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ドローンでの散布やICTによる自動化で、農作業の効率化・負荷軽減に貢献

ドローンと自動化技術によるスマート農業のプロ

片桐剛

片桐剛 かたぎりたけし
片桐剛 かたぎりたけし

#chapter1

ドローン操縦の有資格者を擁し、教習・販売・メンテナンスと一貫したサービスを提供

 「民のかせぎも豊かにて 五穀の実らぬ里やある」と、県歌「信濃の国」で歌われるように農業が盛んな長野県。とはいえ他の地域と同様に、農家の高齢化・後継者不足は深刻です。
 「ドローンと自動化技術でスマート農業を普及させ、農作業の効率化と労働負荷の軽減に貢献します」と話すのは、長野県飯島町の「wave」代表の片桐剛さんです。

 「水稲の栽培において、暑い時期に重たい肥料を背負い、ぬかるんだ水田に入ってまくのは重労働です。転倒によるけがのリスクも常につきまといますので、農業用ドローンが人間に代わり、空中から田んぼに肥料などを散布。適量をむらなく施肥するので肥料代の節減も期待できます」

 ドローンの国家資格を持つスタッフが2人在籍し、民間資格も3人が保有。安全には万全を期しており、操縦での改善点を共有してノウハウを蓄積するほか、万一のトラブルの際は、速やかに不時着させる危険回避能力も研さんしています。

 「民生用ドローンの世界的メーカー・DJIの代理店として販売や操縦教習を手掛け、認定整備施設としてメンテナンスも承ります。請負散布などの作業代行にとどまらず、機器の提供からスキル習得、アフターフォローまで一貫してサポートできるのが私どもの強みです」

 トラクター、田植え機などを買い替えずとも、GPSシステムで運行する後付け自動操舵システムを設置。大雨や大雪の時に現地へ行かなくても、自宅で用水路の水門を監視・開閉するシステムを既存水門へ装着するソリューションを提供しています。新しい農機や大がかりな設備を導入するコストを抑えながら労力や時間を節約し、安全を担保しつつ生産性を上げることができると言います。

#chapter2

生育状況を調査し、肥料の散布を調整する可変施肥にも対応し、企業のPR動画も撮影

 「存在価値の高いサービスを提供する」という理念の元、農業者を支える片桐さん。ある時、水田で転倒して骨折した人から、施肥の依頼を受けたことがありました。

 「当方がドローンで散布したところ、お客さまはこの年の収穫を半ばあきらめていたこともあり、大変喜んでいただきました。『これは使わない手はない』と、それ以来リピートしていただいています」

 ドローンで圃場全体の生育状況を調査してデータ化し、育ちが不十分な地点に重点的に肥料をまく「可変施肥」にも対応。作物の収量や品質の安定を図っています。

 「傾斜地や障害物の多いところはスタッフが操縦しますが、通常の農地なら自動運転します。また、直接水田にもみをまく『直播』の実証実験を行い、苗を植える稲作と遜色ないことを確認しました」

 農業用機械の自動操舵システムは、GPSアンテナが衛星からの位置情報を受ける仕組み。正確かつ均一に土壌づくりをすることができます。
 「信州はリンゴの産地ですので、果樹園で乗用草刈り機を自動走行させるお客さまもいらっしゃいます」
 
 手元のスマートフォンで水門を遠隔開閉できるシステムは、太陽光の電源で現況を撮影できるため、熊害防止でも注目を集めています。

 この他、長年にわたり地元企業・店舗のホームページ制作にも従事。近年はサイトを充実させて若手人材を獲得したい中小企業が多く、「ドローンでダイナミックなPR動画を撮影してほしい」という引き合いが増えているそうです。

片桐剛 かたぎりたけし

#chapter3

担い手不足や経営不振に悩む農家の力になりたいと、故郷の信州でスマート農業を展開

 片桐さんは大学進学を機に上京し、東京の企業でシステムエンジニアとして勤務。その後故郷の飯島町に戻って「wave」を立ち上げ、パソコンスクールやホームページ制作の事業を展開します。

 「会社員時代は仕事も楽しく上司にも恵まれたのですが、いつかは故郷に帰りたいという思いがあり、また組織のいち歯車としてこのままの日常でいいのかという疑問もあって、起業を決意しました」

 企業のシステム開発を請け負うなど、着実に業容を拡大。顧客からの信頼も厚く、企業に招かれて基本ソフトの使い方やプログラミングを新入社員に指南したり、社内ネットワークのセキュリティーについて講習をしたり、多方面で活躍してきました。

 「スマート農業の事業を始めたのは、ホームページ制作のためにドローンを導入したことがきっかけです。地域を撮影する中、基幹産業の農業は年を追うごとに元気がなくなっていくのを目の当たりにしました。担い手不足や経営不振でやむを得ず農地を手放す人もおり、進化するICT(情報通信技術)で力になれないかと考えました」

 ドローンは高い場所での調査にも活用しており、高所点検では、全国から依頼が寄せられるそうです。

 「森林や災害現場の調査、物資の運搬など、ドローンはさまざまな可能性を秘めています。長野県、とりわけ天竜川沿いの伊那地域は複雑な地形が多く、性能が発揮できるエリア。ドローンが飛ぶ姿が当たり前になる時代は、そんなに遠くないと思います」

(取材年月:2024年6月)

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片桐剛

ドローンと自動化技術によるスマート農業のプロ

片桐剛プロ

スマート農業事業

株式会社wave

ドローンを使って農薬や肥料の散布、直播。機体の販売、メンテナンス、操縦の教習など一貫したサービスを提供します。また、農業用機械の自動操舵、水門の監視・開閉など、多彩なスマート農業を展開しています。

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