体だけでなく心の不調にも寄り添う鍼灸のプロ仁部翼

体だけでなく心の不調にも寄り添う鍼灸のプロ

仁部翼

不調のもとを見極め、痛みをほとんど感じさせないはりでアプローチ

　「体だけでなく心の不調にも、鍼灸が役に立ちます。体の内側から整えていくことで、メンタルにも良い影響をもたらします」と力を込めるのは、「たなごころ鍼灸院」院長の仁部翼さん。肩こりや腰の痛みといった慢性的な痛みや、生理痛や更年期など女性特有の悩みのほか、ストレスや不眠、うつ状態など心の不調にも対応しています。

　仁部さんは、はりが初めての人にもリラックスして受けてもらうことを重視。経絡（ツボ）にはりで刺激を与える手法や、刺さないはり「鍉鍼（ていしん）」を取り入れ、痛みをほとんど感じさせない施術を心掛けています。

　「不具合を感じるのは、体のどこかで問題が起こっているからです。問診や、脈やお腹など全身に触れて原因を探ると、多くのケースで内臓が疲弊しています。痛みや不調が現れている部位だけでなく、根本原因のある体の内側にアプローチして改善していきます」

　心の不調がある場合は、目指すゴールを定めてから取り組み、体とあわせて頭部にもはりを施します。頭部に刺激を与えると、ウトウトする状態になって緊張がほぐれ、心地よい眠りの感覚が得られるそう。
　「『引きこもりの状態を変えたい』『行動したい気持ちはあるのに体がついてこない』など、不安に感じていることや、どういう状態になりたいかをまずお聞きします。心の問題を訴える方でも、体にも不調のサインが出ていることは多いです。続けて通われるうちに、表情が明るくなったり、服装やメイクに気を使う様子が伺えたり、変化を目の当たりにするとうれしいですね」

乳幼児から始められる「小児はり」や、自宅でできるお灸のアドバイスも

　仁部さんは、乳児から小学生までの子どもに対する「小児はり」も行っています。やさしい刺激で自律神経や内臓機能に働きかけ、夜泣きや、疳の虫（かんしゃくなど）、便秘などの改善を導きます。
　「2歳から通われているお子さんもおられます。鍼灸は、薬に頼ることなく、時間をかけて本来持っている回復力や免疫力を高め、病気になりにくい体づくりを支えます。また、子どもであっても、日々の生活でストレスを感じているものです。施術中にコミュニケーションをとりながら、爪を噛む、髪の毛を触るなど、子どもの不安のサインを把握し、保護者の方にアドバイスをすることもあります」

　現在、女性の利用者が多く、リピーターやクチコミでの紹介が多いそう。仁部さんは、一度の施術で終わりにせず、定期的なメンテナンスを勧めます。
　「月に1回でも、ケアを続けることが大切です。東洋医学では、季節ごとに影響を受けやすい臓器があると考えられています。気候の変化が体に及ぼす影響は、みなさんが思う以上に大きいので、季節にあわせたはりで、バランスの良い状態を保っていただきたいですね」

　日々の健康管理に役立てられるよう、お灸やストレッチなど自宅でできるケアも積極的にレクチャーします。
　「当院でお灸の施術はせず、薬局などで買える市販のお灸をおすすめしています。ご自身で自分の体調をラクにする養生法を知っておくことは重要です。みなさんの生活の質を高めるお手伝いができればと、LINEで直接ケアの方法を伝えることもあります」

ケガの経験を原点に、一人一人に寄り添える鍼灸院を目指す

　仁部さんが鍼灸師を目指したのは、高校生の頃、野球部でケガをして鍼灸院に通ったことがきっかけでした。
　「当時、ケガだけではなく、メンタル面での不安も感じていました。鍼灸院でじっくり話を聞いてもらえたことが大きく、同じようにつらい思いをしている人の役に立てるようになりたいと思いました」

　専門学校で学んだ、「患部だけでなく全身を見る」との東洋医学の考え方に強く惹かれたという仁部さん。就職のため上京するも、「地元のために何かやりたい」という思いが強くなり秋田にUターン。鍼灸院を経て、2021年に「たなごころ鍼灸院」を開業しました。
　「納得のいく施術をするには、自分でやるしかないと思い、独立しました。専門分野を絞るのではなく、どんな相談にも幅広くお応えできる鍼灸院を目指しています」

　院名の「たなごころ」とは、漢字で「掌」と書き、〝手の心〟という意味も持つ言葉です。一人一人の悩みを受け止め、不調を改善するために心をこめて向き合いたいという、仁部さんの思いが込められています。
　「私の施術は、内臓の働きに作用するため、ご本人が思ってもいなかったところに良い変化が出ることも少なくありません。内臓の代謝が上がって、消化機能や自律神経が整うことで、太りにくくなったという方もおられます。鍼灸には、その方の〝ものの見方〟を変えるほど大きな影響力があると思っています。秋田のみならず、多くの方に鍼灸の魅力に触れてもらえるよう、これからも全力で取り組みます」

（取材年月：2023年10月）

体だけでなく、心のバランスも整える鍼灸の力を、悩んでいる人に届けたい

不調のもとを見極め、痛みをほとんど感じさせないはりでアプローチ

乳幼児から始められる「小児はり」や、自宅でできるお灸のアドバイスも

ケガの経験を原点に、一人一人に寄り添える鍼灸院を目指す

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