PROFESSIONAL
STORIES

Mybestpro Interview

NFTやメタバースなど先進のデジタル技術で、障害者の創作活動や経済的自立を支援

NFTで障害者のアート作品販売をサポートする専門家

福室貴雅

福室貴雅 ふくむろたかまさ

#chapter1

作品のNFT化、マーケットへの出品を一貫サポートし、障害者アートを世界に発信

 神奈川県藤沢市を拠点に、障害者による表現、制作、発信を支援し、障害者アートの認知度拡大に努めている「ソーシャルアートラボ」の代表理事・福室貴雅さん。

 創作物のプロモーションや著作権管理、商品化などを手掛け、中でも、ネットワーク上の取引を適正化するブロックチェーンを活用した“NFT(非代替性トークン)”によるアート作品の販売に力を入れています。

 「NFTは、鑑定書や所有証明書といった固有のIDを発行し、コピーや改ざんができない唯一無二のデジタル資産として注目を集めています。当方では、作品のNFT化からマーケットへの出品、取引成立後のフォローまで一貫して対応しています」

 NFTではすべての取引履歴が残るため、作品が転売された際にも作家に利益が入ることが大きな特徴であり、福室さんが推進している理由の一つ。マーケットは世界に広がっていて、障害のあるなしに関係なくアーティストとして認められる可能性もあるとか。

 「新たなデジタル技術ゆえ、法律が追い付いていない面もあったのですが、やっと法整備が進んできました。当方はNFTについて知識を深め、コンプライアンス面に慎重に配慮しながら取引を進めています。実物アートも登録できますので、作家ご本人や保護者、施設関係者はぜひ相談してほしいですね」

 福室さんのもとでは、「障害のある人がアートに生きることができる環境を創る」「藝術の民主化」を理念に掲げ、誰もが自由に創作し、アピールできる仕組みを構築。ネット上だけでなく、ギャラリーなどで現物作品を展開する展覧会の企画・運営も行っています。

#chapter2

自らの表現を模索し服飾デザイナーに。帰郷後は障害者の創作活動を支える道へ

 福室さんは、元服飾デザイナー。藤沢市に生まれ育ち、地元の進学校に入学したものの落ちこぼれてしまったとか。

 「思春期のもやもやした思いを吐き出す術として、いろいろな表現方法を模索する中でデザイナーを志しました。都内の大学に通いながら夜間にファッション系専門学校で勉強し、卒業後はアパレル会社に就職しました」

 レディースブランドのデザイナーを経て2005年に独立。自社ブランドで東京コレクションに参加した実績もあります。

 「10年間経営した会社を閉じた後は、飲食店やホテルなどに勤務しました。さまざまな仕事を経験したことで、物事を多面的に見ることができるようになったように思います」
 
 2019年に父が他界したことから、母の介護のために帰郷。湘南で暮らしていく上で、何か地元の役に立ちたいと思案していた折、障害者とともに海洋ゴミのマイクロプラスチックをアクセサリーにアップサイクルし、販売している起業家とSNS上で出会いました。

 「環境保護と障害者の就労という課題にアプローチしていることもさることながら、商品のかわいらしさに引かれましたね。私も活動に貢献したいと、湘南の海でビーチクリーンに携わるようになりました」

 次第に障害者が作り出すアートにも興味を持つようになった福室さん。かねてより知見を蓄えていたブロックチェーンやNFTを通じて、作品販売を後押しすることで障害のある人たちを支えられたらと、2021年に「ソーシャルアートラボ」を設立しました。

#chapter3

就労支援施設やガイドヘルパーなど幅広い活動を生かし、企業や学校でも研修

 「当方は、メタバース(インターネット上の仮想空間)でも作品をPRしています。また、雑貨などを気軽に購入できるネット上のセレクトショップも立ち上げ、販路を広げています」

 福室さんは、障害者福祉にも直接的に携わりたいと、就労継続支援B型事業所で勤務。高齢者や障害者が外出する際に付き添うガイドヘルパー、障害者雇用と就労に関するコンサルティング会社の業務にも従事。視覚障害者の同行援護や、重度訪問介護従事者の認定研修も修了しています。

 地元では、片瀬西浜・鵠沼海岸の国際環境認証「ブルーフラッグ」の取得に尽力。障害がある人もマリンアクティビティを楽しめるイベント「バリアフリービーチ」も定期的に開催しています。

 多彩な活動をしている福室さんのもとには、学校や企業から研修講師の依頼もあります。高校の「総合的な学習(探究)」では、次世代の分散型インターネットとして注目されているWEB3.0を活用し、障害者をサポートする新たなビジネスモデルを考える授業を行い、好評を得たそうです。

 「企業さまでは、障害者の法定雇用率が段階的に上げられていく中、働き手としてどのように活躍してもらったらいいか分からないという声も聞こえます。障害者が働きやすい環境を整えることは、従業員にとっても働きやすい環境となるはずです。当団体の趣旨に賛同してくださる方々とともに、誰もが生きやすいインクルーシブな社会の実現と障害者の経済的自立に取り組んでいきたいですね」

(取材年月:2025年3月)

リンクをコピーしました

Profile

専門家プロフィール

福室貴雅

NFTで障害者のアート作品販売をサポートする専門家

福室貴雅プロ

アート作品のNFT化・出品支援

一般社団法人ソーシャルアートラボ

今注目されているNFTやメタバースでの作品販売のほか、展示会企画を通して、障害者の創作活動や経済的自立をサポート。障害者雇用や福祉を取り巻く問題などをテーマに、学校や企業での研修も行っています

\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /

MYBESTPRO