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1969年の創業以来、歴史ある神社仏閣の銅板屋根を葺き、日本の造形美を継承

神社仏閣に美しい曲線を施す銅板屋根葺き工事の専門家

石井太一郎

石井太一郎 いしいたいちろう
石井太一郎 いしいたいちろう

#chapter1

職人歴約40年のベテランも在籍し、技術力を最大の強みに国内外で施工

 つややかな赤橙色から落ち着いた茶色、黒みがかった褐色、そして青みを帯びた緑色「緑青(ろくしょう)」へと月日とともに色を変える銅板。軽量で、耐久性と耐火性を備えていることから、社寺や城郭の屋根材に重宝されてきました。

 「当方は1969年に創業して以来、主に神社仏閣の銅板屋根工事を手掛けてきました。この道40年を超えるベテランをはじめ、熟練の職人が在籍しており、緻密に仕上げる技術力が最大の強みです」

 そう話すのは、東京都豊島区の「望月板金」の2代目・石井太一郎さん。明治神宮や靖国神社、太宰府天満宮、聖護院、皇居、国立歴史民俗博物館など2000以上の由緒ある建物で屋根葺きを請け負ってきました。海外での施工実績もあります。

 二十余年の板金工事歴を持つ石井さんは、銅板は加工しやすいのが大きな特徴だと言います。「金属の中でも柔らかい素材のため、薄く伸ばしたり、曲げたり、下地などの形状に合わせやすく、細かい模様も詳細に表すことができます。屋根の頂点から軒先に向かってしなやかに反り上がる社寺独特のラインも、繊細に描き出せるのが魅力です」

 石井さんらは、連綿と続く日本の造形美を継承。創業から半世紀がたち、かつて施した屋根の葺き替えを頼まれるケースも珍しくありません。「当社一の大ベテランが、まだ見習いだった頃に従事した現場で、お客さまとの思い出話を聞いていると、長年にわたりこの会社が愛されてきたんだとうれしくなります」

#chapter2

型枠大工から板金加工の道へ。変化に富む銅板に魅了され2代目に就任

 1977年に八王子市で生まれた石井さん。もとは基礎を作る型枠大工をしていましたが、20歳を過ぎた頃、「高い屋根の上で働くのは気持ちがいいぞ」と友人に誘われ、屋根工事の職人になりました。

 数多くの現場を経験し、技能を身に付けますが、2002年に作業中の事故で前十字靭帯を断裂。仕事はもとより、日常生活にすら支障を来す大けがでしたが、結果的に石井さんを銅板加工の世界へと導きました。

 「屋根に上れなくなったためガルバリウム鋼板の加工を担当するようになり、銅板と出合いました。柔軟性があって扱いやすうえ、経年変化に富む銅板に夢中になりましたね」

 2007年には、スキルを高めたいと東京都板金工業組合が運営する職業訓練校に通い始めます。「銅板を用いて壁面を装飾する錺葺(かざりぶき)という技術があり、それを学びたいと思い入学しました。週1の講義を2年間受講し、卒業後は個人事業主として独立。銅板を中心に屋根の葺き替えを行う『銅銅技術』を立ち上げました」

 独立した時点では「望月板金」を知らなかったという石井さん。ある日、付き合いのある問屋から紹介され、依頼を受けるようになったことが縁で、2017年に社長に就任しました。

 「当時、望月板金が大きな案件を抱えていて、協力会社も集まっていましたが、先代が体調を崩してしまいました。建設業許可などの観点から簡単に元請けが代わるわけにもいかず、社内にいたのは職人気質の方ばかりだったので、外部の私に打診が来たのです」

石井太一郎 いしいたいちろう

#chapter3

時代に合った神社仏閣のあり方を提案し、技術を伝え次世代の育成にも注力

 2代目として会社を継いだ当初は、「戸惑いと重圧がありました」と振り返る石井さん。支えてくれたのは、他でもない同社の職人たちでした。

 「職人として生きたいがゆえに社長に就かなかっただけですから、外から来た私のことを快く受け入れてくれました。代表になる前から一緒に仕事をしていたので、私にとっては兄弟子のような存在ですし、個人事業主の頃は全ての工程を一人で担っていたので、施工の段取りを話し合うときは心強さを感じます」

 頼もしい仲間とともに、今後は「時代に合った神社仏閣のあり方を提案していきたい」と語ります。「最近は一人の宮司さんが複数の神社を兼務していたり、檀家が減り、金銭面に課題を抱えていたりするお寺さんも少なくありません。建物を末永く維持していくための施工内容や金銭対策を一緒に考え、実現してゆくお手伝いがしたいのです」

 さらには技術の伝承にも注力。次世代を育成する第一歩として、銅板加工の体験工房を2021年に始めました。

 「銅板をたたいて鬼瓦のような画を作り出す鬼打ち出しの技法や、亀甲型やひし型のピースで江戸文様を組み上げる錺葺など、表現や細工の奥深さを多くの方に知っていただくことが目標です」

 石井さんは東京都板金工業組合の理事を務め、職業訓練校の指導員として教鞭をとっています。「自分が学んだ場所で教える側になるのは感慨深いものがあります。年月を重ねるごとに美しさを増す銅板を未来につなげるため、伝統の技を伝えていきたいですね」

(取材年月:2024年6月)

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石井太一郎

神社仏閣に美しい曲線を施す銅板屋根葺き工事の専門家

石井太一郎プロ

板金工事業・屋根工事業

有限会社望月板金

1969年の創業以来、明治神宮や靖国神社、太宰府天満宮など2000以上の神社仏閣の銅板屋根葺き工事の実績を持つ。銅板職人歴40年を超えるベテランをはじめ、熟練の職人たちによる技術力が最大の強みです。

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