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獣医師がサポートする、動物に関わる事業者のための「経営の土台づくり」

動物関連事業の経営を支える獣医師・中小企業診断士

木戸伸英

木戸伸英 きどのぶひで
木戸伸英 きどのぶひで

#chapter1

獣医師と中小企業診断士の視点で、理念や人材育成の仕組みを構築

 動物と向き合う仕事に追われる中、「売り上げが伸びない」「人材が育たない」といった経営課題が後回しになっていませんか。獣医師であり、中小企業診断士でもある木戸伸英さんは、動物に関わる事業者に特化した経営コンサルティングサービスを展開しています。

 対象は、動物病院や畜産農家、トリミングサロン、ペットホテル、動物園・水族館、動物カフェ、大学や専門学校など多岐にわたります。
 「企業では、理念や経営計画、予実管理、人材育成計画の策定が一般的に行われていますが、動物関連事業者ではそうした仕組みが十分でないケースが多く見られます。組織力を高め、持続可能な運営を目指すには、まず〝経営の土台〟を整えることが必要です」と木戸さん。

 自身も動物園で約17年勤務した経験から、顧客や従業員に対する意識をより高めることが、今後の鍵になると話します。
 「これまでは、動物と真摯(しんし)に向き合うことで事業が何となく回っていたかもしれません。しかし、人口減少や物価高騰など社会の変化が進む今、従来のやり方だけでは立ち行かなくなる可能性があります。現在も、集客や人手不足など、困りごとがあるはずです。そういった経営課題には答えがないように思えますが、改善の手立てはあります。一歩一歩の積み重ねが、変化を生みます」

 獣医師として動物園や動物病院の現場に精通し、さまざまな動物の生態を知るからこそ、同じ目線で提案できることが木戸さんの強みです。
 「例えば動物病院での設備投資についての悩みでも、医療的な知識や背景などを理解した上で、実情に即した解決の道筋を描けます」

#chapter2

動物園での現場経験を生かしたヒューマンエラー対策研修や往診も

 木戸さんは、経営支援のみにとどまらず、動物飼育やヒューマンエラー対策など、業界特有の人材育成研修も実施しています。全飼育員がヒューマンエラー対策研修を受けたある動物園からは、「来年も継続したい」と好評でした。
 「動物園で猛獣による事故が発生することがありますが、その多くは人的ミス、つまり〝うっかり〟が要因となっています。檻の鍵をかけ忘れたり、扉が開いたままになっていることに気づかず中に入ってしまったりと、ちょっとした注意不足が重大事故に発展します。日常的にリスク意識を高める機会を持つことは、事故の未然防止につながります」

 現在、動物専門学校で非常勤講師も務めている木戸さん。若い世代に向けた活躍の場づくりにも貢献したいと語ります。
 「今後は、開業を目指す獣医学部の学生に向けて、経営の基本を教えたり、学内の研究成果を社会に還元できるような大学発ベンチャーの創業支援を行ったりすることも考えています」

 また、神奈川県内を中心に、事業者に向けた動物の往診サービスも提供。動物園で、ほ乳類や鳥類、は虫類の診療のほか、タヌキやトビなど野生動物の治療や保護活動にも携わった経験から多様な動物に対応可能。治療のほか、感染症対策や死亡原因の究明でも経験を発揮します。
 「ふれあい動物園など獣医が常駐していない施設はもちろん、在籍している動物園などでも、ゾウやライオンなど大型動物の処置などでは人手が足りない場面があります。そうした現場にスポットでお手伝いすることもできますので、気軽にご相談ください」

木戸伸英 きどのぶひで

#chapter3

青年海外協力隊や民間企業など多彩なキャリアをもとに、業界の成長を後押し

 子どもの頃から動物が好きで、獣医師を志した木戸さん。大学卒業後は世界を知りたいという思いから青年海外協力隊としてフィリピンに渡り、畜産動物の疾病診断や農家の経営支援活動に携わりました。

 帰国後、動物園で勤務し、研究にも従事。ウェアラブルデバイスや3Dレーダーなど先端技術を動物の体調管理に役立てる研究に取り組みました。長く働く中で、「モチベーションの維持」に課題を感じたことが、経営に関心を深めるきっかけになったと言います。
 「仕事自体にやりがいがあっても、理念や評価体制が整っていなければ、働く意欲を保つのは難しいと感じるようになり、経営を学ぶため中小企業診断士を目指しました」

 その後、スタートアップ企業で、GPS位置情報を活用した牛の健康管理システムの開発にも参画。コスト面から販売先の確保に苦戦し、企業が資金難に陥った状況を目の当たりにし、改めて業界全体の経営改善の必要性を実感したと振り返ります。

 2024年に中小企業診断士を取得し、動物関連の事業者を支援する経営コンサルタントとしての活動をスタートさせた木戸さん。動物業界では、まだ経営コンサルタントに依頼するという文化があまり根付いていないかもしれないと指摘します。
 「どんな事業者にも必ず課題はあり、外部の専門家の視点を取り入れることで、解決の糸口が見つかるはずです。経営が安定すれば、従業員の働きがいや動物たちの福祉にもつながります。業界全体の未来のために、一緒に考えましょう」

(取材年月:2025年7月)

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木戸伸英

動物関連事業の経営を支える獣医師・中小企業診断士

木戸伸英プロ

獣医師・中小企業診断士

獣医師と中小企業診断士の専門知識を生かし、動物関連事業者の経営課題に応じたコンサルティングを提供します。動物園での約17年の現場経験から、ヒューマンエラー対策研修や事業者向けの往診サービスにも対応。

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