PROFESSIONAL
STORIES

Mybestpro Interview

防災エネルギーの視点で「安心」の供給を目指す

災害対応に精通した防災とエネルギーのプロ

藤井信太郎

藤井信太郎 ふじいしんたろう
藤井信太郎 ふじいしんたろう

#chapter1

暮らしの「当たり前」を維持したい

 私たちの暮らしに欠かせないガソリンや灯油といった石油エネルギー。普段は使えて当たり前と思っていますが、ひとたび災害が発生して供給が止まると、生活は立ち行かなくなります。復旧作業にも支障をきたします。「当たり前」のエネルギー供給を、災害時いかに維持できるか。その思いを社名に掲げた会社が福井県越前市にあります。

 「藤井防災エネルギー」は、4軒のガソリンスタンドを運営し、個人・法人への石油製品販売をはじめ、消防設備の新設・保守、防災用品の販売などを手がけています。いわば防災とエネルギーの総合商社です。その歴史は古く、なんと江戸時代初頭に菜種油を取り扱ったのが始まりだとか。石油製品を取り扱う法人組織として藤井商店が設立されたのは1966年。藤井家の第16代当主となる藤井信太郎さんは2015年、社長就任と同時に社名を藤井防災エネルギーに改めました。

 「石油という危険物を取り扱い、そのつながりから消防設備や防火・防災用品なども扱うようになりました。それらを関連付けると、災害時の対応やエネルギーの供給についてどうすべきか考えることになり、会社として取り組もうと社名に防災エネルギーを入れたのです。災害時のエネルギー供給は社会的なニーズがあるはずですし、日頃からしっかり体制を整えておくべきだろうと思いましたから」

 藤井さんの「読み」が確信に変わる出来事が起こります。2011年の東日本大震災でした。災害対応型給油所という堅牢で自家発電設備を備えたガソリンスタンドを持つ同社は、震災発生後、ガソリンや軽油を中心とした燃料・支援物資を東北地方に供給。東日本のライフライン復旧に尽力したのです。

#chapter2

災害時、「何とかしてもらえる」に応えるやりがい

 東日本大震災では、福島県の原子力発電所も大変な状況に陥りました。自衛隊からは、夜中に放射線防護服や防災資材供給の依頼が。すぐさま社員が全国のメーカーや問屋に掛け合い、数百着の防護服を翌朝までにそろえました。藤井さんは「大手企業だとボールを投げてもすぐ動くのは難しいでしょう。うちは自宅と本社が一体の小さな会社なので夜遅くでも即応しました。期待に応えられてよかったです」と振り返ります。

 一連の取り組みは「この会社に頼めば何とかしてもらえる」と、災害対応への信頼度を高めることになりました。2018年、「福井豪雪」とも呼ばれる記録的な大雪被害に見舞われた際は、各ガソリンスタンドで燃料切れを起こさず供給。一時1500台もの車両が立ち往生した国道の現場へも、福井県の要請を受けて除雪・復旧用資機材などを配送したそうです。

 災害時に必要なエネルギーを供給する責任について、藤井さんは「燃料を扱う業者として、最もやりがいを感じる点」と言います。無事に責務を果たせた要因については「実は長年培ってきたお客さまや地域との信頼関係が大きい」。そう力を込めます。

 「会社も豪雪被害を受けました。とにかく石油を切らしちゃいけない。でもスタンドに並ぶ車をすべて満タンにはできません。そこで数量制限をすることになり、スタッフがお客さまに頭を下げて納得してもらいました。お客さまにお願いを聞き入れてもらえるだけの仕事を、現場に立つスタッフが普段からしていると実感しました」

藤井信太郎 ふじいしんたろう

#chapter3

地域からの信頼を基にライフラインを支え続ける

 信頼関係はどんな業種にも必要です。長い歴史を持ち、地域に根差した企業ならばなおのことでしょう。

 「親子三代にわたり、うちのガソリンスタンドを使ってくれているお客さまが多いのです。消防設備点検や工事の部門では取引のある会社が、同業他社を紹介してくれてお客さまが増えており、本当にありがたいことですね」

 藤井さんは大学院修了後、東海地方で石油販売会社に勤務。経営者に不可欠な姿勢を学ぶことになりました。「営業の仕事をしたのですが、お客さまと世間話をしたり、悩みを聞いたりということが多かったのです。お客さまと向き合う時間を積み重ねることで信用していただき、大きな契約に至ったことがありました。勉強になりましたね」

 エネルギーと防災面でビジネスの幹を太くした上で、藤井さんは将来に向けて枝葉を伸ばす取り組みも始めています。レンタカーやカーリース事業に加え、「AI (人工知能)やVR(仮想現実)の技術をどう生かせるか、国内・海外のメーカーやエンジニアと常に連絡を取り合って構想を練っています」と、新しいビジネスにも前向きです。

 「お客さまと地域に常に貢献することができるように。お客さまの期待以上のものを提供できるように。うちと付き合って間違いじゃなかったと思ってもらえるように」

 誠実さと信頼をベースに、地域の人々の暮らしを支え続ける藤井さん。災害は起きてほしくはありませんが、万が一の時、ライフラインの一端を担ってくれる頼もしい存在です。

(取材年月:2021年7月)

リンクをコピーしました

Profile

専門家プロフィール

藤井信太郎

災害対応に精通した防災とエネルギーのプロ

藤井信太郎プロ

石油製品販売

藤井防災エネルギー株式会社

石油製品取り扱いから消防設備や防災設備の設置・メンテナンスまで、エネルギー関連事業を幅広く展開。東日本大震災や福井豪雪では公共機関へ石油を供給するなど、災害時のエネルギー供給の経験が強み。

\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /

掲載専門家について

マイベストプロ福井に掲載されている専門家は、新聞社・放送局の広告審査基準に基づいた一定の基準を満たした方たちです。 審査基準は、業界における専門的な知識・技術を有していること、プロフェッショナルとして活動していること、適切な資格や許認可を取得していること、消費者に安心してご利用いただけるよう一定の信頼性・実績を有していること、 プロとしての倫理観・社会的責任を理解し、適切な行動ができることとし、人となり、仕事への考え方、取り組み方などをお聞きした上で、基準を満たした方のみを掲載しています。 インタビュー記事は、株式会社ファーストブランド・マイベストプロ事務局、または福井テレビが取材しています。[→審査基準

MYBESTPRO