オーダーメードで工業製品や部品の製缶を手掛けるプロ
藤田博充
Mybestpro Interview
オーダーメードで工業製品や部品の製缶を手掛けるプロ
藤田博充
#chapter1
「お客さまのご要望を細やかに伺って施工に反映し、期待を上回る仕上がりを目指しています」と話すのは、姫路市花田町の「ふじた」代表の藤田博充さん。ステンレスやアルミ、鉄を素材とした工業製品を製作しています。
「当方は、鉄板などの金属を切断、溶接して工業設備や部品をつくる製缶を手掛けています。例えば製造工場で使用するタンクや配管、ダクト、工場内を安全に通行するためのデッキや手すりといったものを1点からお作りしています」
図面をもとに顧客と綿密に打ち合わせを重ねた上で、資材の切断、抜き、曲げ、穴あけ加工、溶接、研磨、表面処理といった工程を丁寧に遂行。製缶業歴二十余年の職人として、藤田さんが特にこだわっているのが溶接の技法です。
「比較的安価で、大規模な接合に用いられるアーク溶接、精密なものに適したTIG(ティグ)溶接、作業効率が高く大量生産に向いた半自動溶接といった方法があり、素材や形状、用途に応じて使い分けています」
中でもTIG溶接は強度と仕上がりの美しさが特長。液化した溶融金属を、大気中の酸素や窒素から遮断する「不活性ガス」を使いながら溶接するため、空気が金属に入り込むことで生じる気泡を防ぐことができます。
「融点が高く、耐消耗性に優れた素材のタングステンを電極としているので、いろいろな金属に対応できるのも強みです。火花が発生しにくく視界を保ちながら作業できるので、薄くて繊細な素材や複雑な形状も承ります」
設備機器に傷みが出た場合は修理も実施。見積もりは無料で、納期や運搬の相談にも柔軟に応えています。
#chapter2
「溶接の難しさは『ひずみをいかに抑えるか』に尽きます。熱で溶かしてつなぐのですが、高温になった金属は膨張し、冷えると縮みます。これがゆがみや変形の原因となります」
タンクや配管にひずみがあると、圧力がかかった際に割れたり外れたりして気体や液体が漏れ出し、現場で働く人たちの安全に関わります。リスクを防止するため細心の注意を払う藤田さんは、加工や溶接の精度を高めるべく、母材となる金属を固定する治具を準備しています。
「製品がオーダーメードなので治具もその都度、時間をかけて自作しています。万が一ひずみが生じても後から修正は可能なのですが、万全を期すため事前の段取りを重視しています」
緻密な取り組みによって、ステンレスにおける製缶の限界とされる誤差1ミリ以内を目標にしている藤田さん。妥協を許さない仕事ぶりで取引先の信頼を重ねています。
あるメーカーから「自社では製作できる人がいない。お願いできないか」と依頼されたステンレス製の水位測定機は全長6メートルと大型で、溶接も難易度の高いものでしたが、用命通りに製作。完成時は互いに「良い物ができた」と喜び合ったそうです。
藤田さんは事業者だけでなく、個人客からの金物製作も請け負っています。
「例えば『知人への出店祝いとして傘立てを作ってほしい』『市販品にはない頑丈なゴミステーションを設置したい』といったご注文に応じます。世界に一つだけのオリジナル製品をお求めの方にお勧めです」
#chapter3
藤田さんは社会人野球でプレーしたのち、20代で製缶会社に就職。熟練の技術者たちから製缶のイロハを学び、40代で独立しました。
「会社員時代は先輩から『特にタンク類の溶接の不具合は絶対にあかん』と教え込まれました。破損して中身が漏れる事故が起きたら一瞬で信用を失います。お客さまの事業を支えるためにも、どんな小さな作業も手を抜かず、品質を追求しています」
溶接には数多くの手法があり、素材もさまざま。経験知や技量も要求されますが、そこに奥深さがあると言います。
「鉄同士、ステンレス同士など同じ材質はくっつきやすいのですが、異素材は付きにくく、こつが要ります。密着度を高めるには溶剤をよく溶かすことが必要ですが、温度を上げ過ぎると今度はひずみが出やすくなり、バランスをどう取るかが腕の見せどころです」
近年、個人で鉄鋼所を切り盛りしているのは年配者が多く、跡継ぎがなく廃業した話も耳にするように。技術者の高齢化が進む中、業界を盛り上げたいとの思いを強くしています。
「次代を担う若手の育成がカギで、当方も従業員の雇用を視野に入れています。培ってきたノウハウを若い人たちに積極的に伝え、ものづくりの魅力を感じてもらい、成長意欲につなげたいと考えています」
企業や個人から寄せられるニーズに向き合い、多様な金属を自在に形作る藤田さん。「協力会社と連携し、大型の製品を受託できる体制も整えていますので、お気軽にお声掛けください」と呼び掛けます。
(取材年月:2025年4月)
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Profile
オーダーメードで工業製品や部品の製缶を手掛けるプロ
藤田博充プロ
製造業
株式会社ふじた
タンクや配管、ダクトなどの工業設備、部品を一点から承ります。素材や形状、用途に応じ、アーク溶接、TIG(ティグ)溶接、半自動溶接で対応。ひずみを最小限に抑え、誤差1ミリ以内の施工を心掛けています。
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