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ベトナム人材をインターンシップで受け入れ、医療・介護・福祉の現場での定着を目指す

離職リスクの軽減を図る医療介護福祉人材のプロ

住所和彦

住所和彦 じゅうしょかずひこ

#chapter1

現地大学と協定を締結し、長期にわたる丁寧な教育で離職リスクを低減

 「現地の大学や行政機関との強固なつながりを生かし、人材受け入れを支援します」と話すのは、兵庫県加古川市の「外事部」代表の住所和彦さん。ベトナム人に特化した医療介護福祉人材のマッチングサービスを展開。長期間にわたる丁寧な教育で離職リスクを低減しているのが特徴です。

 「介護業界は慢性的な人手不足に加え、人材の定着率も高いとは言えません。自己努力だけでの人材確保には限界があり、私どものような専門家の活用が不可欠です。デジタルトランスフォーメーション(DX)による生産性向上も求められています」

 そこで住所さんが打ち出したのが、看護を学ぶベトナム人学生をインターンシップとして受け入れる仕組み。「ベトナムの学生たちはITリテラシーが高く、業務の合理化にも貢献できる大きな戦力です」と強調します。

 同社は、ベトナム有数の私立総合大学・クーロン大学と協定を結んでおり、同大の看護学生は1年間、日本各地の福祉施設でキャリアを形成。受け入れ施設は、大学卒業後に日本での活動を希望する学生をスタッフとして改めて採用することができます。

 学生には日常会話にとどまらず、医療・介護の専門用語まで理解できる語学力を求めています。さらに、大学には日本の歴史や文化、マナーを学べるカリキュラムを導入するよう働きかけています。

 「受け入れ企業さまに対しても、異文化や生活習慣を理解するための実践的研修や継続的なサポートを提供しています。外国人材と施設の双方が安心して成長できる環境づくりをお手伝いしています」

#chapter2

アプリを活用した交流やキャリアパスの提示で、日本で学ぶ意欲を後押し

 看護師として働く姉の影響を受けて福祉の道に進み、地元の特別養護老人ホームで勤務した後、30歳で通所介護施設を立ち上げた住所さん。自身も外国人材の受け入れで苦い経験をしたといいます。

 「モンゴル人スタッフの受け入れを計画しましたが、新型コロナウイルスの世界的流行の影響もあり、想定とは異なる人材が来日しました。結果的に定着せず、すぐに退職。もっとシステマティックに、長期的な視点で人材を獲得する必要があると痛感しました」

 同じ課題を抱える施設経営者の力になろうと、2023年に「外事部」を創立。人材のミスマッチを防ぎ、優秀なベトナムの人材に長く活躍してもらえるよう、さまざまな支援サービスを提供しています。その一つが、現地の学生向けに整備したオンラインサロン・ベトジャパンです。

 「介護・看護の仕事内容や専門用語に関する質問のほか、来日を望んで勉強している学生同士でコミュニケーションを取ることができます。当方の日本人看護師が運営しており、異文化に飛び込む不安を少しでも取り除けるようにしています」

 また、ベトナムのメッセージアプリ・Zaloを活用し、来日前後を通じて学生との連絡を密に保ち、安心して学べる環境を整えています。

 「さらに学生には、インターン終了後に資格を取得し、将来的には特定技能2号に進めるよう、長期キャリアパスを明示しています。自己実現につながる明確な道筋を示すことで、安心して学び、働けるようにしています」

#chapter3

独自メソッド「接遇11ヶ条」を導入し、おもてなしの精神を育む

 「外国人材の受け入れに不安を抱えている企業さまは少なくありません。しかし、実際に学生と接すると、日本語のスキルや学習意欲の高さに驚かれる方は多いですね」

 通所介護施設だけでなく、就労継続支援B型事業所や訪問看護ステーションなども運営する住所さん。特に自身の施設で徹底しているのが、「接遇11ヶ条」と呼ばれる独自のメソッドです。所作や言葉遣い、意思の確認など、利用者が健やかに暮らせるための多岐にわたるノウハウを凝縮。技術だけでなく、世界に誇れる日本のおもてなしの精神の修得を目指しています。

 また、自著『選ばれる介護施設の極意 接遇11ヶ条が起こす革命の話』(ゴマブックス)では、「接遇11ヶ条」に込めた理念や、スタッフに浸透させるまでのプロセスを丁寧に紹介。さらに、YouTubeではラジオパーソナリティーとして登場し、外国人材の受け入れに向けた心構えや現場での工夫を発信しています。

 「日本の医療・介護分野において、外国人材の力を借りることは、すでに不可欠な時代です」と語る住所さん。単なる人手不足の補填ではなく、人と人、そして国と国とを結び、共に支え合う持続可能な社会をつくることを目標に掲げています。

 「インターンシップは、まだ緒に就いたばかりの取り組みですが、国際的なキャリア形成のモデルケースへと成長させたいですね。日本だけでなく、アジア全体の人材交流を促すハブとして、未来を切り拓いていければと思います」
 
(取材年月:2025年9月)

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住所和彦

離職リスクの軽減を図る医療介護福祉人材のプロ

住所和彦プロ

人材マッチング支援

外事部株式会社

ベトナム有数の私立総合大学と協定を締結し、1年間にわたる看護学生のインターンシップを実施。日本語教育や接遇研修、独自アプリの活用により、日本の受け入れ企業での定着を促し、離職リスクの軽減を図ります。

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