「パブリシティ」という言葉をご存知ですか?
一般的にあまり使われることがないため、馴染みがない方も多いのではないでしょうか。
しかし、広報を担当する方、広報に携わっている方は「パブリシティ」についての知見を持っておいて損はないかと思います。
今回は以下の項目について詳しく解説していきます。
- 「パブリシティ」とはそもそも何なのか
- 「パブリシティ」を行うメリットとはどのようなものがあるのか
- 「パブリシティ」を行う際の注意点はあるのか
また、「パブリシティ」はよくPR(プロモーション)や広告と混同して用いられることがあるため、PRや広告との違いについても説明していきます。
ぜひ最後までご覧ください。
「パブリシティ」とは?
パブリシティの語源は、英語の「publicity」からきており、直訳すると「宣伝」「世間の注目」といった意味です。
広報分野では、「報道」や「メディアの露出」といった意味を表しています。
つまり、パブリシティとは「メディアを通じて自社の商品やサービスについての情報を報道してもらうこと」を意味していると言い換えられます。
「メディア」と聞くと、地上波などの大規模な組織をイメージしてしまいがちですが、小規模でも情報伝達をしている媒体は全て「メディア」と言います。
インスタグラムなどで有益な情報を発信している企業や個人も、ある種の「メディア」であるため、誤解がないようにしましょう。
テレビやラジオなどのメディアで報道されることによって、より多くの人に認知されるだけではなくその他にも様々なメリットが受けられます。
パブリシティを行うメリットに関しては後述するのでぜひチェックしてみてください。
パブリシティと広告/PR(プロモーション)の違いとは?
では、続いてパブリシティと「広告」「PR(プロモーション)」の違いはどのような部分なのでしょうか?
「広告」「PR(プロモーション)」に関して、表面上は理解できていても、詳しく違いを解説できる人は少ないのではないでしょうか。
それぞれの意味や目的をしっかりと理解していきましょう。
広告
まず初めに、「広告」について説明します。
広告に関しては、テレビや新聞、ネットに関わらず広告枠を購入し、自社の商品やサービスを発信していく手段です。
広告を行う目的に関しては多種多様で、一般的には以下の2つです。
- 商品やサービスの購買を促し、利益に繋げる
- 会社、商品やサービスを認知してもらう
1つ目に関しては明確で、広告を打つことによってより多くの人の目に留まり、購入してもらう機会が増えることに直結します。
2つ目に関しては、そもそも認知していない人に対して「認知」を目的としています。
人の行動心理学には、接触回数が増えれば増えるほど好感度や信頼度が高まっていく「ザイオンス効果」というものが存在しています。
広告をたくさん打つことによって接触回数が増えれば、それだけで商品やサービスに関する好感度や信頼度が向上していく訳です。
広告のメリットとしては、費用が発生するものの、費用を払えば誰でもある程度自由に消費者に向けて発信ができる点です。
PR(プロモーション)
続いて「PR(プロモーション)」について説明します。
日本パブリックリレーションズ協会は「PR」について以下のように説明しています。
パブリックリレーションズ(Public Relations)とは、組織とその組織を取り巻く人間(個人・集団)との望ましい関係を創り出すための考え方および行動のあり方である。19世紀末から20世紀にかけてアメリカで発展し、日本には第二次世界大戦後の1946年以降にアメリカから導入された。企業・官公庁・団体他、あらゆる組織の運営に欠くことのできない考え方といえる。
PRとは、公衆の理解と支持を得るために、企業または組織体が、自己の目指す方向と誠意を、あらゆる表現手段を通じて伝え、説得し、また、同時に自己匡正(きょうせい)をはかる、継続的な対話関係である。自己の目指す方向は、公衆の利益に奉仕する精神の上に立っていなければならず、また、現実にそれを実行する活動を伴わなければならない。
https://prsj.or.jp/aboutpr/
つまり、要約するとPRとは「公衆と良好な関係を築くために行うあらゆる施策」の事を意味します。
しかし、昨今ネイティブ広告にPRというタグ付けがされている場面がちらほら見受けられます。
PRは広告とは異なるため、実際にはこの使われ方は誤用であると言えるかと思います。
パブリシティを行うメリット・効果とは?
先ほど紹介したように、「パブリシティ」とは「メディアを通じて自社の商品やサービスの情報を報道してもらうこと」を意味しています。
では、実際にメディアを通じて報道してもらうことによってどのようなメリットが受けられるのでしょうか。
結論、大きく分けて4つのメリットを受けられます。
それぞれのメリットについて具体的に説明していきますので、ぜひチェックしてみてください。
予算がなくても実施できる
パブリシティを行うメリットの1つ目が、「予算がなくても実施できる」という点です。
先ほど紹介したように、「広告」を用いて自社の商品やサービスの情報を発信しようとすると、媒体によって費用は変わるものの、大きな費用が必要になるケースが多いです。
しかし、パブリシティはあくまで「メディアが必要としている情報を提供するのに、自社の商品やサービスを用いる」ことですので、基本的に費用をかけずに行えます。
ただ、あくまでメディアにとって必要なものや都合の良い情報が報道される傾向にあるため、こちらが伝えたい情報を伝えられるというわけではありません。
メディアとの取材を行った上でパブリシティがされる場合、メディアの人との信頼関係を構築していくことで、より自社の商品やサービスの良い部分が報道されることもあります。
メディアのメリットを考えた上で、自社の商品やサービスの魅力が最大限伝わるように努力していく必要があります。
情報をより多くの人に発信できる
パブリシティを行う2つ目のメリットが、「情報をより多くの人に発信できる」という点です。
やはり、自社の発信力だけでは、元から顧客である人や興味を持っている人といった特定の人にしか情報を提供できません。
しかし、メディアを通して発信できれば、自社について知らないより多くの人に向けて情報を提供でき、新たな顧客を獲得できる可能性があります。
また、専門的なメディアに絞って発信できれば、そこにいるユーザーはより自社の商品やサービスの見込み顧客である可能性が高いです。
例えばあなたが、アパレルブランドを経営していたとします。
そこで、アパレル情報を専門として発信しているメディアに紹介されたとすると、そのメディアを見ている人はあなたのブランドに興味を持ってくれる可能性が高くなります。
どのメディアにパブリシティを行ってもらうかについてもよく検討した上で行動してみることをお勧めします。
社会的信用が高まる
パブリシティを行う3つ目のメリットが、「社会的信頼が高まる」という点です。
あなたはある情報が信頼できるかどうか判断するとき、どのような基準で判断していますか?
おそらく、情報自体の内容を吟味する他に、「誰が発信しているのか」という視点で判断することもあるのではないでしょうか。
一般的に、特定の情報に関して信頼できるかどうかについては、「誰が」という部分が非常に重要になってくる傾向にあります。
メディアを通して情報を発信できれば、「メディア」といったある程度信頼性が担保されたところからの情報と判断され、自ずと自社の商品やサービスに対する社会的信用が高まる傾向にあります。
自ら「私たちの商品は信頼できます!」というより、第三者から「あそこの商品はとても良いです。」と紹介された方が信頼できるというのはイメージがつきやすいかと思います。
スタッフや関係者のロイヤリティ向上が期待できる
パブリシティを行う4つ目のメリットが、「スタッフや関係者のロイヤリティ向上が期待できる」という点です。
ロイヤリティとは、「忠誠」「誠実」といった意味があり、スタッフや関係者との信頼関係の向上や自社に対する愛着心、帰属意識が向上することを表しています。
人は誰でも、「承認欲求」が存在しています。
メディアや他の媒体によって自社の商品やサービスが紹介されると、「自分の携わっている商品やサービスが多くの人に認められた」という意識が湧き、承認欲求が満たされる傾向にあります。
その結果として、ロイヤリティが高まり、従業員や関係者との関係性構築に好影響をもたらす可能性が考えられます。
パブリシティを行う際の注意点とは?
ここまで、「パブリシティ」のメリットの側面について具体的に説明しました。
しかし、実際にパブリシティを行う際に、注意しておかなければならない点、事前に知っておくべき点などが存在します。
今回は、パブリシティを行う際の注意点を2点紹介します。
正しく伝わるのかについての不確実性
パブリシティを行う際の注意点1つ目が、「正しく伝わるのかについての不確実性」です。
パブリシティを行うメディアは、自社の商品やサービスに関しての知識を有しておらず、素人である可能性が高いです。
そのため、そもそも誤った情報が掲載されてしまう可能性や、誤解を招く表現などが用いられてしまう危険性も考えられます。
メディアの方と事前に打ち合わせがある際は、資料や説明において誤解を生まないように考慮して行う必要があるかと思います。
報道する情報の判断基準は、メディアのメリット
パブリシティを行う際の注意点2つ目が、「報道する情報の判断基準は、メディアのメリット」であることです。
メディアは、好意で商品やサービスについて報道してくれる訳ではありません。
メディアにとって必要な情報、利益を生み出す可能性がある情報を取捨選択して選んでいます。
そのため、あなたが発信して欲しいと思う情報と、メディアが発信したいと思う情報が異なる可能性も十分に考えられます。
打ち合わせなどをする際は、メディアが求めているものを理解する姿勢を心がけ、その上でどのような情報を発信して欲しいのかを伝えることで、双方の利益に繋がるのではないでしょうか。
いずれにせよ、メディアとの信頼関係を構築していくことが、効果的なパブリシティを行うために必要なことだと理解していただけたかと思います。
ペイドパブリシティという方法
パブリシティの中には、「ペイドパブリシティ」という種類も存在しています。
先ほど紹介したように、パブリシティは発信する情報の判断基準はメディア側にあり、伝えて欲しい情報を伝えてくれるかは分からない、という話をしました。
ペイドパブリシティは、料金を支払い、メディアの枠の一部を購入するパブリシティであり、広告の一種です。
そのため、こちら側の伝えたい情報を伝えることができ、多くの人に伝えたい情報を正しく伝えられる点がメリットとして挙げられます。
その他のペイドパブリシティのメリットは、「広告に見えない」という点です。
広告に対して毛嫌いしている人は一定数存在しており、「広告=怪しい、邪魔なもの」と感じる方もいらっしゃいます。
ペイドパブリシティは、メディアが実際に発信しているように報道されるため、信頼性が担保されつつ伝えたい情報を伝えられるため、効果を期待できると思います。
まとめ
最後までご覧いただき、ありがとうございます。
今回は、「パブリシティ」とは何なのか、「パブリシティ」を行うメリット、「パブリシティ」を行う際の注意点などを説明しました。
パブリシティとは、「メディアを通じて自社の商品やサービスを報道してもらうこと」を意味しています。
しかし、パブリシティを「無料の広告」と認識してはいけません。
あくまで報道される内容の判断基準はメディア側にあり、自社の商品やサービスについて正しく伝えられるかどうかは分かりません。
パブリシティを行う際は、広告とは違うことを認識した上で打ち合わせや資料作りなどを行っていきましょう。