人間工学に基づいた商品企画・働き方のアドバイザー
伊藤勝弘
Mybestpro Interview
人間工学に基づいた商品企画・働き方のアドバイザー
伊藤勝弘
#chapter1
「競争が激しい現代において、競合他社と差別化を図れる商品をリリースして業績を上げたい、自社のブランド力を高めたいという事業者さまのお力になります」と語るのは、東京都を拠点にアドバイザーとして活動する伊藤勝弘さん。
人間の動作などから使いやすさを追求する人間工学の観点と、オフィス家具メーカーで長年勤めた経験をもとに、付加価値の向上につながる商品開発をサポートしています。
人間工学には、ヨーロッパ由来の「エルゴノミクス」と、米国の「ヒューマン・ファクター」の二つの流れがあると伊藤さんは説明します。
「ヨーロッパの研究は労働安全衛生的な流れからきており、労働と健康の関わりから体に合わせたものづくりを重視。これに対して米国の研究はユーザーインターフェース領域で、計器の見えやすさや操作の分かりやすさなど、認知特性を考慮した作業の効率化を重視します。幅の広い概念ですが、自動車のテールランプの光り方や電車のつり革の形状など、身近なものにも取り入れられ、商品の使い心地を担保する上で有効な考え方です」
マーケットの分析からプロモーションまで伴走支援する伊藤さんのもとには、さまざまな企業から依頼が寄せられます。
「私は学者や先生でもなければ、理論を構築するような立場でもありませんので、プロジェクトメンバーの一人として、第三者の目線を織り交ぜたアイデアの提供を心掛けています。人間の特性・五感とお客さまが描くコンセプトを融合させ、ヒット商品を生み出すお手伝いをいたします」
日本人間工学会が認定する人間工学専門家の資格も取得し、体に優しいワークスタイルも提案。人事・総務の担当者に向け、働きやすい環境づくりや従業員が疲れないデスク・椅子の選び方について指南したり、セミナーを開いたりしています。
#chapter2
伊藤さんは25年にわたってオフィス家具を展開する会社に勤務。主に商品企画、開発、マーケティングに従事します。
「例えばオフィスチェアの開発では、座面や背もたれの着座感などを研究。製品に落とし込むにあたっては利用者の声を参考にするのはもとより、大学などの研究機関と提携することもありましたね。カタログや販促物のディレクションも担い、商品の見せ方など効果的なPRについても日々模索しました」
キャリアを積むうち、特定のメーカーにとらわれず、客観的な立ち位置で身に付けたスキルを生かしたいと考え、2015年に独立します。
フリーランスになり手掛けた案件の一つが、働く女性向けのバッグとパンプス。アパレルメーカーの要請を受け、快適性・安全性を兼ね備えたアイテムづくりに取り組みました。
「市場調査の結果、通勤中は手でバッグを持つよりも肩に掛ける女性が多いことが分かり、肩に食い込みにくいようストラップの幅を広げました。また、衣服との摩擦を抑えるため底をブーメランのように“く”の字状にデザイン。パンプスは、姿勢、健康、快適性を考えたインソールやエレベーターなどのすき間に挟まらないようにヒールを太くし安定感を出しました」
幼い子どもが遊ぶボール状のおもちゃでは、なめても誤飲しない硬さや大きさにするほか、衛生面を考慮しアルコール消毒できる素材を採用しました。
「長い場合は年単位でプロジェクトに携わる場合もあります。使い勝手がよく、ストレスのない商品は需要が高いので、ぜひ当方の知見をご活用ください」
#chapter3
伊藤さんは人間工学に基づいた労働環境の改善にも注力。「ワーク・アーゴノミクス」と呼ばれるもので、体に負荷をかけない椅子や机の条件、目の疲労を和らげるパソコンのモニターの明るさ、照明、自然光を踏まえたオフィス全体のレイアウトなどアドバイスは多岐にわたります。
「移動を妨げずスムーズな動線で、コミュニケーションが取りやすい配置も念頭にプランニングしています。新社屋への移転を予定している企業の担当者さまが、設計事務所やオフィス家具メーカーに発注する前にご相談されるケースも多いですね」
デスクワーク中心のIT企業でセミナーを頼まれた際は、従業員一人一人の座席を巡回して業務中の姿勢が正しいかをチェック。産業医とは異なる視点で、従業員が心身ともに健康に過ごし、職務に集中できるポジションなどを助言しました。
テレワークの増加を背景に、在宅勤務に関する悩みに応える取材を受けたことも。WEBマガジンの「ソフトバンクニュース」では、自宅で作業する際に首や肩、腰、目を痛めないための座面の高さ、モニターまでの距離などについて詳しく説明しています。
「コロナ禍でチャットツールが普及し、対面で会話する機会が減るなど、人々の働き方は目まぐるしく変化しています。また事務職に限らず、飲食・販売といったサービス業における労働負担の軽減も課題です。職場の生産性を上げるとともに、誰もが気持ちよく働き、人間力を高める環境や仕組みづくりをサポートしていきたいですね」
(取材年月:2024年6月)
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Profile
人間工学に基づいた商品企画・働き方のアドバイザー
伊藤勝弘プロ
商品企画・人間工学アドバイザー
人間工学の視点から使いやすく付加価値向上につながる商品企画開発をアドバイス。オフィスでの椅子、机、パソコン等の適切な使い方、レイアウトなど、働く人に優しいワークスタイル環境の提案で、企業を伴走支援。
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