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みやびで厳かな音色で壮大な歴史の世界にいざなう雅楽で、人生を彩り豊かに

沖縄で雅楽器の魅力を伝えるプロ

いちようこ

いちようこ いちようこ

#chapter1

子どもから大人まで、笙、龍笛、篳篥の奏法を基礎の「唱歌」から指導

 日本に古くから伝わり、「世界最古のオーケストラ」と呼ばれる雅楽。優美で気品にあふれ、みやびで厳かな調べは心を清らかにしてくれます。

 沖縄県中頭郡読谷村で「琴乃葉音楽教室」を主宰するいちようこさんは、雅楽を学べるレッスンを開催。沖縄県立芸術大学の講師として、専門的な観点から管楽器の笙(しょう)、龍笛(りゅうてき)、篳篥(ひちりき)の奏法を手ほどきしています。

 「雅楽の楽譜は五線譜と異なり、独自の読み方があります。最初は楽器を持たずに、唱歌(しょうが)と呼ばれる歌の練習を通じて譜面の読み方をお伝えします。楽器の音色を表す擬音・オノマトペや節回しなど、雅楽の基礎に慣れていきます」

 譜が読めるようになったら吹きたい楽器を選び、実技に入ります。三管すべて習うことも可能です。
 「竹を束ねたような形の笙は、両手で包み込むように持ち、根元の穴を指でふさぎながら息を吹き込んで音を出します。『合竹(あいたけ)』と呼ばれる奏法で和音を奏でることもでき、まるで雲の間から光が差しているような神々しい響きが特徴です」

 龍笛は短い横笛。別名「龍の声」と言われるように繊細で神秘的な音が持ち味で、メインメロディーを装飾する役割を持ちます。

 「篳篥は竹製の管に息を振動させるリードがついた縦笛です。音量が大きく、音色がユニークで目立つので、主旋律を担当することが多いです。朗々と吹きこなすと達成感を味わえます」

 小さい子どもからシニア層まで幅広い世代を迎え入れる、いちさん。分かりやすく、褒めて伸ばすアプローチで上達に導きます。

#chapter2

生徒のレベルやペースに合わせてレッスンし、イベントなどにも出演

 芸術大学音楽学部で雅楽の非常勤講師も務める、いちさん。生徒のレベルに合わせて段階的に指導するコツを熟知している点が強みだと言います。

 「音感に自信がない方や音楽の知識がない方も習得できるように、ゆっくりと生徒さんのペースに合わせてお稽古しています。進歩した部分は評価してさらに意欲を引き出します。うまく吹けない部分は改善点をアドバイスしながら、できるようになるまでじっくりと寄り添います」

 伝統的な音楽でありながら、近年はポップスとコラボレーションするなど新しい分野にも進出している雅楽。いちさんのもとには、「お気に入りの楽曲にチャレンジしたい」といった人たちも通い、レッスンに励んでいます。
 「実際に吹いてみると難しさを感じる方もいらっしゃいますが、曲として仕上がってくると『音が心地よい』『心が整う』と喜んでくださいます」

 練習の成果を発表する場も用意。施設やイベントで合奏を披露するなどしてモチベーションアップにつなげています。
 「生徒さんの希望で『パワースポット的な場所で演奏しよう』と、琉球王国の聖地である御嶽(ウタキ)に足を運び、楽器を奏でました。初めての試みでしたが、神聖な雰囲気と相まって貴重な経験でした。形式にとらわれず、自由に雅楽の可能性を広げていきたいと思います」

 生徒同士が交流を図れるように、ハロウィーンやクリスマスパーティーなども企画。世代を超えて友達の輪を広げる場所としても教室を活用してほしいと呼び掛けます。

#chapter3

大学の授業で雅楽の一体感に感動し、魅力を伝えるべく指導者の道へ

 3歳からピアノを学び、音楽とともに人生を歩んできたいちさんが雅楽と出会ったのは、芸術大学2年生のときです。
 「授業で合奏したときの一体感に魅了されました。雅楽には指揮者がいないので、みんなで呼吸を合わせて拍をとるのですが、タイミングがそろった瞬間に心に染み入る感動を覚えました。音の重なり合いも素晴らしく、一気に引き込まれました」

 卒業論文は平安時代の音風景をテーマに取り上げ、源氏物語に雅楽の描写があることや、貴族に欠かせない教養だったことなどに言及。大学院を卒業する際、恩師の勧めもあり講師に就任し、日本古来の音楽の魅力を多くの人に知ってもらおうと、個人としても指導を始めました。

 「音楽は、常に自己成長を追求できるのが醍醐味です。去年よりも今年、今年よりも来年と、努力した分だけ技術を積み上げていける点にやりがいを感じます。雅楽器を初めて吹いた方は音が鳴らない場合もあるのですが、『向いていない』と諦めず、こつこつと取り組めば成果となって表れますし、壮大な歴史に培われた世界観を味わってもらえると思います」

 教室の生徒と一緒に他の雅楽グループと共演する機会も増えているそうで、今後は自身で団体を立ち上げ、活動の幅を広げていきたいと話します。

 「祭礼などに用いられてきた雅楽器は日本人の琴線に触れ、年齢を重ねても長く楽しめます。美しい音色で心を癒やし、いにしえの時代にいざない、暮らしを豊かに彩ってくれますので、ぜひ体験にお越しください」

(取材年月:2024年10月)

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専門家プロフィール

いちようこ

沖縄で雅楽器の魅力を伝えるプロ

いちようこプロ

音楽指導者

琴乃葉音楽教室

沖縄県内で雅楽器の指導をしています。芸術大学の講師としての専門性を生かし、生徒のペースに合わせて教えます。できたところはほめ、吹けないところはじっくりと寄り添いながら上達に導きます。

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