労働安全衛生の観点からより良い職場環境を導くプロ松井正義

労働安全衛生の観点からより良い職場環境を導くプロ

松井正義

現場の実態に即したアドバイスで、より良い環境づくりを後押し

　「労働安全衛生と聞くと、製造業など特定の業種のことと思いがちですが、どの労働現場にも関係します。専門家のもとで、課題を知り、意識を高めてほしいですね」と話すのは、「トトロエコンサルティング」代表取締役の松井正義さん。大手総合化学メーカーでの労働安全衛生や化学物質管理業務を経て、労働衛生コンサルタントに。経験をもとに幅広い業種を支援します。

　「例えば、デスクワークによる座りっぱなしで、腰痛や肩こりに悩む人は多いでしょう。業務に伴って起こる心身の不具合は、本来、『仕方がない』では済まされないことです。命に関わらなくとも、数年後に腰痛が悪化して支障が出るリスクはあります。業種によって、業務上疾病の有害因子はさまざま。専門的な視点から、従業員の健康を維持・改善する環境づくりをアドバイスします」

　経営者と従業員、双方に寄り添ったサポートを心掛ける松井さん。必ず現場を見て実情を把握します。
　「『こうすべき』と原理原則を押し付けるのではなく、現場目線に落とし込むことを大事にしています。今すぐできることと中長期的に取り組む施策に分け、ハード・ソフトの両面からコストをふまえて提案します」

　ある食料品製造業からの依頼では、労災防止対策を講じました。業界で起こりやすい転倒事故や熱中症など、リスクを洗い出して具体策を提示。「社内だけでは気付けなかった」との声が挙がったとか。
　「通路の幅や機械の配置など、当たり前と思っていることが、第三者の観点で見ると改善点になることも。まずは気付きを得ることから始めましょう」

化学メーカーでの経験を原点に、有害性評価の研究者としても専門性を発揮

労働災害による休業4日以上の死傷者数は、近年増加傾向にあり、2022年に過去20年で最多となる年間約13万人に達しました（厚生労働省「令和4年労働災害発生状況」、2023年5月）。
「『いってきます』と仕事に出かけ、『ただいま』と無事に帰宅できるのは、当たり前ではありません。誰もが健康やケガの不安なく、毎日働き続けられる社会の実現が私の最終目標です」と松井さん。

　働きやすい職場づくりは、労災対策だけでなく、ブランディングにも有効と強調します。
　「人手不足の時代に、働きやすさは求職者へのアピールポイントに。また、従業員の健康を守り推進する〝健康経営〟を社外に発信できれば、イメージアップにもつながります」

　松井さんが、労働衛生コンサルタントを目指したきっかけは、30年以上勤めた化学メーカーで、工学的対策により作業環境改善を導いた経験でした。
　「ある実験室で匂いから化学物質が漂っていると判明し、局所排気装置で空気の流れをコントロールしました。作業者のばく露を防げたことがうれしかったですね。労災を他人事にせず、多くの現場を守りたいと思ったことが原点にあります」

　法改正により2024年4月1日から義務化される「化学物質の自律的管理」の支援でも強みを発揮します。
　「前職で化学物質の有害性評価の研究に従事し、化学物質管理業務では有機溶剤や特定化学物質、消防法における危険物、放射性物質など幅広く扱いました。研究者としての知見から、有害性を踏まえたリスクアセスメントの方法や自律的に管理する術をお伝えできます」

多様なニーズに応える講演や、資格取得の勉強会を通してノウハウを伝授

　松井さんは、事業のもう一つの柱として、労働安全衛生に関する講演も手掛けています。関連法の解説から取り組みの進め方、熱中症や酸欠などハザード別の対策まで多様なテーマに対応。
　「最近、弁護士など士業事務所を対象にした『専門職が陥りやすい労働衛生上の落とし穴とその対策』の講演依頼がありました。個人事業主の方々は自ら環境整備を行う必要があります。労働安全衛生の視点からポイントをお伝えし、行動変容につながる内容を心掛けています」

　社名の「トトロエ」とは、資格取得時の支えになった愛犬の名「トト」と、〝労働・衛生〟の頭文字から。同じような志を持つ仲間を増やして社会に貢献したいと、労働衛生コンサルタントを目指す受験生の支援活動も行っています。
　「独立以前に、自分の合格を機に立ち上げたオンライン勉強会を今も主宰し、受験のコツなどを伝えています。私自身も、クライアントにより還元できるよう、大学院で労働安全衛生マネジメントを学び、知識を深めています」

　現在50代で、同業者の中では若手と胸を張る松井さん。
　「一気に労働環境を変えることは難しいので、その時々で気付きを得ていただき、無理なくより良い職場環境へ導くお手伝いをしたいと考えています。労働安全衛生という枠組みにとらわれず、働く一人一人がやりたい仕事に集中でき、経営者とともに幸せになる環境を整えていくことが目標。一生涯の仕事として力を尽くします」と決意を語ります。

（取材年月：2023年11月）

安全衛生への意識を高め、誰もが安心して働ける社会を目指す

現場の実態に即したアドバイスで、より良い環境づくりを後押し

化学メーカーでの経験を原点に、有害性評価の研究者としても専門性を発揮

多様なニーズに応える講演や、資格取得の勉強会を通してノウハウを伝授

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