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伊藤健司

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伊藤健司(いとうけんじ) / 研修講師

オフィスT&C

コラム

折れない心を育てるレジリエンス① ストレスとレジリエンス

2024年4月15日

テーマ:メンタルヘルス

コラムカテゴリ:メンタル・カウンセリング

新年度が始まりました。多くの若者が、新しいスタートを切る時期であり、我々講師にとっては、新卒関連の研修で多忙となる時期でもあります。
私はサラリーマンだった前職で社員教育の担当だったこともあり、新入社員研修に長年携わってきています。社会人としての心構えであったり、ビジネスマナーであったり、新入社員研修では「定番」のカリキュラムが大半を占めますが、近年になり、新しく取り上げられるようになったテーマもいくつかあります。
その中の一つが、「メンタルヘルス研修」「ストレスマネジメント研修」といったジャンルです。かつてはあまり取り上げられることのないテーマでしたが、今年も複数の企業から、新入社員研修の一環としての実施依頼をいただきました。新卒社員に伝えるべき知識として、認識される企業様が増えてきたようです。

先日実施した「新入社員向けストレスマネジメント研修」では「レジリエンス」についてお話をしました。レジリエンスについては、新入社員に限らず、広くビジネスパーソンに知っていただきたい概念ですので、今日から2回に分けて、「レジリエンス」のことを書きたいと思います。
(この文章は、2022年に北海道保育協議会様にご依頼いただいて「道保協ニュース」に寄稿した文章を、一部改訂したものです)
ストレス研修会場風景

折れない心を育てるレジリエンス

私たちは仕事と向き合うなかで、さまざまな体験をします。楽しかったり、成功したりといったプラスの体験もありますが、つらい体験や、困難な壁にぶつかるような状況も避けては通れません。むしろ、「マイナス体験の方が多いぞ」と感じられる方もいらっしゃるでしょう。
そういう困難な体験に遭遇した時、それを克服し、乗り越えて、成長しながら次のステップに進める人と、つらいこと、悲しいこと、ストレス、プレッシャーばかりにとらわれ、心が折れて前へ進めない人がいます。両者はどこに違いがあるのでしょうか。
このコラムでは、ヒントとなるキーワードとして、「レジリエンス」という言葉をご紹介します。

「ストレス」と「ストレッサー」の関係

 「ストレス」という言葉は、日常的によく使われる言葉です。皆さんも「今日はストレスたまったわー!」とか、「ストレス解消に遊びに行こう!」など、口にする機会があるのではないでしょうか。
仕事にはつきものともいえる「ストレス」ですが、もともとは「圧力」や「圧迫」などを意味する言葉です。ゴムのボールを指で押すとさまざまな形に変形します。その状態を「ストレス状態」といい、ストレス状態を生み出す原因である刺激(指の圧力)を「ストレッサー」といいます。ストレスはストレッサーによって生まれる歪みなのです。現代社会では、私たちのまわりには数多くのストレッサー(圧力)があります。圧力によって、ゴムボールを指で押した場合と同じように、私たちの心や身体にも歪みが生じます。その圧力が強すぎたり、長く続きすぎたりすると、私たちの心や身体は悲鳴を上げ、病気になってしまいます。けれどもストレスは十人十色で、同じストレッサーを受けても平気な人もいれば、大きな影響を受けて、いわゆる「心が折れて」しまう人もいます。個人によってストレス状態が異なるわけです。
よく「うちの部長のキツイ言い方がストレスで……」というような表現をすることがありますが、部長のキツイ言い方は「ストレッサー」であって、その圧力で凹むのか、凹まないのか(ストレスが発生するかどうか)は、ボール側の要因も大きいといえます。

私はこの「ストレッサー」と「ストレス」を分ける捉え方を「便利な考え方だな」と思います。「部長のキツイ言い方がストレス」と考えてしまうと、問題の解決は難しいものになります。部長の言い方を変えたり、ましてや性格を変えることは困難です。現実的に不可能と言ってもいいでしょう。
ところが、「ストレスは部長の言葉を受け止める自分の心」と切り離して考えると、少し解決に近づける可能性が出てきます。自分のメンタルにとって、こちらの考え方の方が建設的だと思います。
レジリエンスとは

レジリエンスとは

さて、「ストレス」という言葉の説明をしましたが、一方本日のテーマである「レジリエンス」という言葉は、「回復力」「復元力」を表す言葉です。アメリカ心理学会では、「逆境やトラブル、強いストレスに直面したときに、適応する精神力と心理プロセス」と説明しています。つまりレジリエンスとは、ストレスと「対」になる言葉です。ストレスをマイナスの状態とすれば、ストレス状態から回復するプラスの力。ストレス状態を持ちこたえ、圧力を跳ね返し、もとの「丸いボール=健全な状態」に戻る力。それが「レジリエンス」のもつ意味合いです。レジリエンスも個人差があり、ストレス状態から立ち直る力が強い人と、なかなか立ち直れない人がいます。これはどこから来るのでしょうか。生まれつきの性格によるものなのでしょうか。
レジリエンスのことを「心の筋肉」と表現することがあります。筋肉は誰にでもありますが、マッチョの人もいれば、ガリガリの人もいます。筋肉がつきやすい体質の人も、つきにくい体質の人もいます。ただ、正しく鍛えれば必ず筋肉は増えますし、筋力は強化されます。私はレジリエンスも筋肉と同じで、鍛えることによって強くなると考えています。

次回のコラムでは、「レジリエンスの鍛え方」について基本的な考え方と、代表的なスキルであるリフレーミングについてお伝えしたいと思います。
初出:北海道保育協議会発行「道保協ニュース No.117」(2022.11.30)

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伊藤健司

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