地域企業の力を高める環境づくりのプロ高橋由理香

地域企業の力を高める環境づくりのプロ

高橋由理香

労務コンプライアンスの整備と助成金申請に対応した就業規則づくり

　JR丸亀駅から徒歩3分、丸亀城を望むビルの一室に事務所を置く「高橋ゆりか社会保険労務士事務所」。代表の高橋由理香さんは、香川県内を中心に中小企業の経営者や個人事業主を対象に、人事労務全般のサポートを行っています。

　「社会保険や労働保険の手続き、給与計算などは、経営者にとって大きな負担になりがちです。当方では、そうした業務をサポートし、経営者が本来の事業運営に専念できる環境を整えることを使命としています」

　業種や企業規模を問わず労務相談や事業承継直後の組織改革、開業支援といった実績を持ち、社内実務をスムーズにするシステムの導入から業務の代行まで幅広く対応。将来的な自走も視野に入れつつ、ハンズオン型支援を展開しています。

　特に力を入れているのが、職場環境の安定や新規採用、労使間のトラブル防止に大きく影響する就業規則の作成や見直しです。

　「労働力不足や多様な働き方に対応するには、労働条件や服務規律などの労務コンプライアンスの整備が欠かせません。入社時の雇用契約書や労働条件通知書の不備が、思わぬトラブルに発展するケースもあります。職場環境の安定のためにも、リスクに備える客観的な視点が必要です。経営者さまとともに5年後10年後の企業の姿を描きながら、時代に合わせたルール作りで企業の魅力アップを後押します」

　人材確保など個別の課題を反映し、独自性を尊重した就業規則づくりを得意とする高橋さん。助成金申請の可能性や企業イメージの向上まで視野に入れた実用的な規則を提案しています。

金融や生涯設計の知識も生かし、社会保険労務士がより活躍できる環境づくりに注力

　高橋さんは、進学や結婚後の夫の転勤などで東京・大阪に暮らした後、地元香川に戻ることになったUターン組。子育て中に社会保険労務士（社労士）の資格を取得し、県内の社労士事務所勤務を経て、2017年に独立を果たします。

　「香川県は、伝統産業と近代的産業が共存している一方で、今も昔も若者の多くが進学や就職を機に県外へ出てしまい、地元に戻る人はごくわずか。以前保険会社に勤めていたこともあり、『金融や生涯設計の知識も生かして何かできることを』と思い、勉強を始めました。ただ当時は、2人の子育てのしやすい環境を重視した、家族中心のライフプランの一つにすぎなかったんです」

　ところが、実際に社労士として地元の経営者と接するなかで、多くの中小企業や個人事業所が、人材不足や経済低迷の波を受けて苦しんでいる現状を目の当たりにします。

　「このままでは、若者の流出が止まらないのでは」という危機感とともに「自然や伝統文化に恵まれた地域性を背景に、労務管理の不備を整えるだけでも企業の魅力は大きく高められるのに」と、歯がゆさを感じるように。

　その後、県外にまで活動の幅を広げ、労務相談に加えて助成金のアドバイスまでできる専門性が評価されると、次第に進むべき道が見えはじめます。

　「地元では、どこまで社労士が役立てるのか、まだ十分に知られているとは言えません。情報不足は、私たち専門家の努力不足でもあるのかもしれませんね」
高橋さんは、地域に根差す企業の力を高めるためにも、社労士がもっと活躍できる環境づくりに向けて歩み出したのです。

若者が戻りたくなる地域を目指して、妥協のない姿勢で企業の魅力アップを後押し

　「事業規模に関わらず、企業の成長には、現状を客観的に把握する視点が欠かせません。本来は社内に人事や労務の専任者を置くことが理想ですが、収支のバランス上難しい場合は、給与計算、事務手続きの代行やサポートサービスを活用するのも一つの方法です」

　高橋さんは外部専門家として、実務支援だけでなく、意識改革にも取り組んでいます。要望に応じて社内の各階層向けたセミナーをスポット開催。新制度の解説やハラスメント防止などをテーマに、労務への理解を深める内容で、社内の意識をアップデートしています。

　さらに、社労士の存在意義を広く知ってもらうため、異業種の集まりにも積極的に参加。「専門家が話すお役立ち情報」をコンセプトに、個人事業主やビジネスに関心を持つ人が気軽に集まれる「ボヌール勉強会」も定期的に開催。業種を越えた交流は、新ビジネスの創出の場にもなっています。

　「目先のクレーム対応やお得情報だけを望まれるのであれば、お力にはなれないかもしれません。本当に魅力ある企業を目指すなら、相応の覚悟を伴う決断が欠かせないのです。企業の未来は、経営者の本気度にかかっていると言えるでしょう。労務環境を整えることがさらなる魅力アップにつながると、自社の技術やサービスに誇りを持つ経営者にこそ、気づいてほしいですね」

　「若者が戻りたくなる地域」を目指して。高橋さんは力強く企業の挑戦を後押します。

（取材年月：2025年9月）

ニーズに合わせたルール作りで、5年後10年後も選ばれる企業へ

労務コンプライアンスの整備と助成金申請に対応した就業規則づくり

金融や生涯設計の知識も生かし、社会保険労務士がより活躍できる環境づくりに注力

若者が戻りたくなる地域を目指して、妥協のない姿勢で企業の魅力アップを後押し

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