装着型サイボーグHAL®で自立動作を支援、介護を変える専門家
安永好宏
Mybestpro Interview
装着型サイボーグHAL®で自立動作を支援、介護を変える専門家
安永好宏
#chapter1
「自力で体を動かしたい」。病気や事故の後遺症などで体を動かすのが困難な人の願いに応える新しい技術が国内外で注目されています。その技術とは、世界初の装着型サイボーグ「HAL®」(Hybrid Assistive Limb®)。筑波大学発ベンチャーとして、山海嘉之教授が設立した「CYBERDYNE(サイバーダイン)」が開発しました。
人が動作するとき、脳から神経を通じて意思を伝達する信号が筋肉に伝わり、筋肉が収縮します。HAL®は、その際に皮膚表面に漏れ出る微弱な「生体電位信号」を、皮膚に貼り付けたセンサーでキャッチし、装着している人の意思にあわせて動作をアシスト。動きを繰り返すことで、脳神経・筋系のつながりが強化、調整され、身体機能が向上し、HAL®を外した状態でも同様の動作ができることを目指します。
HAL®を用いて身体の機能向上を促すプログラム「Neuro HALFIT®」を提供しているのが、CYBERDYNEの100%子会社であるロボケアセンター。国内16施設のうち、最大規模を誇る湘南ロボケアセンター代表取締役の安永好宏さんは、HAL®の普及に尽力しています。
「Neuro HALFIT®」の利用者は、脳卒中や脊髄損傷、脳性まひなどで体を自由に動かせなくなった人や、加齢から身体機能が低下した高齢者などが中心。湘南ロボケアセンターでは、子どもから高齢者まで、これまでのべ2000人がプログラムを利用しています。
「HAL®の大きな特徴は、ロボット主導で体の動きをサポートするのではなく、装着する人の意思によって動作を促す点です」。自分が思うように体を動かせた実感が、モチベーションにつながり、装着後に「体が軽くなった」と感じる人も多いそう。
#chapter2
安永さんがHAL®を知ったきっかけは、テレビのドキュメンタリー番組でした。高齢者が高齢者を介護する「老々介護」の問題にも関心を持っていたことから、HAL®に大きな可能性を感じ、HAL®の開発会社であるCYBERDYNEへの入社を決めたと言います。
「高齢化が進んでいますが、寝たきりで長生きしたい人はいないでしょう。いつまでも自分の足で歩き、自立した生活を送ることは、本人だけでなく、介護する家族の幸せにもつながります」。安永さんが目指す未来は、HAL®のテクノロジーによって介護負担を減らし、介護される側・する側の両方が笑顔になれる社会の実現です。
「ロボケアセンターに来られる方は、それまで何年も体の自由が利かず、自分で歩くことをあきらめかけている人も多いです。それでもHAL®を体験することで『自分で動けるかもしれない』と可能性を感じ、パッと表情が明るくなる瞬間を何度も見てきました」と安永さん。HAL®を活用したプログラムでは、体だけでなく心のケアも重視。利用者の気持ちに前向きな変化を感じることは、大きなやりがいになるそう。
個人差はありますが、プログラムを経て、最終的にHAL®を装着せずに自分で動けるようになった事例も少なくないと言います。「ご本人はもちろん、それ以上にご家族も喜んでいる姿を見るたび、HAL®をもっと多くの人に活用してもらいたいという使命感にかられます」
#chapter3
安永さんは、HAL®の海外展開にも積極的に取り組み、現在、国外ではアメリカやドイツなど15カ国の医療機関やリハビリ施設で導入されています。コロナ以前は、湘南ロボケアセンターに海外からの視察も多かったそう。「東南アジアでも注目度は高く、例えばマレーシアでは政府主導で治療施設が開設されました。メイドインジャパンのテクノロジーを世界中に広めていきたいですね」
また、利用者の声を受け、HAL®を用いた新たなサービスやプログラムの提供を開始。2020年のコロナ禍には、在宅でHAL®︎が利用できる個人向けレンタルサービス「自宅でNeuro HALFIT®」を始めました。モニターを通して専門スタッフによるオンラインサポートが受けられ、「毎日取り組みたい」と利用者が増えています。また、ロボケアセンターに通いながら、併用することも可能です。
学生時代に自転車競技をしていた経験を生かし、運動パフォーマンスの向上を目指すプログラム「MTX式Neuro HALプラス」を企画。元々、障がい者スポーツを支援するために企画したプログラムをアスリート向けに応用し、プロ野球選手などトップアスリートからも体の変化を実感する声が聞かれています。
一方で、新たなプログラム開発につなげるため、筑波大学大学院で疾患制御医学を専攻し、HAL®を活用した研究も行っています。「HAL®を使って身体を動かすことが刺激となり、将来的に、腰痛や、排せつ・排尿機能の改善にも役立てることができるかもしれません」。HAL®の可能性はまだまだ広がっています。
(取材年月:2021年4月)
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Profile
装着型サイボーグHAL®で自立動作を支援、介護を変える専門家
安永好宏プロ
ロボケアセンター代表
湘南ロボケアセンター株式会社
世界初の装着型サイボーグHAL®を活用し、身体機能向上を促すプログラムを提供。脳卒中や脊髄損傷などの後遺症や加齢で動きにくくなった体の自立動作を支援。アスリート向けの運動能力向上プログラムも提供。
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