視覚障害者の成婚と将来にわたる幸せづくりを応援する専門家
内山亜希
Mybestpro Interview
視覚障害者の成婚と将来にわたる幸せづくりを応援する専門家
内山亜希
#chapter1
「画一的な認識にとらわれず、ありのままのあなた自身が望む幸せな家庭を」。そう呼び掛けるのは、人生を歩めるパートナー探しをサポートする「全国視覚障害者結婚相談所」の内山亜希さん。
視覚障害を持つ人に向けて、データ検索によるマッチングのほか、仲人同士が会員を紹介し合う“手組み会”、オンラインでの婚活パーティーといった幅広い出会いの場を提供。
登録者数約9万人を誇る結婚相談所連盟に加盟する「ふぁみまり」も運営し、全国規模のネットワークを活用して良縁を紡いでいます。
「当方は『婚活したくても相談所の登録自体が難しい』『これまで努力しても出会いに結び付かなかった』という方のお力になります。視覚障害者支援事業所で相談員を務めた経験や、婚活・妊活・子育てといった私自身の実体験に基づいて、現実的できめ細かな助言や提案をいたします」
時間をかけてヒアリングし、人となりや結婚生活への思いをしっかりと受け止める内山さん。
登録手続きの書類をそろえたり、個性や印象が伝わる紹介文づくりやプロフィール用の写真撮影を手伝ったりと、準備段階から支え、その人らしい魅力を引き出し、自信を持ってトライできるよう背中を押します。
「視覚障害者に特化したマッチングサービスの存在を全国に向けて紹介し、当事者だけでなく、準備や交際、成婚のプロセスに関わる人や事業者にも、どのような配慮が必要かを啓発できればと、SNSなどでも情報を発信しています。縁結びだけではなく、お付き合いから入籍、新生活、子育てといった将来にわたる幸せづくりを応援しています」
#chapter2
内山さんは福祉系の大学を卒業、盲ろう者の指点字通訳者として活動したのち自治体の職員に。街づくりの部署や生活保護のケースワーカーに従事し、生活に支援が必要な人々の傍らで日常を支えてきました。
「社会福祉への高い志に突き動かされてきたように思われそうですが、実は小学校時代、友人に誘われるまま入ったのが点字クラブ。大学時代、別の友人と共に入部した点字研究部では、先輩の勧めに応じて有償ボランティアとして盲ろう者のガイドヘルパーに。流れに逆らわずにいた学生生活の一部にすぎなかったのです。視覚障害を持つ人も含め、出会った多くの友人たちと日常の悩みごとなどを分かち合いました」
恋愛結婚からの離婚、30代半ばで結婚相談所を活用しての再婚、不妊治療で授からず一度は諦めたものの、翌年に長女出産、2年後には長男・次男を双子で出産と、山あり谷ありの日々。その時々の状況に真摯(しんし)に向き合い、時には柔らかく受け流しながら、譲れない思いを一つずつかなえてきた内山さん。
必ずしも思い通りにいかない人生の折節につけ、たびたび耳にしてきた生きづらさを抱える友人たちのつぶやきが、小さな気づきとなって自身の中で形を成します。
内山さんが切望してきた『子どものいる家庭を築くための縁結び』を目指し、最初に立ち上げた『ふぁみまり』で成婚第1号となったのは、「DINKs」(共働きで子どもを望まないカップル)だったそう。
「お二人の縁を通じて「望む誰もが、幸せな家庭を持つことができる世の中にする」という使命を見つけたように思いました。視覚障害者の方からの問い合わせも次々と寄せられ、これまでの障害者支援の経験を生かすことが世の中に求められているのではと考え、翌年には視覚障害者専門機関として独立させたのです」
#chapter3
「育児中でも一人の生活者としてなら誰かの役に立てるかもしれない」と行動することを続けてきた内山さん。原動力となっているのが、障害者支援の職務中に遭遇したある出来事だそう。
「盲ろうの支援対象者の登録先に電話で連絡したところ、お隣に住む方が出られ、その足で当人のお宅に駆けつけて、用件を指で手のひらに記すなどして伝えてくれたのです。自然で的確な行動こそ『気負わず、同じ街の住民としてできることをする』という、福祉コミュニティーの原点だと思いました」
フラットで柔らかな印象ながら、ありのまま受け入れるおおらかさと、困難に対しては決してあきらめない芯の強さを持ち合わせた内山さん。
障害の有無だけでなく性的マイノリティー、あるいは結婚生活に子どもを持つこと以外の価値を求める人など、多様な考え方やアイデンティティーを有する人からも相談が寄せられているそう。
一人一人の幸せな門出に向けて伴走する先には、新たな展望も描きます。
「例えば同じ障害を持つパートナーとの結婚は、お互いを理解し合える一方で、生活面では不安もあるでしょう。二人が暮らしを営んでいけるように、先輩によるメンター制度を設けて、婚活はもちろん、毎日の家事・育児の工夫や社会との関わり方など、リアルなアドバイスができるシステムづくりを検討中です」
夢は、旅行がてら縁を取り持った夫婦のその後を見届けに行くこと。「旅路は全国津々浦々まで続き、喜びに満ちた長い道のりになることを願っています」と笑顔で語ります。
(取材年月:2025年3月)
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Profile
視覚障害者の成婚と将来にわたる幸せづくりを応援する専門家
内山亜希プロ
結婚相談所
全国視覚障害者結婚相談所
豊富な登録データと福祉対象者の支援員として生活支援に携わった知見を活用し、視覚障害者に特化したマッチングサービスを展開。実質的な手続きの他、実体験に基づき結婚後の妊活・子育てなどの不安にも寄り添う
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