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「農業の課題を0にする」をミッションに、ITを活用した営農支援サービスに尽力

ITを活用し農業の課題解決に尽力する農業経営のプロ

井上隆太朗

井上隆太朗 いのうえりゅうたろう
井上隆太朗 いのうえりゅうたろう

#chapter1

ハウス内の湿度や温度管理を機械化。人に依存しないイチゴ栽培の仕組みを構築

 「当社に関わってくださった全ての方が『最高の人生だった』と思えるよう、仕事を通じて貢献していきたい」

 そう語るのは、「井上寅雄農園」代表の井上隆太朗さん。長野県佐久市で観光イチゴ園を営む傍ら、ITを活用した営農支援に力を入れています。

 「施設園芸の先進国であるオランダでイチゴ栽培を学び、当園を開園しました。現在は45アール(約1360坪)の敷地で、『紅ほっぺ』『章姫』など8種類のイチゴを育てています。例年12月から6月にかけてはイチゴ狩りも行っています」

 井上さんはヒューマンエラーを無くすため、人に依存しない仕組みを構築。ビニールハウス内の湿度や温度を機械で管理し、窓の開閉や水やりを自動化。糖の蓄積を促す地域の寒暖差を生かしながら、安定的に甘くジューシーなイチゴをつくり出しています。

 「ありがたいことに、当園の栽培方法や規模拡大のスピードに関心を持ってくださる方が多く、国内外から視察に来ていただいています。私どもは、農業に参入したい企業さまや新規就農を目指す方に向けたアドバイスも行っています。遠方の場合は、オンラインと出張での対応が可能です」

 シーズン中、1万人以上が来園するイチゴ狩りは、収穫・パック詰め・出荷作業の負担を減らすためにどうしたらいいかという発想から始まったとか。
 「少しの工夫で大きな変化が生まれやすいのが農業の面白いところです。イチゴ狩りがお休みになる初夏から秋にかけては、キッチンカーで県内のイベントに出店し、かき氷やオリジナルサイダーなどイチゴの加工品を販売しています」

#chapter2

新規就農者とアドバイザーをつなぐプラットフォーム「アグティー」をリリース

 佐久市で生まれ育ち野球に打ち込む日々を送っていた井上さんが、農業の道に進むことを決めたのは高校生の時でした。
 「屋外で、自然に触れ合える職業に就きたいと考えたことがきっかけです。高校卒業後は、玉川大学農学部と日本農業経営大学校で知識を養い、オランダに渡りました」

 1年半の滞在で、現地の効率的な生産方法を学び帰国の途へ。地元のベンチャー企業に3年勤め、2020年7月に独立。翌年3月に株式会社を設立した井上さんは、「利益率が低いと言われる農業を、産業として成り立たせたい」と力を込めます。

 「自分だけもうけていい暮らしをしたいとは思っていません。当社のイチゴ事業も他の農家の方々の事業も同じように成長し、結果として業界全体の成長につながればと考えています」

 自身がイチゴづくりを始めた際、周囲に助言を請う人がおらず遠回りした経験を元に、新規就農者と全国のアドバイザーをつなぐプラットフォーム「アグティー」を開発しました。

 「2020年12月にリリースしたサービスで、無料チャットツールのLINEを通じて、プロの生産者さんや指導員らに農業にまつわる悩みを直接相談することができます。作物の栽培方法はもちろん、設備投資や資金調達、販路拡大といった経営に関することまで、実践的なノウハウを得ていただくことができます」

 開発の根底には、農家が抱えるさまざまな課題解決をサポートすることで、農業界全体の発展を後押ししていきたいという強い信念があります。

井上隆太朗 いのうえりゅうたろう

#chapter3

リンゴ農家だった祖父にならい、最高の人生だったと思える仕事をしていきたい

 「社名の『井上寅雄』はリンゴ農家だった祖父の名前です。病院にお見舞いに行った時、祖父が話してくれたほとんどが仕事に関することだったんです。『やりたいことは全てやったから悔いはない』と語る姿を見て、私も祖父のような生き方をしたいと感じました」

 井上さんは祖父から受け取ったメッセージを胸に、企業理念を「最高の人生だったと思える仕事を」に定めます。
 「会社を営む上でも、私の人生においても、何かを判断する時にいつも軸にしている言葉です。やりたいと思ったことや直感的に必要だと感じたことは、困難でも、すぐに結果につながらなくても挑戦したい。死ぬ直前に『あの時こうすればよかった』と惜しむことがないように選択を重ねていきたいんです」

 学校や自治体での講演や課外授業も積極的に引き受け、これまでの経験や自社の取り組みを若い世代に伝えています。
 「誰かのために、とは実はあまり思っていなくて。突き詰めれば結局は自分のためなんですよね。自分が後悔しないよう活動してきたことが、結果として地域や農業界のためになっているのだと思います」

 ゆくゆくは会社の上場も見据え、「地に足をつけて着実にビジネスを伸展させたい」と意欲を見せます。
 「私どものミッションは『農業の課題を0にする』です。イチゴ事業で新しい農業経営のあり方を追求しながら、困りごとの解消に役立つアグティーをより多くの方々に知っていただき、やりがいを持って就農できる環境をつくっていきたいですね」

(取材年月:2023年12月)

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井上隆太朗

ITを活用し農業の課題解決に尽力する農業経営のプロ

井上隆太朗プロ

農業経営

株式会社井上寅雄農園

農業の課題を0にし、やりがいを持って農業を続けられる環境づくりを目指し、営農支援サービス「アグティー」を開発・運営する。自社のイチゴ農園ではハウス内の管理を自動化し、人に依存しない栽培環境を実現。

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