アイデアと企業の技術を掛け合わせて社会課題解決に導く専門家平野智資

アイデアと企業の技術を掛け合わせて社会課題解決に導く専門家

平野智資

日常から生まれるひらめきと企業の持つ技術を掛け合わせて、社会課題の解決を目指す

　「日常生活の中で、ふと目にした製品の原理から『これを使えば課題が解決するのでは』とひらめく瞬間があるんです」と話すのは、「HiLab（ヒラボ）」代表の平野智資さん。「アイデアの社会実装」を掲げ、企業が持つ技術や製品と自身のひらめきを掛け合わせ新しい価値を生み出しています。

　平野さんは「暮らしに潜む大小さまざまな課題を解決するために、一緒に取り組みませんか」と企業に呼びかけ、共感を得たパートナーと共同開発を進めます。完成した製品やサービスはその企業を通じて市場に投入され、収益は売上からマージンとして還元される仕組みです。

　「『これがあれば社会はもっと良くなる』というワクワク感を共有することを大切にしています。企業の方も『おもしろそうだから一緒に社会を変えていこう』という思いを持ってくださると、開発は一気に加速するんです」

　物流システムの効率化、省エネ乾燥脱臭装置、自動掃除機、トイレットペーパーホルダーなど、多種多様なアイデアの実現に向けて取り組みを展開。中でも注目されているのが、機械式蓄エネ装置です。

　「リチウム電池は便利ですが、リサイクルには危険や高コストが伴うという課題があります。そこで私は既存の技術を組み合わせ、電気を蓄える新たな仕組みを考案しました」

　現在は特許を申請し、大学や企業と共同研究を推進中。環境負荷を抑えた蓄エネ装置の実現は、エネルギー問題に新しい選択肢をもたらし、持続可能な社会への大きな一歩となる可能性を秘めています。

現場から生まれる「ワクワク」を起点に、新規事業を創出

　平野さんのもとには、これまでOEM受託や下請けを行ってきた企業などから「独自の製品を世に出したい」「新規事業に取り組みたい」といった相談が寄せられます。
　一般的に新規事業の立ち上げは、「どこに市場の隙間があるか」「自社の強みをどう生かすか」といった分析から始まることが多いものです。しかし平野さんは、それだけでは革新的なアイデアにたどり着きにくいと指摘します。

　「私は最初に『御社の工場や製品を見せてください』とお願いするんです。そこで感じた技術的なおもしろさや可能性から、私自身がワクワクするアイデアを提案します。企業さまがそのワクワクに共感してくださったら、一緒に実現への道筋を描いていくのです」

　この独自のスタイルで、平野さんは数々の共同開発を推進してきました。セラミックス粉末の新たな用途開発、自動車部品メーカーの技術を生かした新規事業、半導体関連部品メーカーの製品機能向上など、事例は多岐にわたります。共通しているのは、現場の人が心からおもしろいと思える発想を起点にしていることです。

　「結局のところ、経営者さまや従業員の皆さんがワクワクしながら取り組むことで初めて、社会を変革する製品が生まれるんです。分析から入るのではなく、ワクワクから入ること。それが私の新規事業開発のスタイルです」

　さらに、補助金申請に強い中小企業診断士や弁理士、弁護士などの専門家とも連携。アイデアの実現を多面的にサポートする体制を整えています。

21年間で30件以上の特許を出願した発想力を幅広い分野で生かすために起業

　平野さんは大阪大学大学院工学研究科を修了後、大手部品メーカーに21年間勤務。配属先は社内ベンチャー的な部署で、半導体部品の金属加工や表面処理を施す技術開発と製品設計に従事しました。

　「技術者同士が集う自由闊達な雰囲気で、前例のないことにも挑戦させてもらえる環境でした。月曜が待ち遠しいほど仕事が楽しかったですね」と振り返ります。成果を出すことで部署は数十人から数百人規模へと成長しました。

　その後は生産性向上や品質管理、原価低減といった経営課題に携わり、200人規模の工場統括も経験。IoT化によるデータ活用や教育マニュアル改善など、利益を出すための仕組みづくりに注力しました。「納期と品質に追われる仕事は大変でしたが、メンバーと協力して乗り越えたときには達成感がありました。コスト意識が培われたことで、現職で経営者さまと話をするときにも役立っています」と語ります。

　2024年に独立。会社員時代に30件以上の特許を出願した一方で、業務外のアイデアは実現できない葛藤もありました。「ひらめいたアイデアを社会に問いたい」という思いが強くなり、自ら会社を設立したのです。
　現在は「アイデアの社会実装」と並行し、「製造業のつらさ軽減」を掲げてコンサルティングも展開。人事評価制度の導入、生産性向上、原価低減などを支援し、企業の収益改善に貢献しています。

　「ものづくりには価値を増大させる活動と、コストを抑える活動の両面が必要です。私の役割は、その両輪を回して企業の力を高めること。企業さまと一緒に育てたサービスや製品で、社会を変えていきたいですね」

（取材年月：2025年9月）

「アイデアの社会実装」と「製造業のつらさ軽減するコンサル」で、企業の成長をサポート

日常から生まれるひらめきと企業の持つ技術を掛け合わせて、社会課題の解決を目指す

現場から生まれる「ワクワク」を起点に、新規事業を創出

21年間で30件以上の特許を出願した発想力を幅広い分野で生かすために起業

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