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Mybestpro Interview

スポットライトに浮かび上がる自分の本当の姿を、心健やかに生きる糧に

内なる衝動に向き合い個々の人生に光をあてるステージングのプロ

横田裕久

横田さん正面
ステージ

#chapter1

自由に発想し、精神面を活性化する演劇ワーク「応用インプロ」の普及に尽力

 「Spotlight one's identity」をコンセプトに、表現活動を通して自身の内なる輝きを見いだし、生きる力を見いだす「劇団Compass」。
 神戸を拠点とし、年に1度開催するオリジナルミュージカルで主に脚本・演出を手掛けているのが、俳優として舞台にも立つ代表の横田裕久さんです。

 「50人近い団員の9割は、普段仕事や家事・育児に携わる社会人や学生など。歌やダンスの基礎を学ぶワークショップを経て、舞台芸術のプロとともにひとつの作品を作り上げていく中で、自分らしい生き方を追求しています」

 自主公演や読み聞かせコンサート以外に、企業や自治体主催のイベントでパフォーマンスを披露。外部公演をプロデュースするほか、企業の活動などを紹介する動画を企画・制作し、劇団としてさまざまな広報支援を展開しています。

 中でも横田さんが力を入れているのが、演劇の世界で活用されてきた即興劇(インプロヴィゼーション)を用いた心理トレーニングの実践です。

 「もともとは、台本がないところから創作して芝居や演奏をする芸術分野の訓練手法ですが、近年では『応用インプロ』と呼ばれ、精神面の活性化や他者との協調性を高めるトレーニングとしても注目されています。教育現場や高齢者の介護施設、障がい者らが通う就労支援施設、従業員のモチベーションアップを目指す企業などでも取り入れられつつあります」

 横田さんは県外の保育所などに定期的に訪問。保育士や保護者とヒアリングを重ねながら、子どもたちが失敗を恐れず、自由に発想していく演劇ワークの啓発と普及に取り組んでいます。

#chapter2

自己表現の喜びを、目の前の人を笑顔にするためのアクションへと昇華

 大学卒業を目前に、NPO法人が関西で開いた市民ミュージカルに参加したことから、演劇部に在籍していた高校時代以来、自己表現の喜びに目覚めた横田さん。
 生まれ育った愛知県から神戸に居を移して表現集団を立ち上げ、ダンスイベントや自主公演の脚本づくりと演出に励みます。

 「大阪のミュージカル劇団にも籍を置いて、プロのミュージカル俳優として数々の舞台を踏みました。刺激に満ちた日々を過ごしながらも、『相応の覚悟がないと、第一線で活躍するプロアクターと同じステージに立ち続けることはできない』との思いが胸から消えることはありませんでした」
 
 「エンターテインメントの世界をこのまま突き進むべきか」と自問するうちに、「必ずしも大勢から称賛されたいわけではなく、目の前にいる人と直接関わって元気を届けたい」という本心が見えてきたそう。

 「振り返ると、兄とスポーツに興じるより、妹たちを先導してごっこ遊びをする方が楽しくて、一緒に寸劇やダンスを祖父母の前で披露していました。家族の喜ぶ顔を見るために張り切っていたんですね」
 
 幼い頃のように「無垢で素直な心のままに、一人一人にしっかり手渡しできる元気や感動を作っていきたい」と、劇団名を行く先を指し示す“羅針盤”に定めた横田さん。
 ショービジネスあるいは芸術のどちらにかに傾倒するのではなく、演者も観客も、それぞれの内なる思いにスポットライトをあて、自分らしく生きるための新たな航海へとこぎ出します。

出演者

#chapter3

自らを表現し、周囲と調和する演劇の力を教育・福祉・ビジネスに活用

 「声を出す、体を動かす、日常と異なるシーンに身を置くなどの体験は、記憶や感情といった精神活動を活性化します」と横田さん。周囲の発言や行動を受け入れ、自らのアイデアを加えて展開する力を、教育・福祉・ビジネスなどの現場に生かす「応用インプロ」の担い手として各地に足を運びます。

 「対象者の精神レベルに合わせて簡単な歌やゲーム、台本を用意しています。呼吸法を意識するなどして個々の目線に合わせ、根気よく声掛けしていくと、次第に心の内に眠る欲求や衝動が呼び起こされていきます」

 演技指導と大きく異なる点は、「自分と相手をしっかりと客観視する」という心の動きを促すことだと言います。
 
 「例えば保育園などでは、お遊戯会の完成度を上げるためのお稽古と誤解されることがあります。多くの保護者がお子さんの配役だけに大きな関心を寄せがちですが、あくまでも発達段階にある子どもたちが、ともにチャレンジし、互いに認め合う試みの一つ。どんなポジションであっても価値を認め、自分なりの力を発揮できるよう見守ってほしいです」

 演技者として、また作り手として演劇の可能性を探る横田さん。喜怒哀楽を織りなし、ストーリーを紡いでいく魅力を多くの人に伝えるためにも、舞台に立ち続けたいと語ります。

 「闊達自在に表現する演劇は、皆さんのすぐ身近にあるもの。演劇というコンテンツを通して、どの世代、どの立場の人も心健やかに豊かな人生になればうれしいですね」

(取材年月:2024年9月)

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Profile

専門家プロフィール

横田裕久

内なる衝動に向き合い個々の人生に光をあてるステージングのプロ

横田裕久プロ

俳優・プロデューサー

劇団Compass

表現活動を通して自身と向き合い、演技者と観客それぞれの人生に光をあてる舞台を用意。また演技トレーニングの手法を教育・介護・企業活動に取り入れるなど、演劇を社会や身近な暮らしの場に活用する取り組みも

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