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美術の専門知識と丁寧な手仕事で、既製品にない一点もの、デザイン性の高い革小物を提案

デザイン性の高い一点ものの革小物を生み出す専門家

池田拓也

池田拓也 いけだたくや
池田拓也 いけだたくや

#chapter1

使い込むほどに深みを増す財布や小銭入れ、名刺入れ、キーケースなどを展開

 「既製品にない一点ものをお求めの方、デザイン性の高い商品をお探しの方に、心を込めてお作りします」と語るのは、「ichion」の代表で革工芸作家の池田拓也さん。美術の専門知識を生かした豊かな表現力と、丁寧な手仕事による革製品を販売しています。

 「普段使いのアイテムとして財布や小銭入れ、名刺・カード入れ、キーケースなどを展開しています。オーダーの際は、『大きめのサイズでつくってほしい』『自分が大切にしているモチーフをアレンジしてほしい』など、ご要望をお聞かせください。きめ細かくヒアリングし、製作に反映いたします。色見本もご用意し、配色についてもリクエストを承ります」

 皮革を素材に多様なアイテムを作成するレザークラフトは、アメリカ発祥の工芸。池田さんは、丈夫で耐久性があり、使い込むほどに色つやを増す牛革を使い、カラーも深みのある紫や緑、淡いベージュやピンクなどに染色。柔軟な発想で細工を施します。

 「桜や麒麟(キリン)、鳳凰(ほうおう)といったアジア由来の絵柄や、いかりをモチーフにした図案、まが玉のようなペイズリー柄、植物や草花などを複雑な曲線で描く中世ヨーロッパのバロック調の装飾を用いることもあります。多くは縁起物由来のデザインです。好みの柄を指定していただくほかに、『力強いタッチで』『繊細で優美に』といった雰囲気をお伝えいただければ、イメージを図案に起こします」

 美大で油絵を学び、芸術表現を追求する「ファインアート(純粋芸術)」の創作に情熱を注いだ池田さん。古今東西の美術のエッセンスを織り交ぜ、独創性に富んだデザインを強みとしています。

#chapter2

ギターのピックガードやストラップ、ピックケース、アートレリーフも製作

 顧客の理想をかなえるにあたり、池田さんは丹念に技巧を凝らします。
 「模様はレザーカービングと呼ばれる手彫りで入れます。革の表面に下書きした図面に専用の道具で打刻しながら彫り、影をつけるように立体感を出していくので、迫力のある仕上がりになります」

 染めと縫製も手作業。手縫いは強い力が必要で大変ですが、機械縫いよりも革の表情が出て素朴な味わいが生まれるそうです。
 「糸のほつれや縁の割れなど簡単なリペアには無償で対応します。革は経年による色や風合いの変化が楽しみの一つ。お手入れしながら長く使っていただき、良い状態に育ててもらいたいですね」

 ギター関連の革小物も手掛ける池田さん。ピックによる傷からボディーを保護するピックガードやストラップ、ピックケースなどを製作しています。
 「趣味で演奏を楽しむ方からハイアマチュアまで多くの方にご愛用いただいています。ピックケースはプレゼントとして選ばれる方も多いですね。ご希望に応じて、お客さまの個性を引き立たせる世界に一つだけのオリジナルをオーダーメードします」

 木のパネルから革でこしらえた音符などが飛び出し、躍動感あふれる「アートレリーフ」も製作。店舗の看板やオブジェ、パーティーのウエルカムボードにおすすめだと話します。
 「革のアートレリーフは珍しく、ひと味違った存在感をアピールできます。音楽用語などをくりぬいた切り文字タイプもあり、お客さまのコンセプトに合わせてご提案いたします」

池田拓也 いけだたくや

#chapter3

手に取りやすい定番品やインテリア商品も開発、暮らしの中に気軽にレザーを

 父親が印刷会社に勤め、自宅に紙がたくさんあったことから、よくお絵描きをしていたという池田さん。国鉄の元整備士だった祖父は手先が器用で一緒に工作を楽しんだことも、ものづくりの源泉に。やりがいは顧客の願いに応えられたときの達成感だと言います。

 「あるとき、2人の娘さんを持つお母さまから『形に残るプレゼントを』と3人おそろいの財布をオーダーされました。がま口の中に、小銭を入れる小さいがま口が付いた親子がまで、模様は『3人それぞれの誕生花をあしらってほしい』とのことでした」

 花の種類にあまり詳しくなかったためデザインに苦慮したそうですが、試行錯誤の末に完成した品を渡すと「想像以上の仕上がり。お願いして良かった」と感謝され、大きな喜びを感じたそうです。

 信条は「常に緊張感と高いテンションを持ってものづくりをすること」。

 「作業への向き合い方は品質に直結します。屋号の『ichion』の由来は『一つの音』。模様を打刻するときの一音一音や、染めるときのひと筆ひと筆、縫うときのひと針ひと針に責任を持ちたい、という思いを込めています」

 革工芸を盛り上げようと公募展の運営にも注力し、作品の魅力を広く発信。今後はラインアップをさらに充実させていく考えです。

 「現在は持ち物にこだわりのあるお客さまが多いですが、誰もが手に取りやすい定番品や、住まいのインテリアに手ごろなアートレリーフも増やしていきます。レザーを暮らしの中に気軽に取り入れていただけたらうれしいですね」

(取材年月:2025年2月)

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専門家プロフィール

池田拓也

デザイン性の高い一点ものの革小物を生み出す専門家

池田拓也プロ

革工芸作家

ichion

レザークラフトの財布や名刺入れ、ギター小物、アートレリーフを製造販売しています。オーダーにも対応。美大での学びを生かしたデザイン力と丁寧な手作業で幅広いニーズに応え、世界に一つだけの品をお作りします。

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