依頼主の悩みや不安の解消に努める、片付けと墓じまいのプロ下郡華己

依頼主の悩みや不安の解消に努める、片付けと墓じまいのプロ

下郡華己

人生のエンディングにあたって心と環境を整え、前向きに人生を歩むお手伝いを

　「人生のエンディングにあたって、知見を備えた有資格者がお客さまに寄り添ったサービスを提供いたします」と話すのは、宮崎市の「スマイルクリーンテック」の取締役・下郡華己さん。遺品・生前整理、墓じまいに従事し、宮崎県をはじめ、熊本県や鹿児島県にも赴きます。

　「故人さまが愛用していた品や、身に着けていたものを見ると在りし日が浮かび、つらいものです。私どもがお手伝いすることで、空間とともに心の中も整理し、『お父さんは音楽が好きだったよね』『お母さんの手料理はおいしかったね』と皆さまで語らい、前を向いて生きていくきっかけになればと願っています」

　下郡さんは遺品整理士に加え、精神保健福祉士や作業療法士の資格を保有。心身のケアや福祉の分野に知識を持っていることから個々の心情や事情にも配慮しています。

　「お客さまのご自宅をきれいにするだけではなく、不安を和らげ、心配ごとを解消してもらえるように、弁護士や司法書士といった相続や登記関連の専門家と連携しています」

　また、孤独死などを迎えた故人の部屋の汚れを取り除き、除菌、消臭する特殊清掃、いわゆる「ごみ屋敷」にも対応。仮に、依頼主から「全て捨ててよい」と指示を受けても、慎重に分別を行っています。

　「以前、空き家になったご実家を片づけた際、逝去されたお母さまの財布がありました。お金は入っていませんでしたが、お客さまが子どもの頃に送った肩たたき券が入っていました。それをお見せしたとき、宝物として取っておいた母の深い愛情に触れ、涙を流されたことが印象に残っています」

精神保健福祉の分野と保育士を経験し、母の逝去を機に遺品整理の道へ

　宮崎市生まれの下郡さん。地元の高校から山口県の大学に進学し、卒業後は帰郷して保健福祉系の専門学校に入りました。

　「就職活動中に自分の将来について思案するなか、母がケアマネジャーをしていたこともあって、福祉の道に進みもうと方向性を定めました」

　心に病や障がいを抱える人の社会復帰を支援する精神保健福祉士の資格を取った後、日常生活に必要な動作をリハビリする作業療法士の資格も取得。日南市の精神科病院に3年間勤めました。

　「母校の専門学校では、専任講師として作業療法士の育成を担いました。在学中に『いつか戻ってきてほしい』と教員陣から言われ、ご用命があればと社交辞令として有り難く受け取っていましたが、本当にオファーをくださったので転職を決めました」

　約10年にわたり教べんをとった下郡さんが次に選んだのは保育士。独学で国家試験を受けて合格を勝ち取ったそうです。

　「後輩に教える中で、もっと幼い子どもたちに関わりたいと考えるようになりました。また保育園で人材不足が深刻化していることを受け、地域へ恩返しができればとの思いもありました」

　保育士として勤務を始めてから1年半後、遺品整理とお墓じまいの事業を新しく始めようとしていた父親の日髙和博さんに声を掛けられ、スマイルクリーンテックに入社します。

　「父はもともと土木や産業廃棄物処理に携わっていましたが、私の母が亡くなったのを機に遺品整理やお墓じまいの重要性に目を向け、当社を立ち上げたのです」

永代供養や散骨など、親族の意向に沿って墓じまいや遺骨の扱いを提案

　父とともに、2023年に新規事業をスタートした下郡さん。大事な人を亡くし、悲しみの中にいる家族に代わって故人の家財を仕分け、思い出を引き継ぐ仕事に社会的意義を見いだします。

　「病気や障がいがある人たちの生活を援護したり、子どもたちの成長を見守ったり。医療や教育の現場で働く中で、人が生きていく上で環境を整えることがとても大切だと実感していたのも背中を押しました」

　下郡さんのもとでは、健やかに暮らす一助として住居のリフォームや、不用品回収、古物の買い取りもサポート。
　
　維持・管理の負担を軽減するお墓じまいでは、寺社への永代供養や山や海での散骨、粉骨して陶器の飾り物にするなど、親族の意向に沿ってプランを提案しています。

　「ご遺骨の扱いについて、多種多様な新たな選択肢を提示したいと考えています。手元に置いて供養したいという方に向け、日本漆器工芸品としてのミニ仏壇の販売を始めました。墓所に足を運ばずともお住まいでご先祖さまをまつり、故人さまをしのぶことができます。お客さまに適切な商品をご案内するため、仏具のメーカーと連携を進めていくつもりです」

　セカンドライフを楽しむ心構えや終活について伝えるため、生前整理をテーマにした講演も開催。創業以来、誰もが生きやすい社会づくりに貢献するべく活動の幅を広げています。

　「誰々さんの紹介でと、お声がけくださる機会が多くなりました。いただいたご縁を丁寧に紡ぎながら、これからも地域の皆さまのお役に立てるよう全力で事業に取り組んでいきます」

（取材年月：2024年11月）

人生のエンディングにあたって心と環境を整え、前向きに人生を歩むお手伝いを

人生のエンディングにあたって心と環境を整え、前向きに人生を歩むお手伝いを

精神保健福祉の分野と保育士を経験し、母の逝去を機に遺品整理の道へ

永代供養や散骨など、親族の意向に沿って墓じまいや遺骨の扱いを提案

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