辛子明太子のプロ
阿田茂
Mybestpro Interview
辛子明太子のプロ
阿田茂
#chapter1
プチプチッとした食感とピリッとした辛さがたまらない辛子明太子。全国にその名が知られる福岡の郷土食品ですが、聞くところによると、福岡の辛子明太子業者は、大手メーカーから料理店まで含めると200社以上とか。地元の私たちでさえ、「どの店がよいの?」と聞かれても、正直答えに迷ってしまう人も多いのでは?
プロの料理人も認める博多の新鮮食材が並ぶ柳橋連合市場で「原口海産物専門店」を営む阿田茂さんによれば、原料のよしあしの決め手は<重み><ハリ><色、つや>の3つ。よいタラコは、卵がぎっしりとつまっていて、手に持つとズシっとした重みがあり、食べると、プチプチとした粒子感としっとり感があるそう。
「最近は、原料となるスケトウダラの収穫量が少なく、アメリカやロシアなどの輸入物に頼っているところもありますが、ウチはあくまでも北海道産。自分の目にかなったものだけを使っています」と阿田さん。辛子明太子製造一筋26年の職人でもあります。
大学を卒業してすぐ辛子明太子製造会社に就職。15年間工場長として勤務し、独立。7年間明太子製造の下請けに従事した後、4年前に柳橋連合市場に店を構えました。大量生産は行わず、自分の目の届く範囲で本当によいものだけを提供したいと、製造から販売までを手掛けています。全国放送の情報番組でもたびたび紹介され、地元の常連客をはじめ、お得意さんは全国に。
#chapter2
阿田さんのこだわりは、タラコを漬けるだしにあります。塩づけされた状態で届く原料を冷凍庫でねかすこと6カ月、タラコ自体に塩をなじませます。そして、塩ぬき専用のだしに2日ほど漬けた後、いったん取り出して重しをかけて水分をぬきます。さらに黒走りと呼ばれる一等級の羅臼昆布を火にかけてだしをとり、独自の調味料を調合。バットに塩ぬきしたタラコを並べ、その上に赤唐辛子をふり、先ほどの昆布だしをかけて2日ほどおくと辛子明太子の出来上がりです。
「おそらく原料を塩ぬきしているところは少ないと思いますよ。これは、タラコから余分な塩をぬき、次に漬け込む昆布だしの味を吸い込ませるための作業。昆布のうまみ成分が溶け込んでまろやかになるんです。一つひとつの工程を丁寧に仕上げていくことがおいしい辛子明太子をつくるコツ。自分の目で吟味したいから、つくり手は私とこの道8年のベテラン女性製造員の2人だけ」と、ここにも阿田さんの明太子づくりにかける思いが…。
工場は店舗のすぐそば。製造者と販売者が同じというのも、消費者にはうれしいこと。「接客は“だれに対しても丁寧に”がモットー。試食を薦めて、お客さん自身納得した上で購入してもらっています。原料について詳しく聞かれても、きちんと答えられますし、明太子を使ったレシピなども教えています。逆にお客さんから教えられることもあります」と、対面販売ならではのよさもアピール。市場で行われるイベントにも積極的に参加し、参加者には試食はもちろん、お土産やパンフレット、名刺を渡してリピーターづくりにも励みます。
#chapter3
新商品の開発にも力を入れています。今、辛子明太子の次に売れているのが、阿田さんがウチの隠れた逸品と断言する柚子イカ明太子。イカの塩辛を昆布だしとユズで漬け込んでいるため、柚子ごしょうの香りが心地よく、漬け汁はサラダのドレッシングにもなるというヒット商品。この柚子イカ明太子に続くものをと考案中です。
「この前はかまぼこ屋の協力で明太いかしゅうまいをつくりました。明太子の量が多すぎると、パサパサになったり、漬け汁まで入れてしまうと、やわらかすぎてしまったりして苦労しました。企業秘密なので詳しくは言えませんが、柚子イカ明太子を使って何かできればと思っています」と話す一方で、飲食店からその店オリジナルの明太子をつくりたいと頼まれれば、協力は惜しみません。
「『アンテナショップはないんですか』『卸しはしないんですか』と、よく聞かれるのですが、自分がつくった商品を責任もって売りたいので、これ以上店舗を広げるつもりはありません。辛子明太子の味を落とさず、よそが真似できない商品をつくることが、今私がすべきこと。原口の味を気に入ってわざわざ買いにきてくれるお客さんのためにも、手抜きはできませんからね」
阿田さん自漫の商品はネット通販でも購入可能ですが、ぜひ柳橋連合市場の原口海産物専門店へ出かけてみてください。阿田さんとの会話を楽しみながら買い物ができるのも魅力です。
(取材年月:2012年5月)
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