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牛の健康を考えた独自の技術で哺育から肥育まで一貫して行い、おいしく安定した品質の交雑牛を提供

おいしく、安定した品質の牛肉を提供する畜産のプロ

飯野美喜男

飯野美喜男 いいのみきお
飯野美喜男 いいのみきお

#chapter1

岩手県と青森県に4カ所の直営牧場を持ち、「玄米育ち」のローカルブランドを立ち上げ

 岩手県と青森県に4カ所の直営牧場を持つ「キロサ肉畜生産センター」。黒毛和種と乳用種から生まれた交雑種肉牛を約8500頭飼育し、「玄米育ち岩手めんこい黒牛」「玄米育ち 岩手めんこい姫牛」など、地域発のローカルブランドも展開しています。

 同社の元代表で現在は顧問を務める飯野美喜男さんは、「気軽においしい牛肉を食べていただくために、安定した品質の肉を供給することを心掛けています」と話します。

 ブランド名にあるように、同社では玄米を配合した独自の飼料を自社で製造。牛に与える穀物飼料はトウモロコシが一般的ですが、ほとんどが輸入に頼っており、為替レートや生産国の状況によって仕入れが左右されてしまいます。そのため、飯野さんは国産原料の活用を模索してきました。

 「牛はもともと米を食べる動物ではないため、玄米を摂取してもらえるよう独自に工夫しました。その結果、牛肉のうま味の指標であるオレイン酸の数値が上昇し、口どけや風味が良いと評価されています」

 生後1~8カ月くらいまで育てる哺育事業者と、その後の出荷までを担う肥育事業者が分かれていることが多い中、同社では一貫して飼育。成育歴を詳細に把握でき、質の良い肉づくりに役立っています。

 「肉用牛は、順調に育てば1日に1キロずつ増えるとされています。全頭の体重を定期的に測定し、例えば2カ月で60キロ増えているはずのところが30キロしか増えていなければ、健康状態に問題があると考えられます。見た目だけでは分からない健康状態の変化を早期に察知し、適切に対応できる体制を整えています」

#chapter2

アニマルウェルフェアの考えのもと、牛たちがのびのびと過ごせる牛舎を整備

 社名の「キロサ」は、タンザニア東部にある都市の名前に由来します。創業者が青年海外協力隊で現地に赴任。その後1978年に岩手町で牧場を開設した際に、地形が似ていることから名付けられました。
 飯野さんは1986年に入社。実家が畜産業を営み、牛は常に身近な存在でした。

 「入社当時、飼育頭数は約500頭でした。牛肉の輸入自由化やBSE(牛海綿状脳症)、口蹄疫など、畜産業を取り巻くさまざまな問題を乗り越えながら、飼育効率を高めるために規模拡大を進めてきました」

 飯野さんは管理職として、牛舎への大型換気扇の設置や一頭当たりの飼育面積を広めに確保するなど、アニマルウェルフェアの考えを導入。牛たちがのびのびと日常を過ごせる飼育環境に尽力しました。牛ふんから堆肥を作り、飼料用のコメやキャベツ栽培に利用する循環型農業も推進。その最中、経営に深刻なダメージを与えたのが、2011年の東日本大震災でした。

 「原発事故の影響から、東北地方で生産された農畜産物は買わないと言われ、取引先をすべて失いました。そこで、餌や土壌などの飼育に関わるあらゆるものを自主的にセシウム検査し、生産管理体制を強化。安心して食べていただけることを根気強く発信し続けた結果、以前より取引先の数が増えました」

 2019年からは、岩手町のふるさと納税の返礼品として、同社のブランド牛が採用されています。
 「脂身が苦手な方からも、柔らかくておいしく値ごろ感があるとの声をいただいています」

飯野美喜男 いいのみきお

#chapter3

目指すのは「牛の世話」ではなく「健康管理」。DX化と省力化で働きやすい環境づくりに尽力

 飯野さんは、4年間務めた代表を2025年3月に退任し、顧問に就任。肉質の良い交雑種に育つ黒毛和種の血統に関するデータ整理や、20~70代までの幅広い世代が働きやすい環境づくりに取り組んでいます。

 「産休・育休制度の充実により、結婚や出産で離職する女性社員が減り、復職する人が増えてきました。部門責任者として活躍する女性もいます。年間休日110日としているのも、畜産業としてはかなり多い方ではないでしょうか。定時退社を推奨し、残業も極力抑えています」

 このような働き方は、飼育のDX(デジタルトランスフォーメーション)による省力化によって支えられています。全頭にセンサーを装着し、ミルクや飼料の摂取量・時間をデータで管理。自動哺乳ロボットや自動給餌機による補給体制により、一人で500頭を見ることが可能になりました。

 「これからの私たちの仕事は、牛の世話ではなく健康状態の管理であると考えています。省力化を進め、より質の高い飼育を実現していきます」

 同社では各地に預託農家を抱えており、こうした飼育ノウハウも提供。育てた牛の評価もフィードバックし、今後の飼育に役立ててもらっているとのこと。

 「飼育コストの上昇や従事者の高齢化など厳しい状況下に地域の畜産業を守るためにも、預託農家さんと協力体制を築いていければと考えています。当社に関わる全ての人が高級な食材を生産しているという誇りを持って仕事に取り組めるよう、畜産業に40年間携わった経験とノウハウを後進に伝えていきたいですね」

(取材年月:2025年7月)

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飯野美喜男

おいしく、安定した品質の牛肉を提供する畜産のプロ

飯野美喜男プロ

畜産業

有限会社キロサ肉畜生産センター

交雑種肉牛を哺育・肥育一貫生産。餌や飼育環境にこだわり、求めやすい価格で安定したおいしさを提供。立ち上げたブランド牛はふるさと納税の返礼品にも採用。業務のDX化推進により働きやすさも追求しています。

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