機械と横振り刺繍(ミシン)での融合を追及する刺繍のプロ
山下力也
Mybestpro Interview
機械と横振り刺繍(ミシン)での融合を追及する刺繍のプロ
山下力也
#chapter1
「お客様の『おもい』を形にして表し、唯一無二の品をかなえます」と話すのは、今年で創業80年を迎えた仙台市青葉区の「山下刺繍店」代表・山下力也さん。
企業や団体、スポーツチームのユニフォームなどの刺繍、プリント加工などを手掛けています。
「応援歌や座右の銘など会社のスローガンをユニフォームに掲げたい、飲食店のエプロンや帽子にロゴを。タオルに子どもの名前をなど、何でもご相談ください。打合せとサンプル作成を通じて、お客様が求める理想像を具体化します」
ワッペン、エンブレム、繊維雑貨、帽子、バッグと多岐にわたるアイテムが対象。枚数を問わずオーダーを受けています。
「店名やロゴはお店の心臓です!心を込めて作りますよ。お店のシンボルになりますからね」
山下さんは、細やかに調整を施す職人技と多機能である刺繍機の力を融合し、緻密な図案や短い納期にも柔軟に対応。質の高い仕上がりが支持を集め、県内外に数多くの顧客を抱えています。
「宣伝営業は特にしておりませんが、数十年以上お付き合いのあるお客様も少なくありません。『イベントのノベルティとして使うから』と毎年ご依頼くださったり、10年以上前のお客様が『ウエアを新調したい』と再びご注文くださったり、おかげさまで法人様、個人様から引き合いがあります」
#chapter2
「山下刺繍店」は、山下さんの祖父・森蔵さんが1945年に創業。進駐軍の基地内の売店で、制服に付ける階級章や帰国する米軍兵のお土産として刺繍品を販売していました。
「幼い時から『将来は後を継げ』と言われて育ちましたが、正直なところ、全くその気はありませんでした。子ども心にレールを敷かれることに抵抗がありましたし、熟練を要する刺繍業が自分にできるのかという不安もあったのです」
都内で就職後、次第に家族を助けようという思いが芽生え、家業へ戻ることを見据えて繊維メーカーに入社。外回りの営業に従事しました。
「30歳の時に家業へ入りました。当時は両親も職人として現役でしたから、刺繍だけではなく、昇華転写、シルクスクリーンなどプリントのノウハウを独学。表現の幅を広げ、サービスの新しい柱にしたいと考えました」
山下さんが3代目に就任したのは38歳の時。実質的な舵取りは父が担っていましたが、45歳のとき、父の引退を機に事業運営を任されるようになりました。
「代表になるまでは目の前の仕事に懸命に取り組むだけでしたが、初めて会社をどう存続・発展させるかを意識するようになりました。プレッシャーもありましたが、老舗を守るやりがいの方が大きかったです。ただ職人だった父の引退により、技芸がなくなりました。今後を考えた時にこの技を繋ぐことがどうしても必要。一針一針縫い進める技芸、これこそを次世代へ継ぐことが私の使命でしょう」
49歳の時に、初代から培ってきた横振り刺繍を繋ぐことを決意しました。
#chapter3
横振り刺繍は、針が上下左右に動くため、糸を重ねるようにして縫っていくことができ、起伏に富んだ立体的な刺繍ができるのが特徴。
「ただ、独学で学ぶなど考えが甘く、当初は何もできませんでした。その後、横振り刺繍を調べ、群馬県桐生市に住む、現代の名工に選ばれ、黄綬褒章受章をされた、横振り刺繍の第一人者、大澤紀代美氏に会うことができ、自分の思いを相談したところ、月一度の学ぶ機会をいただくことになりました。大澤氏は、パリコレの出展にも携わっており、世界的に名を馳せた横振り作家であるとともに横振り刺繍の魅力を世界へ広めること、次世代に技を残すことに日々、全力を注がれている方であり、師からは技術を学ぶだけではなく、その時代のニーズに沿った人間形成も指導していただいております」
「この年齢になって、学びを与えてくださった師には本当に感謝しております。初めは直線も縫えませんでした。日々練習を重ねて葉脈、花弁などができるようになり、半年で虎や鷹のモチーフへと進みました。そこから段々と、刺繍の奥深さを知ることになりました。毛の流れ、羽の向き、糸の重ね方など本当に細かい、ひとつひとつの業にぶつかりました。『飽きずに、コツコツと、基礎を大事に』という師の言葉を忘れずに練習しました。この虎や鷹は、約11ヶ月要しましたが、全く納得できる仕上がりではありません。現時点でも師からはご指導をいただいている状況です。ただ少しでも良いものを作り、できる限り高い所を目指したいです。立体感や躍動感がある刺繍の魅力を発信し、期待に応える技で『あそこに頼めば間違いない』と信頼していただき、仙台で一番、東北で一番と言われる存在になりたいと思っています」
今後の取組みとしては、スカジャン製作に注力。鷹、虎、竜などお気に入りのキャラクターをモチーフにするなど自分だけの世界観をまとうことができると言います。
地域に根差し、真心を込めたもの作りを続ける山下さん。技術を継承し、次世代へと繋いで行きたいと語ります。
(取材年月:2025年8月)
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Profile
機械と横振り刺繍(ミシン)での融合を追及する刺繍のプロ
山下力也プロ
刺繍職人
株式会社山下刺繍店
職人の技とコンピューターミシン、プリントを融合させ、新たな刺繍を提案。1枚から大口の注文まで受け付け、経験と技術力が求められるような難しい加工の依頼にも柔軟に対応。
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