最大1日1万枚の刺繍を施し、短納期にも応える刺繍のプロ
福田大輔
Mybestpro Interview
最大1日1万枚の刺繍を施し、短納期にも応える刺繍のプロ
福田大輔
#chapter1
「培った技術でお望みの刺繍(ししゅう)を施します」と話すのは、群馬県伊勢崎市の「福田商店」の専務取締役・福田大輔さん。
バッグ、キャップなどの小物や、Tシャツ、パーカ、ブルゾンといった衣類に希望のデザインやロゴを入れ、ワッペンも制作。大手グッズメーカーやアパレル、芸能関係の企業、スポーツチームなど、全国から引き合いがあります。
「当社は約30人の従業員を抱え、日勤と夜勤の二交代制により大量のオーダーを短期で納められるのが強みです。複数のミシンヘッドを持つ多頭機を10台保有し、例えばポロシャツのワンポイントなら1台につき1日1000枚程度、全てをフル稼働すれば1日で1万枚の仕上げが可能で、厳しい納期のご相談にもお応えします」
技法は生地に絵柄を刺す平刺繍、色糸で模様を織り上げるジャガード刺繍、モコモコとした風合いのサガラ刺繍、スパンコール刺繍、テープやリボンなどを縫い付けるコード刺繍など多彩。横振り刺繍と呼ばれる伝統工芸の職人も在籍しています。
「針が左右に動く横振りミシンを用いて柄を起こすもので、微細な調整で一針一針縫い進めることでグラデーションや細やかな線を描きます。立体感があり、光の加減、角度によって色が変化し、深みのある表情が出ます。操作が難しく、全国を見渡しても職人が減っているので、当社の自慢の一つです」
2022年6月、パリのユネスコ本部で開催された展示会に、江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎の代表作「神奈川沖浪裏」を横振り刺繍した作品を出展。迫力と繊細さを兼ね備え、海外の参加者から大好評を博したそう。
#chapter2
「福田商店」は父親の豊さんが1980年に創業。同年に生まれた福田さんは、幼い頃から工場を元気に走り回っていました。
「現場になじみ、『いつかはここで仕事をする』というビジョンを持ちながらも、高校時代は特に意識することもなく、他の世界も見てみたいと考えていました。卒業後は地元の商社に就職し、工場で使用する資材の販売に従事しました」
朝から晩まで働く生活を5年間続けた福田さん。多忙を極める日々に区切りをつけようかと思案していたタイミングで、豊さんから「手伝わないか」と打診があり家業へ入ります。当初は、営業をしながらミシンの扱い方を覚えたと言います。
「ご注文はお付き合いがある固定客からいただくことが大半でしたが、私が入社して以降はホームページを作って新規開拓にも力を入れ、全国から問い合わせを受け付けるようになりました。設備機器を拡充し、現場を担う従業員も増えてきたので、私は営業専任へとシフトしました」
自社サイトやSNSで作品を紹介するなど情報発信に努め、依頼の数は年々増加。順調に業績が伸びたことから、2023年7月には本社の目の前に2階建ての新工場を建設しました。
「数多くのニーズに応えていくため、さらに生産拠点を増やすことを検討しています。2025年4月には100坪の新工場の購入を決定しました。また、営業や作業スタッフも採用して、お客さまに向けたご提案を充実させたり、制作業務の体制を強化したり、企画、品質ともに精度を上げ、お客さまにご満足いただけるものづくりをしていきたいですね」
#chapter3
福田さんのもとでは、会社やショップ、サークル、チームなどのユニホームやイベントグッズを請け負うほか、オリジナルブランドを立ち上げる人もバックアップ。生地の手配や縫製、ネーム付け、検品といった工程を一貫して引き受けています。
「現在、雇用創出の観点から障害がある人たちに就労の機会を提供する施設に商品の袋詰めをお願いしていますが、目が行き届きにくいのが課題です。今後、新しい工場を開設するに当たり、障害者の就労支援事業にも乗り出すことも計画しています」
まずは袋詰めから始め、ミシンを使った刺繍加工も学んでもらい、ゆくゆくは「福田商店」の正規雇用につなげていくのが目標とのこと。事業者と取引する「BtoB」を主軸にしていますが、個人に向けて刺繍の魅力を直接伝える店舗を出すことも展望しているそうです。
「素材を扱う手芸屋は数多くありますが、刺繍作品をそろえる場所は実は少ないのです。さまざまな技法があることを伝えたいですし、実際に見て触れて、緻密な構成や奥行きのある表現力、優しい質感などを体感してほしいのです。職人の実演を見学しながら、カフェのようにくつろげる空間にしたいと考えています」
横振り刺繍は「糸で描く一幅の絵画」と称され、細部まで技巧を凝らすことで芸術品の域に。力強いタッチや鮮やかな色彩が見る人の心をひきつけます。贈呈品や記念品、1点もののスカジャンに重宝されるほか、神社仏閣の祭事など幅広いシーンを優美に彩ります。
(取材年月:2025年2月)
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Profile
最大1日1万枚の刺繍を施し、短納期にも応える刺繍のプロ
福田大輔プロ
刺繍業
有限会社福田商店
大量のオーダーに短納期で応えられる点が強み。多頭ミシンを10台保有し、昼夜二交代制で作業に取り組む。ポロシャツへのワンポイント刺繍であれば、1日あたり1万枚に刺繍が可能。
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