森林の多面的機能を引き出し、地域の未来をつくる林業のプロ関根雄太

森林の多面的機能を引き出し、地域の未来をつくる林業のプロ

関根雄太

多様な機能を持つ森林を未来につなぐため、持続的な林業経営を目指す

　「私どもは、長年にわたり林業で培ってきた知識と技術を生かし、地域社会への貢献を目指しています」

　そう語るのは、岩手県北上市の「クイック」代表の関根雄太さん。鉄塔・送電線の新設および保守に関わる伐採・測量業務や、事業用地・個人宅での伐採、森林整備を手掛けています。

　「電線には絶えず電流が流れているため、幹や枝葉が伸びてくると、直接触れていなくても自然放電による火災や大規模停電の恐れがあります。事故の危険性がある樹木を未然に伐採し、東北地方の電力の安定供給を支えることが、当方の基盤事業です」

　人の足でしか入れないような山中での作業が多く、社員は20キロほどもある重い荷物を背負い、1時間以上かけて歩いて現場に向かうこともあると言います。
　「体力的にも過酷で、緊張を強いられる職務ですが、毎日の暮らしに欠かすことのできないインフラ整備の一端を担う者として、高い使命感を持って臨んでいます」

　山や森を形成する木々には、地球温暖化対策や災害防止などさまざまな役割があります。関根さんは、資源として末永く活用していくため、持続可能な社会づくりにも力を入れています。
　「森林には、二酸化炭素吸収による温室効果ガスの削減、雨水を蓄え浄化する水源かん養、地中に張り巡らせた根による土砂流出の防備、肥沃な大地を生む腐葉土の醸成など、多面的な機能があります。しかし、適切に管理されていなければ本領を発揮できません。未来の子どもたちにかけがえのない財産を残すためにも、『伐って、使って、植えて、育てる』を循環させる持続的な林業経営が求められています」

社員の幸福をかなえるため、やりがいを持って働くことができる職場づくりに尽力

　幼い頃から祖父に連れられ、よく山に出掛けていたという関根さん。大学で木材の活用方法について研究し、木造住宅の原材料を加工するプレカット企業に就職しました。
　「長男としていずれは生まれ故郷の岩手県に戻り、後を継がなければいけない」との思いがあり、2010年に関東での生活に区切りをつけ帰郷。祖父が1966年に創業した家業に入ります。

　「私が入社した当時、当社は同業の中でも高い伐倒技術を有していましたが、職人気質が強く風通しの良い職場とは言えない状況でした。もっとみんなが互いを認め合い、やりがいを持って働ける企業をつくりたいという思いから、商工会議所青年部をはじめとし、他の団体へも積極的に参加し、経営や組織づくりについて必死に学びました」

　2021年に代表に就任後は、「良好な人間関係に支えられた強いチームワークこそが、会社の土台」を信念に、積極的に企業風土を改革。社員旅行や食事会を開催して交流の場を設けるほか、研修プログラムや資格取得支援制度を用意。社員が主体的に、やりがいを持って働ける仕組みづくりに尽力しました。

　「大事にしているのは社員の幸福です。不安や不満があると、いいサービスを提供することはできません」と関根さん。
　「立ち返るところはいつも、何のために、誰のために仕事をしているのかという点です。それさえ見失わなければ、誇りを持って楽しく働くことができますし、お客さまから信頼され、地域で必要とされる存在になれるでしょう。目指しているのは、社員、顧客、社会、それぞれが幸せになるトリプルウィン経営です」

さまざまな業界と手を結び、自分たちが暮らす地域から盛り上げていきたい

　「2023年度の私どもの行動目標は『チャレンジを楽しもう』です。自分の限界を超える時、人は必ず成長しますし、やりがいや自信を手にすることができます。失敗も経験。社員には、恐れずにどんどんチャレンジしてほしいと伝えています」

　社員の丁寧な仕事ぶりがクライアントから高く評価され、「感謝の言葉をいただく機会も多いんですよ」とほほ笑む関根さん。四季を感じながら体を動かし、木々に触れる日々は、自然好きにはたまらないそう。

　「担い手が増えるよう、林業の価値を発信し、多くの人が生き生きと活躍できる職場をつくっていきたいと考えています。同時に、森林整備を通じて緑あふれる地域の魅力を発信することで、岩手県にUターンやIターンする人を増やし、いろんな業界の人とつながりを築いていけたらうれしいです」

　間伐材を使った木質バイオマスで発電したり、植林により脱炭素を推進したり、大きな可能性を秘めた林業。関根さんは、他社ともパートナーシップを結び、世の中の課題にアプローチしていきたいと意欲を見せます。

　「それぞれの強みを生かし、まずは自分たちが暮らす地元から盛り上げていきたいですね。その先に日本全国、ひいては海外にも効果が波及することを願っています。いまは互いに協力する共創の時代と言われます。私どもの志に共感してくださる企業さまと一緒に、地域社会を豊かにし、地球環境を保全できるような、何か面白い取り組みができたらと考えています」

（取材年月：2023年7月）

多様な機能を持つ森林を未来につなぐため、持続的な林業経営を目指す

多様な機能を持つ森林を未来につなぐため、持続的な林業経営を目指す

社員の幸福をかなえるため、やりがいを持って働くことができる職場づくりに尽力

さまざまな業界と手を結び、自分たちが暮らす地域から盛り上げていきたい

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