PROFESSIONAL
STORIES

Mybestpro Interview

子どもとの接し方や進路に不安を感じる保護者の相談に応じサポート

発達障害や不登校の子を持つ親に寄り添う教育の専門家

金井尚志

金井尚志 かないたかし
金井尚志 かないたかし

#chapter1

「子どもから学ぶ」をモットーに、子どもの自主性を尊重する教育の大切さを説く

 「発達障害や不登校のお子さまとの接し方に戸惑ったり、進路に迷ったり。わが子のためにどうすべきか考えあぐねている方は、当方がお力になりますので一人で抱え込まないでください」

 そう呼び掛けるのは、神奈川県相模原市を拠点に活動する元小学校教諭の金井尚志さん。発達に特性がある子どもたちに向けた通級制情緒障害学級で、長年にわたり教べんを執ってきた経験を生かし、子育てについて相談に応じています。

 「障害のある子を持つ保護者はさまざまな悩みを抱えています。進学の際に通常学級にするか特別支援学級(特別支援学校)にするか、親元で生活させるか児童福祉施設に入れるかなど、お子さんの人生の節目で選択を迫られます。また、自立して生活できるだろうか、自分が亡くなった後は誰が見守るのか、子どもの将来に対する不安も多いですね」

 学校現場で知見を深めた金井さんが、モットーとしているのが「子どもから学ぶ」ということ。上から教え込むのではなく、子どもの自主性を尊重することが大切だと話します。

 「教員時代から、子どもそれぞれが得意としていること、興味があることを見つけて、伸ばしていくことを心掛けてきました。でも、これって全ての教育に当てはまることですよね。講演会など、先生方にもお伝えする機会を設けていきたいと思います」

 障害の有無や子どもの年齢にかかわらず、親が子どもを心配するのは当然と語り、気持ちに寄りそう金井さん。心理カウンセラーや発達障害の支援アドバイザー、さらに応急手当普及員など、多彩な資格で親子をサポートしています。

#chapter2

通級性情緒障害学級で担任を務め、さまざまな子どもや保護者と向き合う

 教員養成の大学を卒業後、東京都内の小学校で4年間通常学級担任を務めた金井さん。先輩教師の勧めで、通級制情緒障害学級を担任することに。以後、数え切れないほどの親子と接し、学習面をフォローするとともに、就学先についても一緒に考えてきました。

 「ある時、お母さんも子どももうつむき加減で暗い面持ちで学級にやってきました。それでも子どもはプレイルームが気に入ってすぐ明るい表情になり、クレヨンを持ったので『あっ、この子は絵が好きだな』とピンときましたね。お母さんも言いたいことを正直に言ってもらったこともあり、にこにこした表情で帰っていきました」

 その後、この子どもは好きな絵の才能を伸ばし、個展を開くまでになったとか。「もう50代ですが、いまだに絵を描いた年賀状や暑中見舞いなどを送ってくれるんです」と笑顔を見せます。

 「特定の社交的な場面で話すことができなくなる『場面かん黙』という情緒障害のお子さんは、名前を呼んでも返事がなく、途方に暮れることもありました。お母さんからおうちでの様子を聞き、学校でも同じ条件を再現したところ、話してくれるようになりました。じっと待つことも私たちの仕事だと教わりましたね」

 教職を退いた後も金井さんの元にはさまざまな相談が寄せられ、現在の取り組みにつながっています。
 「先日も、子どもを施設に預けるかどうかで悩んでいる方がいらして、施設を見学し、お子さんが何をやりたがっているかをよく考えて決断するようアドバイスしました」

金井尚志 かないたかし

#chapter3

「恩返しに」と子どもの母校で登校の見守りを始め、その手当で図書を寄贈

 「私が若手教員だった1980年代頃は『発達障害』といった言葉もない時代で、ケアや配慮が求められる子どもたちも『変わった子』『落ち着きがない子』と扱われ、『育て方が悪い』と言われてきた保護者。都内で数校しかない通級制情緒障害学級。私がいた区内でも『しょうぶ学級』1校だけ。私たち教員も模索しながら子どもたちと向き合う毎日でしたね」

 教壇に立つ以外にも、金井さんは東京都立教育研究所で1年間「不登校児童・生徒」をテーマに研修を受け、研究にも従事。通級指導の担い手として、後進の育成にも注力しました。

 その後、八王子市などの小学校で校長を務める傍ら、全国情緒障害教育研究会の会長を歴任。退職後は明星大学の教育学部で准教授に着任し、教育実習の担当として教職を目指す若者たちを導いてきました。

 「3人の子どもが通った母校に恩返しができたら」と、2020年からは自宅近くの交差点に立ち、子どもたちの登下校を見守るボランティアを開始。小学校の要請により指導員として手当が伴うようになりましたが、児童に読書好きになってほしいとそのお金で本を購入し、学校の図書館に寄贈を続けています。

 「朝、黄色い旗を持って通学路に立っていると、助けが必要と思われる児童を見かけることがあります。支援の手からこぼれている子どもはまだいるのです。発達障害のある子どもをサポートする『HYDRANEGA(ハイドランジア)の会』をつくるのが今後の目標で、ハイドランジアとは水の器という意味。一人でも多くの子どもを器で受け止めていきたいですね」

(取材年月:2024年1月)

リンクをコピーしました

Profile

専門家プロフィール

金井尚志

発達障害や不登校の子を持つ親に寄り添う教育の専門家

金井尚志プロ

教育相談・支援

1980年代から東京都教委の教諭として、都内小学校の通級指導教室を歴任。指導のモットーは子どもの得意や興味を見つけ、伸ばすこと。豊富な経験により、悩みを抱える親子に寄り添います。

\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /

掲載専門家について

マイベストプロ神奈川に掲載されている専門家は、新聞社・放送局の広告審査基準に基づいた一定の基準を満たした方たちです。 審査基準は、業界における専門的な知識・技術を有していること、プロフェッショナルとして活動していること、適切な資格や許認可を取得していること、消費者に安心してご利用いただけるよう一定の信頼性・実績を有していること、 プロとしての倫理観・社会的責任を理解し、適切な行動ができることとし、人となり、仕事への考え方、取り組み方などをお聞きした上で、基準を満たした方のみを掲載しています。 インタビュー記事は、株式会社ファーストブランド・マイベストプロ事務局、または朝日新聞が取材しています。[→審査基準

MYBESTPRO