送電設備保守を通じて地域に「エネルギー」を届けるプロ
岸野綾子
Mybestpro Interview
送電設備保守を通じて地域に「エネルギー」を届けるプロ
岸野綾子
#chapter1
私たちの暮らしを支える電気は、発電所から変電所、そして家庭へと送られます。その途中で欠かせないのが送電線や鉄塔などの送電設備です。これらが安定して稼働するためには、日々の点検や保守作業が不可欠。その現場を支えているのが、秋田県の「東北用地測量社」です。代表の岸野綾子さんは、電力インフラを陰で支える責任を胸に、地域と共に歩んできました。
「送電線は山の中を通ることが多く、木の枝が伸びて線に触れると停電につながります。そのため、地権者の方に伐採の協力をお願いし、境界を確認しながら安全に作業を進めます。祖父の代からの信頼関係があるからこそ成り立つ仕事です」
同社は送電設備の定期点検や除草、巡視路整備のほか、送電線近くで工事が行われる際の立ち会いも担当。感電事故などを未然に防ぐための重要な役割を果たしています。
「やりがいは、社会を支えるインフラの維持に携われること。社員一人一人が誇りを持って業務に臨んでいます」
自然の厳しさと隣り合わせの現場では、安全対策が何よりも重要です。長年培ってきた知見をもとに、装備や作業手順を徹底。日々のコミュニケーションの中でベテランが若手へ技術を継承しています。
「最近はドローンも活用しています。危険な場所でも安全に調査でき、効率も上がりました。ただ、重機が入りにくい山林で作業を支えるのは、やはり人の力です」
社員同士が協力し、信頼関係を築くことこそが、安全で確実な作業につながっています。
#chapter2
1974年創業の同社は、岸野さんの祖父の代から続く地域密着企業です。岸野さん自身は短大の音楽科を卒業後、宝飾店やアパレル販売会社で勤務していました。
「宝飾店でもアパレルでも、どちらも販売を担当していました。ただ、デザインやPOP制作にも関わる機会があり、お客さまに『視覚的に伝える』ことが好きだったんです。今の仕事でも、経営理念やビジョンという『目に見えないもの』を、形にして発信するのが重要だと感じています」
2001年に家業へ入社。事務を担当しながら、現場にも積極的に足を運びました。「親族だからこそ、他の社員の何倍も努力しないと認めてもらえない」という思いがあったといいます。働くうちに、長年厳しい資金繰りが続いていた実状を知り、2006年に取締役として会社の建て直しに着手します。
「建て直しができたのは、電力関係の安定した仕事に支えられたことに加え、創業当時から変わらず現場を支えてくださった担当者や多くの人の存在大きいですね。社員同士は従業員というより家族のような関係で、それはそれで良さもありました。ただ、昔ながらのやり方のままでは時代に合わない部分も見えてきて、組織づくりを進めなければと感じたんです」
就業規則の整備や朝礼の導入、財務管理の徹底など、組織の基盤をゼロから再構築。そして2009年、代表取締役に就任します。「理念経営」を掲げましたが、現場で共に働いてきた社員の中には戸惑いもあったといいます。
「勉強したことを生かしたい一心で、『社長はこうあるべき』と力みすぎていたと思います。転機は自己開示でした。『私はこれに困っているから助けてほしい』と素直に伝えるようにしたら、社員が支えてくれるようになりました」
#chapter3
同社には、20代から70代まで幅広い年代の社員が在籍。中途採用では、異業種から転身した人も少なくないとか。食事会の開催や、日頃の感謝を気軽に伝えあえるアプリの活用、一対一のミーティングなど、コミュニケーションが深まる仕組みを取り入れています。社内組織が整ってからは、新卒採用にも力を入れており、若手が安心して成長できる環境づくりを進め、資格取得もサポートしています。
「技術だけでなく、人間的な成長も大切にしています。人が育つ会社でありたいんです」
2024年、同社は創業50周年を迎え、「Energy Next(エナジーネクスト)」という新たなスローガンを掲げました。これは、電気という「エネルギー」に加え、「心のエネルギー」を地域に届けたいという思いが込められています。
「社員や家族の幸せを大切にできる会社でありたい。その幸せが地域に循環していけば、きっと社会も明るくなると思います」
今後は、森林環境を守りながら人々が学び・体験できる場づくりや、安全作業技術の向上を伝える研修にも挑戦していきたいと岸野さんは話します。
「『山のよろず屋』的な存在として、地域の課題を解決できたら。自然と人が共生できる社会をつくることが目標です」
「見えないけれど確かにあるもの」を形にしていく。電気も、そして人の思いも。岸野さん率いる東北用地測量社は、次の50年に向けて、新たな「エネルギーのかたち」を描いています。
(取材年月:2025年11月)
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Profile
送電設備保守を通じて地域に「エネルギー」を届けるプロ
岸野綾子プロ
送電設備保守
株式会社東北用地測量社
送電設備の保守・用地調査などインフラを支える業務を、地域との信頼関係を軸に安全第一で遂行。「Energy Next」を掲げ、電力の安定供給を支えながら、人と自然が共生できる社会を目指しています
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