子どもの〝自分で生きる力〟を育む不登校支援の専門家豊田毅

子どもの〝自分で生きる力〟を育む不登校支援の専門家

豊田毅

異年齢交流などで自己肯定感を高めながら、〝生きる力〟を育てる

　JR北赤羽駅から徒歩1分の場所にある、「フリースクール滝野川高等学院」。「どんな子も来られる場所です」と話すのは、代表の豊田毅さん。不登校経験や年齢に関係なく入校でき、学校復帰後も利用可。現在、小中高校生を中心に、大学生や社会人が訪れる日もあります。

　午前は学習、午後はスポーツやボードゲームなど自分の好きな体験活動を選択。異年齢の子どもが一緒に過ごすことで、自然とお互いの良さを認め合い、自己肯定感の向上にもつながるそうです。
　「同学年の中では、〝できないこと〟が目立ちやすいですが、年齢が違えば差があって当然。年上は頼られ、年下は褒められやすく、関係性が築きやすくなります。スタッフが間に入り、最初のきっかけづくりをサポートすることで、次第に交流が深まります」

　豊田さんは、「学校に戻ることがゴールではなく、自力で生きていく力を育てることが目標」と語り、将来の選択肢を広げる支援を充実させています。在籍校での出席認定の実績も多く、通信制サポート校として高校卒業資格の取得も可能。教室で模試や検定を受けられるほか、併設の学習塾「浮間ラボ」で受験準備にも対応します。
　「学校復帰後も勉強や進路の悩みは続くので、気軽に立ち寄れる場所として学習塾を作りました」

　開校以来、進路決定率が100％という実績も、全員の進路が決まるまで伴走するからこそ。オープンキャンパスの同行など手厚くフォローします。
　「一人の生徒にじっくり向き合えるので、普段の会話の中で本音を引き出し、本人の適性や希望に合った進路を見極めながらアドバイスできます」

全国にフリースクールを増やすため、スタートアップ支援やFC展開も

　豊田さんのもとでは、これからフリースクールを開校したい人に向け、経営コンサルティング「スタートアップ支援プログラム」も提供。培ってきたノウハウを、3カ月で伝え、見学や実地研修、集客支援など幅広くサポートします。

　事業を始めた理由について、「不登校に悩む子どもたちの居場所を全国にもっと増やしたいと考えています。開校から6年間で積み上げてきた内部の情報を共有し、サポート終了後も〝同志〟として緩やかにつながれたら」と話します。

　支援先の一つである埼玉県の学習塾が、事業拡大の一環でフリースクールを2025年4月に開校しました。また、同年6月から、フランチャイズコースもスタート。3カ月の支援後、兄弟校として独自に運営できます。

　経営のポイントになる生徒募集については、継続することが重要とアドバイスを送ります。
　「不登校の子が近隣に住んでいるとは限らず、新設校に子どもを通わせることに不安を感じる保護者も多いです。すぐに成果を出すことは難しいですが、少しずつ実績を積むことで信頼が高まります」

　〝勉強をしたい〟〝友だちがほしい〟〝生活リズムを整えたい〟などフリースクールに来る目的はさまざま。学校と家庭の間にある、第三の居場所としての役割の大きさを実感することも多いと言います。
　「学校に復帰した後も、週1日はここで充電したい子や、籍は残しておきたいという子もいます。『この場所に出合えたから子どもが生きられた』と感謝されるなど、ご家族の切実な思いに触れることも多いですね」

15年にわたる不登校支援の経験から、「なんとかなる」と伝えたい

　豊田さんは、三重県立高校を経て、2011年に、不登校支援に力を入れる私立英心高校へ。生徒や保護者のカウンセリングなどに携わり、進路指導では3年連続で進路決定率100％を達成しました。
　「当初は、〝不登校＝心の不調〟というイメージでしたが、実際には体力の低下も著しく、驚きました。せっかく学校に来ても疲れてしまうという悪循環を解消しようと、体力づくりとして野球チームを作りました」。不登校経験のある生徒らが集まった高校野球チームは、予選大会に出場し話題にもなりました。

　経験を積むうちに、学校という枠での支援に限界を感じ、フリースクールの立ち上げを決意したと言います。
　「高校3年時に伸び始める子も多く、社会に出る準備が十分できない上に、卒業後のケアにそこまで力を入れられない。もっと長いスパンでサポートできる場をつくりたいと思いました」

　活動の場を東京に移し、2019年、フリースクールとサポート校「滝野川高等学院」を設立。将来的に通信制高校の開校も視野に入れています。

　15年間、何百人もの子どもたちと関わってきた豊田さんが伝えたいのは、「なんとかなる」というメッセージです。
　「保護者の方には、居場所探しを楽観的にとらえてほしいですね。一つの場所で合わなくても、また次があります。これまで関わってきた子はみんな、なんとかなっています。子どもは繊細で、親の不安は伝わるので、気長に本人に合う場所を見つけましょう」

（取材年月：2025年5月）

一人一人が自由に将来を描けるようサポートするフリースクール

異年齢交流などで自己肯定感を高めながら、〝生きる力〟を育てる

全国にフリースクールを増やすため、スタートアップ支援やFC展開も

15年にわたる不登校支援の経験から、「なんとかなる」と伝えたい

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