犬と人が自然に楽しく暮らすためのドッグトレーニングのプロ藤川勇

犬と人が自然に楽しく暮らすためのドッグトレーニングのプロ

藤川勇

犬にストレスを与えず、人と暮らすための術を教える

　動物にとって、“人間に飼われている”というのは自然な状態ではありません。人間が暮らしの中で行動を制限されて窮屈に感じるように、犬にとってもそれは同じことだといえるでしょう。

　「犬が吠えたり、噛みついたりするのには、必ず理由があります。それを頭ごなしに叱りつけて止めさせるのは、本当のしつけではありません。犬がどうしてそういう行動をするのかを理解して、その原因を取り除いてより望ましい行動を教えてあげることが、犬と人が一緒に生きていくための第一歩です」

　そう話すのは、ドックスクール「the Beach Dog（ビーチドッグ）」のドッグトレーナー・藤川勇さん。藤川さんは、米国でカウボーイをした経験から、「犬と人がともに生きるためには、どうあるべきか」を考えるようになったといいます。

　「カウボーイとして牧場で働いていたとき、犬は牛や馬を飼育するための人間のパートナーでした。牧場で、犬が当たり前のように自分たちと行動し、のびのびと走り回っているのを見て、自分の中にあった『犬と暮らす』ということへの価値観が大きく変わりました」

　動物と人のあり方を学んだ藤川さんは、帰国後、準備期間を経てドッグスクールを立ち上げました。

　「簡単にいえば“犬のしつけ教室”です。一番大切にしているのは、『犬と人が幸せに暮らすための術をやさしく教える』ということ。当たり前のことですが、犬は誰かに教えてもらわないと、その術を知ることはできませんし、人も犬との暮らし方を知っているようで知らなかったりします。また、”しつけ”と称して苦痛や恐怖を犬に与え、大きなストレスになってしまっていることも多々あります」

犬を“本当の”家族の一員として迎え入れる

　藤川さんのスクールには、「すでに犬を飼っていて困っていることがある」「犬を飼い始めたばかりで、どうしつけをすればいいのかわからない」あるいは「これから犬を飼いたいので、上手な飼い方を教えてほしい」と、さまざまな相談が寄せられています。

　「ひもにつながれた散歩もケージの中に入れられるのも、車での移動もシャンプーも、犬にとっては自然なことではありません。だから私たち人間が、これらが決して怖いことではないと教えてあげる必要がある。反対の言い方をすれば、しっかりと教えてあげれば、犬はきちんと理解してくれるのです」

　せっかく犬を飼うのなら、何となく飼うのではなく、「どうすればお互いがよりよいパートナーになれるのかを考えることが大切」と藤川さん。さらにこんな話もしてくれました。

　「犬を自分の家族の一員だという人は多いですが、家族旅行に犬を連れていく人は少ないでしょう。そこにはいろんな事情があるのでしょうが、本当の家族なら、できれば連れていってあげてほしいですよね」

　「もっと犬と一緒にいろんな体験をしてもらいたい」という思いからthe Beach Dogでは、定期的に“わんわんウォーキング”というイベントを開催。陶芸やコンサート、シーカヤック、登山、旅行など、普段なかなか犬とは一緒にできないことを、犬と一緒に体験することができます。そのイベントは現在85回（2021年3月時点）を数え、100回目には、「みんなで海外旅行に行こう！」という計画もあるそうです。

佐世保市を“日本一動物にやさしい街”に！

　藤川さんのもとでは、人間と一緒に暮らすために必要な“社会化トレーニング”を行った犬の販売もしており、今でも全国の飼い主とネットワークがあります。中には、藤川さんとの出会いからドッグトレーニングに目覚め、“犬のトレーニング”について書いたブログで、全国トップクラスのアクセス数を誇っている人もいるそうです。

　ドッグトレーナーとして10年以上の実績を持つ藤川さん自身も、佐世保市が運営するドッグランの開発に携わったり、企業から福利厚生の一環としてドッグトレーニングを依頼されたり、有名ファッション誌に取り上げられるなど活動の幅も広がってきました。

　「以前は“動物愛護”という言葉でしたが、最近では“動物福祉”といって動物の行動を理解することで、心理学的な幸福感を実現することが重視されています。この“動物福祉”という考え方をもっと広めていきたいですね」

　そんな藤川さんには、一つの目標があります。

　「雑誌などで見かける“街のランキング”で、佐世保市を“日本一動物にやさしい街”にできないかと考えています。例えば欧州では、飲食店や公共交通機関でも、当たり前のように人と犬が一緒にいる光景を目にします。そこには“動物禁止”の看板などは、一切ありません。現地の人は、『連れて行っていいかどうかの判断は、個人でするものだ』といいます。いつか日本でも、それくらい“動物と暮らすのが当たり前”になればいい。佐世保市をそのモデル都市にしていきたいのです」

　コロナ禍により癒やしを求める人が増え、ペットブームが起きているそうです。ますます家族の一員として迎えられることが増えた“犬”。藤川さんのようなドッグトレーニングのプロの指導を受けることで、少しでも犬の気持ちを理解できる人が増えればと願います。

（取材年月：2021年3月）

犬は犬らしく。人は人らしく。共に生きるためのパートナーとして

犬にストレスを与えず、人と暮らすための術を教える

犬を“本当の”家族の一員として迎え入れる

佐世保市を“日本一動物にやさしい街”に！

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