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がん後遺症によるリンパ浮腫に苦しむ人の、体と心をほぐすお手伝い

術後浮腫の悩みに早期に介入し悪化を防ぐプロ

瀧沢恵美子

瀧沢さん正面
瀧沢恵美子 たきさわえみこ

#chapter1

リンパ浮腫療法士として、医師の診療情報提供書に基づいた施術を提供

 リンパ浮腫(ふしゅ)とは、リンパ液の流れが滞ることで引き起こされるむくみなどの症状。その中でも、がん治療の後遺症に特化して施術をしているのが、JR岩手飯岡駅からほど近い「瀧治療院もみの木」の院長で「リンパルーム エミーナ」を主宰する瀧沢恵美子さんです。

 「当方では、がんの手術でのリンパ節切除や放射線治療後に後遺症リンパ浮腫と診断され、医師の紹介状『診療情報提供書』をご持参いただいた方のみを受け入れています。むくみや違和感のある人からの相談には、随時向き合っていますが、施術を開始するのは医療機関で診断が確定してから。以前に手術を受けて、現在は主治医にかかっていないというケースも同様です」

 瀧沢さんはリンパマッサージに加えて、日常のケアや身体支持具の着用について指導ができる「リンパ浮腫療法士」の認定を受けた、専門性の高いスキルの持ち主。
 全身にくまなく手技を施し、リンパの巡りを促すドレナージをメインにむくみにアプローチ。歩行や日常動作の違和感を和らげるとともに、スキンケアや対話を通して術後の心もとない気持ちにも寄り添います。

 「施術は3時間以上に及ぶこともあるので、利用者さま同士がすれ違うことがないよう、前後の時間に余裕を持った時間配分でプライバシーを守っています」

 また、下肢やデリケートな部位のむくみを軽減するためのシリコーン製ケアパッド「エミーナ」を開発。女性向けに装着用ケアショーツも手掛け、伸縮性がある弾性糸を使ったほど良い圧迫感と、医療下着に見えないデザイン性を備えた意匠特許商品として、全国販売も行っています。

#chapter2

マッサージセラピストからスキルアップ、術後リンパ浮腫の啓発にも取り組む

 医療機関に勤めた後、瀧沢さんは先天的な弱視が進行することも踏まえ、マッサージセラピストとして「もみの木」を開院。間もなく、腕のむくみで来院した女性にヒアリングしたところ、原因はがん手術による後遺症でした。

 「当時の私は、まだ医療的ケアに関する認定を有していませんでした。やむなくお断りしましたが、申し訳ない思いでいっぱいでした」

 肩を落として帰る後ろ姿を見送った苦い体験は、さらなる技術向上へと瀧沢さんを突き動かします。2012年にリンパ浮腫療法士の資格認定機関が設立されると、すぐさまチャレンジ。見事に難関を突破したのです。
 
 「がん後遺症リンパ浮腫はひとたび発症すると根治が難しく、一生付き合っていくというのも珍しくありません。術後早期に適切な治療を行えば、症状の進行を遅らせたり苦痛を和らげたりすることも可能ですが、緩和ケアの環境が整った医療機関も担い手も十分とは言えません」
 
 瀧沢さんは数多くの人を癒やす一方、医療関係者や市民に向けた症例発表会や講演会にも登壇。一般に知られることが少ない術後の症状や治療の現状、ケアの方法などを広く伝えたいと、全国各地に赴き啓発に努めています。

 体力的にも精神的にも厳しい時でも、瀧沢さんの側にいて元気づけるのは、看板犬の“まぁしゃ”と“こてつ”。
 「まぁしゃは心臓疾患もある老犬なので、いつも利用者さまから『長生きしてね。瀧沢さんを頼むよ』と励まされているんです」と目を細めます。

瀧沢恵美子 たきさわえみこ

#chapter3

機能性に優れ、デザインも納得のケアパッドとショーツ「エミーナ」を開発

 訪れる人の中には、下肢やデリケートゾーンのむくみに悩み、日常的に弾性ストッキングやサポート機能がある身体支持具の使用者も数多く見られます。

 瀧沢さんは、「着脱の負荷が大きく、時間がかかる」「見た目が明らかに医療用で気持ちが上がらない」といった女性の声を受け、機能・耐久性に優れ、デザインも納得できるものはないかと思案。身に着けるのが簡単で、装いにも影響しにくいショーツを用いたケア用品を思い立ちます。

 「はじめは手作りで試作をしていたのですが、うまくいきませんでした。それでも数百回以上も試行錯誤する中で、さまざまな分野の人との巡り合わせがあり、信頼できる職人や研究機関の協力によって、ようやく形になっていきました」

 「エミーナ」開発の取り組みは2017年の「岩手県発明くふう展」の「発明協会会長奨励賞」に入選。その後も研究を重ね、2023年に製品化をかなえました。

 外出が難しい状態になっても移動手段の確保などが可能な場合には、自宅へ足を運び、本人や家族に声掛けをしつつ、むくみを中心に全身に手を当て、つらさを解きほぐします。
 
 「時には私に体を預けながら、家族にも言えないような心のつかえを話される方もおられます。利用者さまとご家族が、少しでも穏やかな時間を過ごせるよう、体と心をほぐすお手伝いをすることが、最も大きな役割と考えています」

 瀧沢さんは「利用者さまとは一生涯の関わりと心に刻んでいます」と語り、一人一人と向き合っています。

(取材年月:2024年2月)

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瀧沢恵美子

術後浮腫の悩みに早期に介入し悪化を防ぐプロ

瀧沢恵美子プロ

リンパ浮腫療法士

リンパルーム エミーナ

がんの手術・放射線治療後の後遺症リンパ浮腫の悩みに、生活や運動指導、スキンケア・リンパドレナージ・複合的理学療法で早期に介入。デリケート部位浮腫対応の女性用下着を開発。精神的ダメージ予防にも寄り添う。

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