小規模事業者の“頼れる世話役”的経営コンサルタント
平岡誠司
Mybestpro Interview
小規模事業者の“頼れる世話役”的経営コンサルタント
平岡誠司
#chapter1
「日に100社単位で中小零細企業が倒産しているとのデータもあり、“多死社会”ともいえるのでないでしょうか。中でも家族経営の商店や小規模事業者には、その実情に即した支援が必要とされながら、家族にも、ましてや外部の専門家にも相談できずにいるケースが少なくないようです」
そう話すのは、東京・神奈川・広島で活動する「平岡商店」の平岡誠司さん。家族経営のほか、起業家や事業承継直後の若手経営者といった「本当に困っている経営者」に正面から向き合い、対話を重ねながら経営の安定を支援しています。
「当方では、経営状態を客観的に把握し、課題を見つけて解決方法の提示につなげるために、全ての数字データを整理します。日々の出納帳、決算書だけでなく、現場の業務日報による生産性の測定、さらにはお客さまと膝を突き合わせてのヒアリングで、お金の流れを可視化。数字の動きとそれぞれの因果関係などを分析し明らかにしたうえで、お客さま自身が課題に気づけるよう手助けします」
難解なデータ解析も、平岡さんの手にかかれば「売る・仕入れる・使う」「借りる・出す・貯まる」といったシンプルな視点に整理され、経営判断の材料となります。会計ソフトの導入サポートなどを通じて日々の業務効率化を図る一方で、自らを「アスリートのパフォーマンスデータを分析・提示するコーチ、あるいはスコアラーのような立ち位置」と強調します。
「専門性の高い知見を持ちつつも、あくまで対等な立場で一定の成果を目指す伴走者でありたい」。その思いは、“経営コンサルタント”という響きをあえて避け、「商店」と表現した屋号にも刻まれています。
#chapter2
平岡さんは、かつて広島で創業100年以上の老舗酒問屋の4代目経営者として、破綻寸前だった家業の再建に取り組みました。しかし、同族企業ならではの諸事情により、転身を余儀なくされた波乱の半生を経験します。
「大手酒類メーカーと家業の酒卸会社で営業企画の経験を積んだ後、経営に携わって直面した危機的な状況は、現場で味わったものとは比べ物にならないほどの緊迫感でした。待ったなしの資金繰りに押しつぶされそうになりながら、初めて、経営者たる重圧と、誰にも話せない孤独を思い知ったのです」
生き残りをかけた社内改革と新規事業の立ち上げ、地域密着型サービスの強化に並行して、業界を越えて地域経済を盛り上げる地域活性化プロジェクトを推進。率先して広島の特産品のブランド化や流通のコーディネート役を買って出ることに。
一定の成果を上げたものの、自身はお家騒動のあおりを受け、まさに身ひとつでゼロからのスタートを余儀なくされます。
「自分に何ができるかを考えた時、社会的地位やお金は失ったけれど、大事なものは何一つ失われていないことに気づいたんです。ひん死状態の会社を立て直すために知恵を振り絞って否応なしに身についた経営ノウハウ、従業員と共に事務仕事や倉庫内作業と、あらゆる業務で汗を流して叩き込まれた現場感覚、そして何より、本当にやりたいことを見つけた人だけが持つガッツでした」
培った知見にさらに磨きをかけるべく、家族を残して上京。事業構想力を鍛える社会人大学院で学びを深め、“リバイバル創業”を果たしたのです。
#chapter3
平岡さんの実践的コーチングでは、経理ソフトを用いた自計化をベースに「(経理が自分で)出来る、(決算書が)読める、(業績が)語れる」の3ステップを掲げて、効率的な経理処理にハンズオンで取り組みます。
「実は小規模企業の経営者に必要な要素は、強力なリーダーシップよりも“愛あるマザーシップ”。特に家族経営では、現場を切り盛りし、従業員や顧客との関係性を築くキーパーソンが女性というケースが多く見られます。当方では、経営の当事者に対して、尊重するべき本来のマインドを見失わずに、本業に向き合ってもらえるようサポートしたいと考えています」
かつて「人と人、地域と地域をつなぐ」をコンセプトに家業の再生を先導した平岡さんが、自らの人生をリセットしキャリアチェンジする際に浮かんだイメージも、「経営者と現場、そして経営に必要な金融機関などを結ぶ世話人のような役割」だったそう。
「昔の卸問屋さんは自らの商いとは別に、同業仲間の末端まで材料や人材、お金がうまく流通するように差配する役目や、身内の困りごとの相談役まで担っていたそうです」そんな世話人的発想から、自身の事業を“生産地問屋”と名付け、一般的なコンサルタント業とは趣を異にする独自のアプローチを貫いています。
「先が読めない世の中、規模は小さくとも本業の商材や技術、サービスに誇りと強い覚悟を持つ経営者にこそ、細く長く、そしてしぶとく強い隙間石となって、地域経済を支え続けてほしいですね」
(取材年月:2025年6月)
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Profile
小規模事業者の“頼れる世話役”的経営コンサルタント
平岡誠司プロ
小規模事業者向け経営支援家
株式会社平岡商店
経営者の実践経験を活かし、経理の見える化・日繰り・在庫管理を軸に、家族経営の経営管理の仕組みづくりを実行支援します。現場の気づきを経営判断につなげ、“らしさ”をいかした経営を一緒に育てていきます。
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