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高級石材「庵治石」の採掘に40年以上携わり、墓石や庭石などを提案

高級石材、庵治石を採掘するプロ

黒川正浩

黒川正浩 くろかわまさひろ
黒川正浩 くろかわまさひろ

#chapter1

耐久性があり、美しいまだら模様が特長の庵治石を顧客の要望に合わせて提供

 香川県高松市の庵治町と牟礼町にまたがる五剣山近辺で産出される庵治石は、上品な光沢と風雨に耐える石質から「花崗岩のダイヤモンド」と称されます。

 小さな結晶が緻密に結合しているため非常に硬く、耐久性があるうえ、地肌が細かいため繊細な細工が可能。一方で、石になる過程でできた傷が多く、原石から使用できるのはほんの一部。市場に出回る数が少ないため希少価値が高く、高級石材として扱われています。

 「一番の特長はツヤのある美しいまだら模様で、墓石や石仏、庭石、灯籠などに用いられています。当方では卸のほか、加工、設置工事もご案内できます」

 そう話すのは、庵治石の採掘元「黒川石材」の代表・黒川正浩さん。40年以上にわたって庵治石に携わってきたベテランです。
 
 「庵治石は磨くと表面に『斑(ふ)』という斑点が浮かび、全体に現れると最高級品とされます。また、細目、中細目、中目に分類され、目がきめ細かい細目は貴重品で人気があります。『墓石に使いたい』といったご相談が寄せられた際は、色味や石目など、お客さまの好みを丁寧に伺います」

 自然の産物のため、必ずしも顧客の要望を満たす石が見つかるわけではありません。黒川さんは自らが確保できずとも、同業者とのネットワークも駆使して可能な限り顧客が求めるものを探し出します。

 「お墓を建てるにあたって『どうしても庵治石がいい』という方がいらっしゃいます。日本には素晴らしい石材が多々ありますが、その中から庵治石を選んでくださる方が全国にいると思うと、とても誇らしい気持ちになります」

#chapter2

父が創業した家業に入り修行。現場で培った石の性質を判断する目利きが強み

 黒川さんは1962年、庵治石の採掘を営む家に生まれました。「黒川石材」は、採石業界で経験を積んだ父が独立して立ち上げましたが、黒川さんが12歳のときに急逝します。

 「まだ子どもだった私に代わり、親戚がつないでくれた家業に高校卒業と同時に入りました。8年間修行に打ち込み、26歳で代表に就任しました。短期大学にも通いながら仕事を一から覚えた努力を認め、『もう社長を任せても大丈夫だ』と背中を押してくれたのでしょう」

 以来、たった一人で会社を切り盛りし、父親がおこした事業を継続できたのは、実直に現場に向き合う中で培ったノウハウがあるからだと語ります。「どこを削れば狙いの石が見つかるのか、ある程度までは事前に分かります。例えば、採石するにはまず岩肌に穴を開けて火薬を入れ、爆発させて切り出します。ドリルでその穴を掘ったとき、石が柔らかいと引っ掛かりが多くなり、硬いと順調に掘り進めることができ、堅固で良質な庵治石に出会う確率が上がります」

 また、掘削によって出る石の粉の色が青の場合は硬く、赤みを帯びていると柔らかく傷が多い。石の性質を判断する基準を多々持っているのが強みだと言います。

 「100%狙い通りの石がとれるわけではありませんが、実践を通じて養った目利きには自信を持っております。厳選した素材をお届けすることで、取引先など数多くのお客さまと信頼関係を築いてきました。引き続き皆さまの期待に応えていきたいと思っています」

黒川正浩 くろかわまさひろ

#chapter3

お墓を建てる風習とともに、地域の文化である庵治石を後世に残したい

 父親の意志を受け継ぎ、長年、庵治石を扱ってきた黒川さんですが、これまでの道のりが順風満帆だったわけではありません。昨今は一家に1台、さらには1人1台とマイカーを保有する家庭は少なくありません。駐車場を確保するために庭をつぶしてしまったり、新築の場合は最初から庭を最小限にして計画を立てたりする人が増えています。

 近年は少子化などを背景に墓石の需要も減りつつあると言い、「業界の同志と顔を合わせるたびに、暗い話題ばかりが口をついて出ます」と苦笑します。実際、業績不振や後継者不足によって廃業を決めた仲間は多いそうで、庵治石の採掘業者や加工業者が集う地元の組合に加盟している会社の数も、ピーク時の半分以下にまで減少してしまったと肩を落とします。

 「私自身も2019年に大病を患い、休業を余儀なくされました。私のいないところで、家族は『死を覚悟してほしい』と医師から言われたほど一時期は深刻な状態でしたが、持ち直しました」

 黒川さんは病に負けず、療養を経て無事に復帰。「悠久の時を経て形成され、神社やお城に採用されるなど、いにしえの時代から重宝された庵治石は地域の文化そのもの。お墓を建立してご先祖を敬う風習も含め、後世に残していくことが目下の目標です」と意気込みます。

 「石垣や門などの礎石として、また庭園を彩る装飾物として先人が愛してきた石の歴史と、日本人が紡いできた古き良き慣習を次代に伝えるため、今後も仕事に取り組んでいきたいですね」

(取材年月:2024年2月)

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黒川正浩

高級石材、庵治石を採掘するプロ

黒川正浩プロ

採石業

有限会社黒川石材

庵治町・牟礼町で産出される高級石材、庵治石。40年以上にわたって庵治石の採掘に携わってきた経験を生かし、大きさや目の細かさ、色合いなど、顧客の要望に合った庵治石を採掘します。

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