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日本が誇る黒毛和牛の生産牧場として健康で元気な牛を育て、全国に展開

牛を熟知し、繁殖から肥育まで手掛ける黒毛和牛のプロ

上野信之

上野信之 うえののぶゆき
上野信之 うえののぶゆき

#chapter1

飼料にもこだわって繁殖から肥育まで一貫し、肥育牧場や卸業者に販売

 日本で古くから飼育される在来種で、ブランド牛として知られる黒毛和牛。赤身に乳白色の脂肪が網の目のように入る霜降りの肉質はきめが細かく、しっとりと柔らかい口当たりで世界からも注目を集めています。

 「黒毛和牛の生産牧場として、健康で元気な牛を全国にお届けします」と話すのは、北海道網走郡の「津別ファーム」の代表・上野信之さん。2011年12月、畜産用飼料を扱う「湯浅商事」のグループ農場としてスタートし、繁殖、哺育、育成、肥育を一貫して手掛けています。

 「津別ファームでは自社で月に100頭ペース、預託牧場で100頭、合わせると200頭くらいの仔牛が生まれています。繁殖牛は約2000頭、仔牛は約1500頭、肥育で約300頭を飼育しており、肥育牧場さんには育成牛を、肉屋さんには肥育牛を販売しています」

 3000頭を超える牛に対し、従業員の数は20人余り。作業の効率化を図るため、牛の個体情報をパソコンなどで確認できる牛群管理システムの「ファームノート」や哺乳ロボットを導入し、ICT化を進めています。

 「各個体の成育状況を記録し、体調の変化を早期に捉えることで適切な手入れにつなげています。また、洗浄消毒といった牛舎の管理により清潔で快適な環境を保ち、牛にかかるストレスを軽減しています」

 飼料会社の傘下であることから、北海道産牧草を用いたり、自社配合のTMR(完全混合飼料)を使用したりとエサにもこだわり、健康で元気な体を育んでいます。

 「うちは従業員を宝と思って大事にしています。ただ牛あってこその事業ですから、牛の気持ちになって考え、できることをしようと伝えています」

#chapter2

牛を愛情深く育てるため、風通しのいい組織づくりで従業員をフォロー

 実家が乳用種のホルスタインの牧場を営んでいた上野さんは、小さい頃から牛を見て育ちました。畜産会社に就職するも倒産し、声をかけられたのがきっかけで「津別ファーム」を設立しました。

 「品種によって性質が異なり、例えばホルスタインの仔牛は強いですが、和牛の子はすごく弱くて死亡事故が起きやすいんです」

 上野さんは「生き物である以上、死んでしまうこともある」と前置きした上で、次のようにし語ります。
 「正常に生まれた子が病気で死んでしまうのは、ちゃんと見てあげていないから。牛の耳が下がっていたり、背中を丸めていたりすると調子が悪いという見方もありますが、私は経験が長いので牛の顔を見れば体調がだいたい分かり、疾病の早期発見ができます」

 牛は愛情をかければ応えてくれる動物で、育てる上で苦労を感じることはないという上野さん。日々の世話を支えてくれる従業員に対しても、配慮を忘れません。

 「当社に定年はなく、20代から60代まで幅広い年齢層の従業員が働いています。新しい人材の獲得・定着のためにも時代に合った指導を意識しており、仮にできないことがあっても、諦めずに何回も教えてできるようになるまでフォローしています。人には得手・不得手があるので、得意な分野の仕事を任せる工夫もしています」

 現場にできるだけ顔を出し、「困りごとはない?大丈夫?」「牛の様子はどう?」など、従業員とのコミュニケーションを心掛け、風通しの良い組織を目指しています。

上野信之 うえののぶゆき

#chapter3

ノウハウの共有などを通じて、苦戦する畜産業界の維持・発展にも注力

 良質な国産牛肉を安定的に供給するため、各種事業を展開する「全国肉牛事業協同組合」の理事を務める上野さんは、業界全体を盛り上げたいと考えています。

 「近年は牛を育てるコストが上がっています。特にエサ代が高くなっていますが削るわけにもいかず、出荷したとしても赤字だったり、資金力がない牧場は優れた血統を仕入れることができなったり。持ちこたえることが難しいのが現状です」

 燃料や運送代の高騰などが経営を苦しめ、物価高が小売価格に影響して需要が落ち込み、昨今の不安定な情勢が畜産業界にも暗い影を落としています。

 「農家さんの高齢化や後継者の不在も課題となっています。労働力を補い、不要なコストを削減する上でも、省力化をかなえるシステムや機械設備を活用して、生産体制を整えることが重要です」

 業界全体でノウハウや情報を共有し、みんなで協力していきたい一心で、同業者を鼓舞することも多いそうです。

 「最近は、あいさつ代わりに『もうからない』『つぶれそう』といった声が聞かれます。厳しい状況でも希望を持てるように、『今が底で、これから上がっていくだけだから一緒に頑張ろう』と常日頃から呼び掛けています」

 上野さんは日本が誇るおいしい黒毛和牛を提供するべく、前を向いて進んで行きたいと熱意を見せます。

 「日本の畜産業を維持・発展させていけるように農林水産省にも働きかけていくつもりです。大切に命を育てる全国の牛飼い仲間を勇気づけるために動いていきたいですね」

(取材年月:2024年9月)

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上野信之

牛を熟知し、繁殖から肥育まで手掛ける黒毛和牛のプロ

上野信之プロ

畜産業

株式会社津別ファーム

小さい頃から牛を見て育つ。自社牧場では、繁殖管理システムや哺乳ロボットなど、ICTを積極的に活用している。黒毛和牛の繁殖、哺育、育成、肥育まで自社牧場内で完結

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