クライミングをライフワークとして提案するウォール作成のプロ佐藤優哉

クライミングをライフワークとして提案するウォール作成のプロ

佐藤優哉

クライミングウォールの作成・レンタル、ルートセット、スクール事業を展開

　「自らの手足を使ってゴールへと到達するのは爽快です。多くの人にクライミングの魅力を知ってほしいですね」と話すのは、「IWANOKO」代表の佐藤優哉さん。宮城県仙台市を拠点にウォールの作成・レンタル、ルートセット、スクール運営と四つの事業を展開。東北6県を中心に、要請があれば関東圏へも出張しています。

　「ウォールの作成は、病院や学校、商業施設、企業から個人宅まで請け負っています。プランニングから完成までは1～2週間程度です」

　優しい風合いで、ぬくもりのある木製にこだわり、骨組み部分にも木材を使用。圧迫感を和らげるため白系の素材を用いる、インテリアとの調和を考慮するなど、デザイン性も追求しています。
　
　「レンタルは、企業や自治体、大学などのイベントでニーズがあります。会場の規模や予算などを聞き取り、多様なウォールの中から希望に合ったものを提案しています」

　佐藤さんは20年を超えるクライミング経験を持ち、競技者や指導者としての実績も豊富。小・中学生を対象にしたスクール「イワノコクライミングクラブ」は、基礎や大会出場を目指すクラスを用意。独立前も含めると、約200～300人の生徒にレッスンしてきました。

　「雄大な自然を体感してもらうため、野外でのロッククライミングも取り入れています。初めてでも丁寧に手ほどきします」

　クライマーが登るルート（課題）を設計するルートセッターとして、国体の予選会にも赴く佐藤さん。適切な難易度を設定し、SNSで自作ルートの動画がタグ付けされているのを見ると、やりがいを感じると言います。

競技者・指導者として活動し、師匠との出会いを機にウォール作成の道へ

　バスケットボールやボクシングに汗を流すなど、体を動かすことが好きだった佐藤さん。クライミングを始めたのは21歳のとき。友人に誘われ初めてトライし、完登。自分のペースで進められる点にひかれたと語ります。

　「当時は岩登りがメジャーで、一つとして同じではない岩肌に心を奪われました。24歳の頃までは毎日のように専門ジムに通う『クライミングジャンキー時代』で、休みの前日は仕事終わりに夜中発で岩場へ出向いていました」

　25歳のときにクライミングジムに就職。ジュニアの育成に携わり、北海道から関東まで小中学生が参加するコンペ「スーパーキッズチャレンジ」も企画・開催しました。自身のスキルも磨き、29歳のときに国体に初出場。以降7年にわたって出場し、3度の入賞を果たします。

　スポーツとして子どものうちからトレーニングする場所を作り、ユースのレベルを引き上げたいと一念発起し、2013年に独立しました。

　「ウォールづくりに興味を持ったのは、今でも師匠と慕っている方との出会いがきっかけです。大会に出場した際、その方が手掛けた美しく斬新な曲面のウォールに魅了されました。勉強するため、一緒に全国を回ってウォールの作成・施工を経験させてもらいました」

　10年ほど修行を積み、自身でデザイン・ルートセットしたウォールを作れるようになった佐藤さん。施工やレンタルの引き合いが増えてきた2023年、独立から10年の節目に社名を「IWANOKO」とし、再スタートを切りました。

ハリボテをオーダーメードするオリジナルブランド「Rock Child」も展開

　佐藤さんは、新しい商品の開発にも力を入れています。こども園から「1歳でも遊べるものを」と要望を受けたのを機に、壁に取り付けるウッドボリューム（ハリボテ）のオリジナルブランド「Rock Child」をリリースしました。

　「色、大きさや形状を自由にオーダーできますので、カラフルで、小さいお子さんでも手でつかんだり、足をかけたりしやすいのが特長です。今後は幼稚園や保育園に向け、遊戯室に簡単に取り外しできるウォールなど、扱いやすく、子どもたちの好奇心を刺激する商品をお届けしていきたいと思っています」

　ボルダリングのイベントで講習会を開くなど、競技人口の拡大とクライミング文化の継承にも取り組んでいる佐藤さん。活動を通して、さまざまな場所を登攀（とうはん）する楽しさを広く伝えていきたいと意欲を見せます。

　「特に、個性豊かな岩登りに興味をもつ人が増えたらうれしいですね。子どもだけでなく、大人向けに外岩登りのレッスン・ガイドなども提供できればと考えています」

　地元・仙台のクライミングチーム「仙登会」の会長も務める佐藤さん。岩場の開拓・整備、清掃活動を実施し、アプローチしやすい環境づくりに励んでいます。

　「機会があれば、これまで培った技術を生かして木工制作にも挑戦していきたいですね。先日も自宅にウッドデッキを作りました。ご依頼があれば、ヒアリングから施工まで私がお伺いしてサポートいたしますので、何でもお気軽にご相談ください」

（取材年月：2025年9月）

室内レッスンや自然を体感できる岩登りを通じて、クライミングの楽しさや魅力を発信

クライミングウォールの作成・レンタル、ルートセット、スクール事業を展開

競技者・指導者として活動し、師匠との出会いを機にウォール作成の道へ

ハリボテをオーダーメードするオリジナルブランド「Rock Child」も展開

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