYAI」の代表・青木千愛さん。噴火により形成された巨大な凹地のカルデラや、歌にも詠まれる草千里ヶ浜、数々の温泉地を有する、阿蘇くじゅう国立公園エリアに特化したツアーの企画・販売、卸売り、現地手配を行っています。

　「大手旅行会社に16年勤務し、旅行業の川上から川下まで全工程に携わりました。アクティビティーの組み立てなど、事業者さまに向けたアドバイスもいたします」

　阿蘇で生まれ育ち、阿蘇を愛してやまない青木さん。観光協会や地場産業の関係者とネットワークも築き、「現地を知る人ならではの提案力」が強みです。

　「初めて阿蘇に訪れ、感動して涙する方もいて。壮大な景観に魅了され、何度もリピートしてくださることが励みになっています」

　また、海外渡航60回以上の知見を生かし、国内外の旅行相談にも注力。最初に「どんなふうに過ごしたいか」を問い掛けているそう。

　「旅は行き先よりも、どう過ごすかで満足度が変わります。情報のみならず、安心感を届けるため、趣味嗜好や経験に合わせてパッケージや個人手配、ホテルや航空会社の選び方を案内し、保険などの質問にもお答えします」

　店舗、オンラインや電話を通じてコミュニケーション。ハネムーンや女子旅、家族旅行やひとり旅など、目的や要望にそって細やかにサポートしています。なお旅行業法により、相談業務以外の手配や旅行商品の販売、斡旋等は行っておりません。

延べ1万人以上の旅行相談に応じ、多くの人に喜ばれる旅を届けるため独立

　学生の頃から旅行が大好きで、添乗員のアルバイトをしていた青木さん。専門学校卒業後は旅行会社へ入社。延べ1万件以上の旅行相談に応じ、支店のマネージャーや企画担当も務めます。

　「特に忘れられないのは、2016年の熊本地震です。支店長をしていたときで、1カ月ほど会社に泊まり込んだんです。お客さまや従業員の安全を守るために各方面と連絡を取る中で、多くの人に支えられて仕事が成り立っていると痛感しました」

　状況に応じて臨機応変に対応する現場力などを養いますが、責任が増すにつれ次第に葛藤が募ります。

　「利益も大事ですから、時には難しい判断を受け入れざるを得ない場面もありました。自分の信念で、お客さまと向き合いたいという気持ちが強くなりました」

　費用も含め、適正なサービスを提供する知識を身につけたいと大学院へ進学。経営学を修了します。

　「異業種の方と学び、旅行業の魅力を再確認しました。実際に見て、触れて、感じる体験を通して、お客さまの人生を変えることもできるかもしれないと。無形の商品だからこそ、売り手の人間性や信頼が問われ、誠実に取り組む意義も再認識しました」

　青木さんは2020年に「MOYAI」を設立。結婚、出産を経て、仕事に対する考え方にも変化が表れます。

　「会社員時代は事業成長を重視していましたが、お客さまの価値観などを尊重したいと思うようになりました。希望や理想をかなえ、『MOYAIさんにお願いしてよかった』と喜んでもらえれば幸いです」

JR阿蘇駅前に、インフォメーションなどの機能を備えた新店舗をオープン

　社名は、阿蘇の言葉で「分かち合う」を意味する「もやう」に由来。青木さんは「自然と人が共生する素晴らしさを地域内外の方ともやい合い、訪れた方からいただいた恵みを地域に還元し、阿蘇の発展に貢献したい」と語ります。

　「阿蘇の豊かな環境は人の手で守られています。先人の尊い“いとなみ”を伝えるのも、私の役割だと思っています」

　2025年11月には、JR阿蘇駅前に新店舗をオープン。ミニツアーの販売やレンタサイクル、観光インフォメーションの機能を備え、地元の事業者と連携して、来訪者を地域へとつなげます。

　「駅に着いたあと『どう動けばいいのか分からない』と戸惑う方も少なくありません。おすすめスポットなどへ皆さまを送り出す、架け橋になりたいですね」

　目指すのは、観光客が「来て困る」ではなく「来てくれてうれしい」と歓迎する観光地。自然や文化に親しみ、そこに暮らす人と足を運ぶ人たちが、共に笑顔になれる仕組みを整えたいと言います。

　「体験コンテンツを展開したいレジャー系の事業者さまもお声がけください。現場の課題を熟知しているので、机上の空論ではなく実践的なノウハウをお伝えします。商品の取り扱いで旅行業法に抵触しないか。法律面や販売ツールもご相談を承ります」

　「憧れの場所へ行ってみたい」といった夢を実現するべく力を尽くす青木さん。「行き先が決まっていなくても、どんな旅にしたいか一緒に考えるところから寄り添います」と呼び掛けます。

（取材年月：2025年10月）

阿蘇の自然や、先人から続く里山の営みを分かち合う旅づくりで、地域と観光客を結ぶ架け橋に

“火の国”熊本のシンボル阿蘇山や、周辺エリアの魅力を伝える旅を提案

延べ1万人以上の旅行相談に応じ、多くの人に喜ばれる旅を届けるため独立

JR阿蘇駅前に、インフォメーションなどの機能を備えた新店舗をオープン

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