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つくし学園に来た時点で、もう「引きこもり」ではなくなります

不登校や引きこもり、発達障害の生徒の自立を目指す教育者

伊藤文敦

一般社団法人つくし学園・学園長伊藤文敦さん
生徒たちが生き生きと生活できるように、多方面からサポート

#chapter1

ひとりひとりが輝く、学びの場を提供

 つくし学園グループの学園長を務める伊藤文敦さんは「つくし学園しぜん農学校」、「生活改善 愛彩寮」、高校卒業資格取得とその後の進路をサポートする「津島キャンパス/愛西学習センター」の運営をはじめ、小中高生向けの学習塾、発達障害の子どもの学習支援を行っています。

 その中の「生活改善 愛彩寮」には現在中学1年生から34歳までが在籍。過去には小学生や短期で70歳の統合失調症の人が利用していたこともあるそうです。あえて年齢に区切りをつけず、家に引きこもっている人たちが社会へ一歩を踏み出すための場所として、愛知県はもちろん、九州や沖縄、広島、新潟など全国から入寮生を広く受け入れています。

 子どもの家庭内暴力で悩んだ親から連絡があり、家まで迎えに行くこともあるそうです。伊藤さんは「家から出てこの場所に来たことで、引きこもりではなくなる」と話します。引きこもりの問題は家庭の限られた空間だと、相互依存に陥って抜け出せなくなることも多いのが現実です。親元を離れて寮生活をすることで、お互いが自分自身を見直すきっかけにもなります。伊藤さんは「大事なお子さんを預かった以上は、親に負けないように家族以上の家族だ」という熱い思いで、学園の子どもたちとの日々を大切に過ごしています。

#chapter2

年齢の枠を超えた学びを提供し、基礎学力の充実を目指す

 寮生活では生徒たちは週に2回、当番を任されて約10人分の食事を用意します。これは単に調理方法を覚えるだけではなく、食事づくりを通して生きる力を育むことも目的のひとつ。そして、朝食の後は教室に移動して、それぞれの能力に合わせた学習に取り組みます。勉強の学び直しも可能で、引きこもりのまま年を重ねた人も小学生の内容からしっかり学ぶことができます。過去に6年間不登校で、高校生の時から入寮した生徒がいて、最初は作文を1行しか書くことができませんでした。しかし、学び直しをすることでA4用紙に2〜3枚の長い文章が書けるように成長して通信制高校を卒業後、希望の大学に進学したそうです。

 寮では通信制高校と提携していて、寮で生活をしながら高校卒業を目指すことが可能です。また、小中学生に関してはフリースクールという位置付けなので、在籍する学校の出席扱いとすることができます。大人向けには特別なプログラムを用意しています。長年、家に引きこもっていると、まず声を出すことが難しく、表情も固くなってしまうことが多いそうです。そのため、まずは本の音読やヨガや気功を交えた呼吸法など、発声練習に重点を置きます。そして内観法を取り入れ、まずは家族に感謝の気持ちを伝えることを大切にしています。この感謝の気持ちが社会に出た時に、より強く前に進むための原動力になると考えているからです。

 生徒の中には寮生活をしながら通信制高校に通い、アルバイトを頑張っている子も。伊藤さんは朝5時30分に寮を出発する生徒のために、手作りのお弁当を持たせています。忙しい日々の中で生徒のためにお弁当を用意するのは大変ではないかとの質問に、伊藤さんは「生徒が社会に一歩踏み出すことの嬉しさの方が大きい」と優しく微笑みます。

毎年2泊3日のキャンプなど自然体験にも力を入れています

#chapter3

農業や自然体験など、さまざまなプログラムで生活を改善していきます

 伊藤さんは大学生の時から将来は教育に関わりたいという思いが強く、幼稚園、小学校、中学校、高校までの教員免許をすべて取得していて、幅広い世代の指導が可能です。大学卒業後は自分だからこそできる教育を追求するために、小中学生向けの小さな塾からスタート。すると、塾生の中に不登校の子どもがいたため、その子たちのためにフリースクールを開くように。その後、子どもたちの成長を見守る中で、どうすれば子どもたちが自分で未来を切り開けるようになるかを模索し、今のカタチに辿り着きました。その中で、農業を取り入れることで社会と関わる1つの土台ができないか考えたそうです。「つくし学園しぜん農学校」は寮生や通いの生徒も農業に取り組んでいて、種まき、栽培、梱包、出荷まで担っていて学校給食での利用や産直、スーパーでも販売されています。

 また、自然体験も大切にしていて毎年2泊3日のキャンプは、生徒たちが楽しみにしている行事の1つです。最初、伊藤さんの元を訪れた時には表情がなかった生徒も笑顔が増えたり、声を出して笑ったり、朝起きて自主勉強をしたりと少しずつ変化が見られます。伊藤さんは物の見方を広げることを大切にしていて、本人の心の奥底にある本音を自分から話してくれる時まで優しく見守ります。自分の心の中を話す「転換期」が訪れると、見違えるように笑顔が増えていくそうです。

引きこもりは本人も家族もつらく、出口の見えない日々が続きます。だからこそ、家とは違う環境に身を置くことも選択肢の1つです。「引きこもりで悩んでいる人には諦めないでほしい」と伊藤さんは強く話します。伊藤さんが運営するつくし学園で、大切な子どもが生き生きと輝く未来を目指してみてはいかがでしょうか。

(取材年月:2020年12月)

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専門家プロフィール

伊藤文敦

不登校や引きこもり、発達障害の生徒の自立を目指す教育者

伊藤文敦プロ

教員

一般社団法人つくし学園

基礎学力の充実を目指し、年齢に関係なく小学生からの学び直しが可能です。また、寮生活や農業、自然体験など、生徒が社会に関わりを持って生きていくために個別のプログラムを用意して生活改善を目指します。

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