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企業や自治体と手を携えて地域活性に取り組み、未来を共創する

行政や企業とつながる地域活性のコーディネーター

室田伸一

室田伸一 むろたしんいち
室田伸一 むろたしんいち

#chapter1

企画力と人のつながりを生かし、長期的な視野で地域の価値を創出

 人口減少や少子高齢化が進む地方において、地域に根差したビジネスで雇用を創出するなど、課題解決を通じて競争力を高めている企業に注目が集まっています。

 「豊かな自然や歴史遺産、特産品といった地域資源を活用し、町おこしや観光誘致に積極的に参画。地元を活気づけ、社会貢献することで自社の価値を高めることができます。私どもは、各地の企業や自治体と手を携え、地域を盛り上げたいと考えています」

 そう話すのは、阪急交通社が2020年に創設した「地域未来企画」の代表理事を務める室田伸一さん。大手旅行会社ならではの企画力やネットワークを生かし、観光プロモーションや地場産品の販売、生産者らとの交流会などを主軸に事業を展開しています。

 その地域ならではの魅力や強みを発掘・発信し、来訪を促す交流人口の拡大についてアドバイスをするだけでなく、対等な立場で一緒に事業を進めていくのが特徴です。

 「刺激的な人や熱意のある人に積極的にアプローチし、地位や肩書に関係なくフラットにお付き合いすることで、自分の引き出しを増やす努力をしています。一人の引き出しが10個だとしても、10人集まると100通りのことができるようになりますからね」

 旅先でマリンスポーツをしたり、グルメを堪能したり、体験を通じた“コト消費”が求められている昨今。室田さんは人や地域と共同することで、多種多様な価値を生み出そうとしています。

 「目先の利益にとらわれていては将来につながりません。長期的な視野で物事を捉え、わがまちの未来をともにつくっていきましょう」

#chapter2

観光と縁が浅い町と協定を結んで地域“超”密着を実践、ブリのグルメツアーなどで経済効果を生み出す

 室田さんは神戸大学を卒業後、1989年に阪急交通社に入社。ハワイ、モルディブなど南の島へのツアー企画を手掛け、マーケティングなどにも従事しました。2015年より地域のプロモーション関連の業務に携わるようになります。

 地方と関わりを深める大きなきっかけとなったのは、鹿児島県長島町。人口9000人足らずで、基幹産業は漁業と農業。観光と縁が浅かったこの町と2016年に連携協定を結び、人を呼び込むプランを打ち出していきました。

 「養殖ブリの生産が世界一であることに着目し、地元ブランドの『鰤王(ぶりおう)』のグルメツアーを企画したところ、1年で食事満足度1位に。第1次産業の売り上げ減少という課題に直面している中、町内に阪急交通社の支店を置いて地域密着の観光振興を図り、経済効果を生み出しました」

 当初は社内で連携について不安視する向きもあったそうですが、その後北海道や秋田県など他の地域とも同様の協定を締結。北海道東川町では観光に限らず、家具、米作りなど産業全般の伸展を後押し。山形市では定住施策の一環で、オーダーメード型の移住体験ツアーを開催しました。

 「当方では、人と人とが出会い、地域活性化のビジョンを創造する場もコーディネートしています。地域未来交流会では、官民や業種を問わず、さまざまな人たちがかっ達に意見や情報を交換し、東京タワーのイベントスペースを貸し切ったこともあります。つながったご縁から新たなビジネスが生まれていますよ」

室田伸一 むろたしんいち

#chapter3

コロナを機に事業領域の拡大を図り、日本酒オンラインツアーなどの新たな連携を模索

 「世界的に猛威を振るった新型コロナウイルスにより、私どもの業界は打撃を受けました。主要旅行会社の合計で月ベース4500億円ほどあった取扱額が2020年4、5月はゼロに。旅行そのものが悪と見なされ、観光産業が立ちゆかなくなる危機でした」

 逆風下の現状を嘆くのではなく、旅行業にとらわれずに事業領域を広げよう―。室田さんは当時の長島町の副町長・井上貴至さん、地理・歴史の教員として三十余年のキャリアを持つ澤内隆さんらに声を掛け、地域未来計画を設立しました。

 コロナ禍でツアーが催行できない中でも地域連携を模索。山形、高知、広島など全国の酒どころと、日本酒オンラインツアー「オトナの酒学旅行」を始めました。

 「蔵元の紹介動画を見ながら、事前に送付したお酒とおつまみを楽しんでもらう趣向です。コロナで業務がなくなったスタッフが撮影や編集をするなど、新たな役割を担うことで経験値が上がったと感じています。観光地との関係を深めることもできました」

 その他にも、株式会社ナビタイムジャパンとともに地域活性を目的として立ち上げた共同プロジェクト「ニッチャートラベル」では、その地域ならではのニッチなコンテンツをビジネス化するための独創的でユニークな新しい旅のカタチを作り続けています。

 「地域創生の部署を設けながら、すぐに成果や利益が出ないために閉じた企業も少なくありません。地元を元気にしたいという強い思いを持ち、『地域の未来を共創する』という私たちの理念に共感してくださる企業とともに歩んでいきたいです」

(取材年月:2024年5月)

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専門家プロフィール

室田伸一

行政や企業とつながる地域活性のコーディネーター

室田伸一プロ

地域活性コーディネーター

一般社団法人地域未来企画

地方自治体や企業とともに地域活性を展開。旅行会社ならではの企画力と多様な人とのネットワークを生かし、交流人口の拡大につながる事業を進め、地域の価値と未来をともに創っていきます。

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