障がいなどで困難を抱える子どもの自立を支援する専門家吉田良子

障がいなどで困難を抱える子どもの自立を支援する専門家

吉田良子

ドローンやプログラミング、科学実験、書道など、さまざまな体験を用意

　「この10年余りで、発達障害のある子や、自分の居場所がなく寂しい思いをしている子が増えたと感じています。当方は、学校生活や日常の中で困難を抱えている子どもたちを迎え入れ、一人一人の能力を見いだしていくことを目標にしています」

　こう語るのは、「ChelseaStudio」の代表・吉田良子さん。2012年から愛知県小牧市で「チェルシーアートスクール」を主宰しています。教えているのは、カメラの扱い方や撮影の仕方、ドローンの操縦、ロボットプログラミング、科学実験、書道など。約100人の子どもに接し、それぞれの「好き」や「興味」を引き出してきました。

　「有名中学・高校への進学を目指す子や、社会的に自立する力を養う『療育』で訪れる子どもがいて、目的も個性もさまざま。障がいがあっても、好きなことや興味があることに対して、集中力が高い子が多いので、その特性を伸ばしていけるように、各種習い事を用意しています」

　学習面の困り事にも応え、授業で先生の説明を聞くだけでは理解できない子どもには、理科や算数の問題を出すことも。
　「実験道具などを使って具体的に手ほどきすると、楽しくなってどんどん知識を吸収していきます。小学生の時に解けなかった問題が、中学生や高校生になってから解けるようになることも多いんです」

　吉田さんのもとでは、体験を通じて探究心や創造性を育む「STEAM教育」の要素を取り入れているのも特長です。
　「文系や理系といった枠を超えて横断的に学び、課題を見つける力や解決する力を身に付けていくもので、教育現場でも採用されています」

子どもたちが心穏やかに過ごせるスクールを目指し、細やかにサポート

　クラスになじめないなど、多様な背景を持つ子どもたちを温かく受け止める吉田さん。登校拒否を続けていた小学生は、「字を書くのが好き」という理由で、書道教室に通うようになりました。ある時、ノートに「新しい自分、新しい道を見つけた」とうれしそうにしたためたそうです。

　「後になって、『書道との出合いがなければ、今の自分はなかった』と当時を振り返っているのも印象的でした。書くことで気持ちが救われたんでしょうね」

　心に闇を抱えている子どもたちが書道を始めると、とても味わいのある字をつづると言います。
　「自分の内なる感情をエネルギーに変えて表現しているのかもしれません。半紙に向かって、無心になって書き続けることでネガティブな感情が浄化され、心が落ち着いてポジティブになっていくのも影響しているように感じます」

　吉田さんは、子どもとコミュニケーションを取る時、無理に話を聞き出そうとはしません。相手の言葉にあいづちを打ちながら静かに受け応えをします。それが居心地の良さや安らぎにつながっています。

　「子どもたちが話したいと思った時にそばにいる。それだけで安心感を与えられるのではないでしょうか。多くを語らなくても、『今日の服装はかわいいね』『勉強を頑張ったね』と少し声を掛けるだけで、表情がぱっと明るくなって、自分からいろいろと話してくれます。どの子も毎日を精いっぱい生きていますから、みんなが心穏やかに過ごせるスクールでありたいと願っています」

放課後デイサービスや通信制高校のサポート校、ショートステイも準備

　「療育の場はあっても、自立や就労を後押しする中高生向けのプログラムを提供できる施設は不足している」と指摘する吉田さん。2024年からは、小学生から高校生までを対象にした放課後デイサービスと通信制高校のサポート校もスタート。ドローンやeスポーツなどを組み込んだカリキュラムを導入し、生徒が取り組みたい科目を履修すれば、高校の卒業資格が得られるシステムを構築しています。

　「サポート校は、障がいの有無にかかわらず通える場所です。不登校で全日制高校への通学が難しい子や、何らかの事情で高校に行くのをあきらめたり、中退したりした子、社会人などにも門戸を開きます。将来的には就職して働くまでの過程もフォローし、学童期から成人期までをトータルに支えたいと考えています」

　保護者に対しては、「子どもにすぐに結果を求めるのではなく、成長を長い目で見守ってほしい」とアドバイス。わが子を思うあまり、「あれもこれもできるようになってほしい」と多くを望んだ結果、家庭がぎくしゃくするケースも見てきたため「親も心の余裕を持つことが大切です」と呼び掛けます。

　「リフレッシュしたい時や、仕事で忙しい時などに子どもを預けられるショートステイも始めますので、遠慮なく当方を頼ってください。お子さんにどのような支援が必要なのか分からず、不安を感じている方も気軽にご相談ください。お子さんの可能性を導き出し、自分の力で人生を歩んでいけるよう、全力でお手伝いいたします」

（取材年月：2023年9月）

子どもたちの能力や可能性を引き出し、療育から自立へ

ドローンやプログラミング、科学実験、書道など、さまざまな体験を用意

子どもたちが心穏やかに過ごせるスクールを目指し、細やかにサポート

放課後デイサービスや通信制高校のサポート校、ショートステイも準備

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