木の特性を見ながら心が和む理想の庭を目指す植木職人 MUTCHAN松野

木の特性を見ながら心が和む理想の庭を目指す植木職人

MUTCHAN松野

植樹、庭木の剪定・伐採、雑草処理まで、庭に関する業務に幅広く対応

　「木は生きていますから、種類や生えている場所に応じたケアが必要です。お客さまのご希望を伺いながら、環境になじむ健やかな庭をかなえたいと思っています」

　そう語るのは、神奈川県横浜市を拠点に植木業を営む「MU-GARDEN（ムーガーデン）」代表のMUTCHAN松野さん。

　新しく木を植える植樹、伸びすぎた庭木の剪定、大きくなりすぎた樹木の伐採、根元からの抜根、枝ぶりを整える刈り込み、雑草処理など、庭に関する業務に幅広く対応しています。

　個人宅やアパート・マンションの植栽管理、街路樹の枝払いなど、年間を通じて多彩な現場を手掛ける松野さんが大切にしているのが、「木の特性に合わせた手入れ」です。

　「サクラやケヤキなどの落葉樹は、冬に根が休眠するため、枝葉を切っても枯れる心配は少ないです。一方、シラカシやカシノ木などの常緑樹は葉に栄養を蓄えて越冬するため、冬場に枝を払うと木が弱り枯れてしまうことがあります。木によって適した剪定時期が異なるため、ご依頼の際は、その木にとって適切なタイミングをご案内するようにしています」

　大事な木を守り、育てるため、松野さんは「冬まで待った方が良い」「ストレスを与えないよう少しずつ切った方が良い」など、プロの視点から丁寧に説明します。

　「毎年ご用命いただくお客さまは、私のやり方を信頼してくださいます。初めてのお客さまには、イメージと違う仕上がりにならないように、作業前に一つ一つ確認しながら進めるようにしています。剪定を終えて『きれいになりましたね』と声をかけていただくのが何よりうれしいですね」

2008年に来日。日本の庭づくりを一から学び、2020年に植木業として独立

　松野さんはインドネシア・バリ島の出身。2008年に来日し、大手電機メーカーの工場で働いていました。ある日、造園業を営む親方から声をかけられ、作業を手伝うようになります。

　「工場では黙々とパソコンを組み立てていたので、屋外で仲間と一緒に体を動かして働くことがとても新鮮で楽しくて。庭づくりの道に進みました」

　初めは、落とした枝や土を片付ける掃除からスタート。現場に慣れてくると親方の手ほどきを受け、剪定などの技術を身につけていきました。

　「最初はどの枝を切れば良いのか全く分かりませんでした。仲間たちが木を見ただけですぐに切り始めるのが不思議でしたが、経験を重ねるうちに剪定のポイントがつかめてきました」

　3年がたつ頃には、現場を任せてもらえるように。親方から言われたのが、「日本人以上に木に詳しくなれ」です。

　「日本の庭にはマツやカエデなど、四季を感じられる木が植えられています。気候風土に応じた樹種や育て方、保全の仕方をしっかりと理解し、お客さまの理想と地域環境に合った庭を提案したいと考え、地道に勉強を続けてきました」

　2020年に独立。当初は親方から案件を紹介してもらっていましたが、徐々に自分の顧客が増え、今では年間を通じた管理業務も担っています。

　「仕事の様子を見て『うちもお願いしたい』と声をかけてくださることもあります。日本に来た時、まさか自分が植木業で独立しているとは想像もしていませんでした。今があるのは、出会った皆さまのおかげです」

景観を損ね、倒木の危険が生じる空き家の庭も整備し、地域の課題に対応

　「同じ木は二つとありませんので、個性をしっかり読み取ります。剪定の際には枝ぶりやお客さまが鑑賞される方向を考慮し、将来的な生育状況を見据えて細やかに樹形を整えていきます」と松野さん。定期的に訪問していると、その木がどのように成長するのかが分かるようになってきたと言います。

　「業界では『枝が暴れる』という言い方をしますが、形を崩す枝を放置すると、樹形全体が乱れてしまいます。バランスを見ながら、自然な美しさを保つことを心掛けています」

　作業中は安全第一を徹底。脚立にのぼる時は転落しないように細心の注意を払い、伐採や枝おろしのような大掛かりな業務は仲間と力を合わせて、事故やケガがないよう慎重に進めます。

　空き家の庭が荒れて景観を損ねたり、倒木したり、地域の課題にも対応。道路に枝がはみ出し、雑草が繁茂した状態を見かねて、自治体から空き家の所有者へ連絡が入り、松野さんに要請が舞い込むこともあります。

　「所有者の方が遠方にお住まいの場合は、現地の写真や動画を送って状況を確認してもらいます。朽ちた木の処理や、草刈り、除草などお客さまのご要望に添って進め、防草シートや砂利、人工芝も施工します」

　無事に作業が終わり、きれいに整った木や庭を見る時の「爽快感」が好きだと語る松野さん。「季節ごとに表情を変えるお庭で心を豊かな毎日を過ごしてほしいですね。剪定や伐採だけではなく、草刈りや防草シートの敷設など、庭まわりの『困った』ことがあれば、何でもご相談ください」と笑顔を見せます。

（取材年月：2025年4月）

木の特性に合わせた手入れを通じて、健やかで美しい庭づくりを提案

植樹、庭木の剪定・伐採、雑草処理まで、庭に関する業務に幅広く対応

2008年に来日。日本の庭づくりを一から学び、2020年に植木業として独立

景観を損ね、倒木の危険が生じる空き家の庭も整備し、地域の課題に対応

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